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ほむぺ⋆*
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#あべさく
めかぶぷりん
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夏音と一緒にいるからか、それまで遠巻きに見ていた人形たちが集まってくる。布人形たちはみんな個性豊かな表情や服装をしていて、誰一人として被ってはいない。
🧡「おお、近くで見るともっとかわええ」
「でしょー。ボクがイメージした姿になってくれるんだよ。だから、次はどんな子って考えるの、楽しいんだー」
🩷「この子たちにもお名前あるの?」
「もちろん! ボクのお友達だもん、お名前は必要でしょ? えっとね、そのツインシニヨンの女の子がマグノリア。こっちの帽子を被ったチェックの男の子が、ダンデ。マリンの服を着た金髪の男の子が、ミスト。紫のお花をつけた女の子が、ルピン。執事っぽい男の子が、ロータス。他にもみーんな付いてるけど、全員分、教えてもお兄ちゃん達、きっと憶えられないからこのくらいにするね!」
💛「めっちゃ配慮してもらってんじゃん」
🩷「ちなみに、全部で何体いるの?」
「えっとね、ここにいる街の子たちが58人。お屋敷にいる子たちが、15人だよ!」
思っていた以上の数に、思わずぎょっとしてしまった。
🩷「お、多いんだね……」
「うん。なんかね、お友達が増えるのが楽しくなっちゃって。お洋服を考えるのも、どういう子なのか想像するのも、とっても」
その表情と言葉には純粋なものしかない。だからこそ、危うい。真相を話せば、自分が信じているものが全て覆ってしまうのだから。
その時、阿部から通信が入った。
💚『夏音ちゃんの過去が分かったかもしれない。報告したいんだけど、集まれる?』
🤍『僕たちの方も分かったことがあるよ。みんなに共有しなきゃいけないこと』
それを聞いて、スッと岩本だけが少しだけ距離を置く。
💛「俺たちも、夏音について話したい。佐久間と俺は引き続き夏音に付いてる。康二、さっきの話の説明、頼めるか?」
岩本が向井の方を見ると、親指を立てているので大丈夫だろう。
💛「集合場所は……」
🤍『浜辺のミニチュア庭園がいい』
💚『了解。じゃあ、そこに集合で』
通信を切ると、向井は「あっちの方、見て来てもええ?」と別の場所を指さした。岩本が了承したことで、向井が走って行った。
「あれ? 岩のお兄ちゃん、どうしたの?」
💛「なんか、探検したくなったんだと」
「そうなんだ! 迷子にならないといいねー」
🩷「だよねー。まあ、あんまり戻って来ないようだったら捜しに行こう。あ。康二とかくれんぼみたいになるね」
「そうだね! それはそれで楽しみ!」
無邪気に笑う夏音は年相応で、佐久間も岩本も複雑な感情を抱いていた。
向井の合流を待ってから、調査結果の報告に移る。
💜「じゃあ、先ずは阿部ちゃんから」
💚「あのお屋敷は、精巧な作りと見た目の大きさから、夏音ちゃんが幼少期に過ごしていた大切な家だと思う。あのお屋敷にいる人形が、より人間に近い姿なのも、その影響だと思う」
🖤「確かに。街にいるのは、みんなめっちゃ人形だった」
🤍「めめ、語彙力。じゃあこの情報は、それの積み重ねになるかも。僕らは、夏音が今は外に出られない環境にいると思ってる」
💜「理由は?」
❤️「街にあるものが全部、おもちゃや切り花で、本当に外にあるものがないこと」
🤍「それと、見ているものがある一点からだけなんだよ。陽ヶ瀬ブルーの海、遠くに見える山、それと、ミニチュアみたいな庭園。まさにここだね。この庭園、近くで見ると分かるけど、横からじゃなくて上から見た感じなんだよ。だから僕らは、今の夏音はグランドリゾート茜波の高層階にいると思ってる。で、そこから出られないんじゃないかな。普通に出られたら、もっと波とか庭園もちゃんとしてるはず」
💚「うん、俺もその推測は正しいと思う。幼少期に過ごしたお屋敷から、何らかの理由で茜波に移った」
🧡「ああ。やから、お友達を作ってんのか。夏音ちゃんな、お友達の人形に全部、名前つけてんねん。街の子が58、お屋敷の子が15って言うてたな」
💜「58と15って……」
💚「73」
💜「全部で73もいんの!?」
🧡「そうらしいで」
💚「……陽ヶ瀬地区全体で異能隠しが出始めたのが、およそ二年前。被害者の数が58人として、二年間と仮定すると……大体、二週間くらいの周期で行われてたってことだね」
🤍「今の六日周期と違うね」
🖤「あれじゃない? マテリアの量を増やしたとかってやつ」
💚「ううん。想像増大の異能は、最後の被害者のだから違う。だとすると……距離? 元々は二週間に一人しか連れて来られなかったけど、同じホテルだと六日で連れて来れるようになった。それと、見た目。確か異能隠しは少し弱くなる程度だったのに対して、眠り姫シンドロームは異能が全く使えなくなる。もしその違いで、人形の見た目にも影響してくるなら……」
💜「より人間らしい方がいいから、ここ最近は眠り姫シンドロームだけが増えていったってことか」
🖤「じゃあ、ホントに無意識なんだ。全部奪ってやろうとか、全く思ってない」
🧡「それはほんまやと思う。人形が増えるのが楽しくなったって言っとった。名前を考えるのも、どんな見た目の人形にするんかも、全部、夏音ちゃんが決めとるんやと」
❤️「部屋から出れなくて、人形がお友達。それって、現実の世界には友達はいない、ってことになる」
💙「いたら作んねえか、こんな世界」
💚「そうだね。幼少期を過ごした屋敷にいたのが五歳だと仮定する。今、中学生だとしたら14歳くらい。九年間、外に出られない状況が続いているんだとしたら、ここは楽しいよね。自分の友達の人形がたくさんいて、一緒に過ごせるんだから」
🤍「わかるなー。一人でいるのが平気なのと、何年も一人で過ごすのは違うよね。僕も、学生の頃はあんまり友達いなくて一人で教室にいたけど、それは僕が友達を作らなかっただけ。作れなかったわけじゃない」
そこまで話して、皆が黙り込んでしまった。
どう対応すべきか、悩んでしまう。今の夏音が、現実では淋しさを抱えているであろうこと。そして、その支えが人形たちであること。これらは明白だ。それを壊していいものか、迷うのは当然だった。
💚「……けど、ちゃんと伝えなきゃいけない」
ぐっと拳を握って、沈黙を破ったのは阿部だった。
💚「夏音ちゃんに悪意はない。純粋な気持ちで人形を作って、大切にしてる。でも、それでもやっぱり、あの人形は他人から奪った異能なんだ。それは、自覚しなきゃいけない」
💜「……そうだね。そこを伝えないままにはできない。このまま、続けていっていい行為でもないから」
💚「伝えるのは、俺がする。これは、俺が言わなきゃいけないと思うんだ。純粋な好奇心が最悪の結果を生むことがあるって、俺は知ってるから」
それは一度、自分の好意から周囲を破壊してしまった過去を持つ阿部だからこそ、分かることなのだろう。そしてそれを、知らないままにしておけない、知らないまま過ごさせてはいけないということも、阿部は分かっている。
ならば、伝える役目も阿部が背負うべきだと。
他の者と、言葉の重みが違うから。
💙「阿部ちゃん、大丈夫か? その話して、阿部ちゃんは苦しくならない?」
💚「みんなに話して、俺の中でもう一回、整理がついたから。今はもう、大丈夫」
🤍「まあでも、普通に考えて話すのは阿部ちゃんがいいだろうね。感情的にもならないし、夏音と話して言葉を選べるし。僕らだと、萎縮させるのがオチだよ」
🧡「上手く言える自信ないで」
❤️「普通のお喋りとは違うからね」
🖤「阿部ちゃんみたいに言えるわけないよ。ね、しょっぴー」
💙「俺に振んな」
💜「照たち、今の聞いてたね。そういうわけだから、夏音ちゃんとも合流したい。場所は、俺たちが最初に着いた砂浜でいい?」
💛『了解。それとなく誘導する』
💜「よし。じゃあ、行こう」
夏音をなるべく傷つけず、けれども曖昧にはしないで話をする。君は悪くないんだよ、と誤魔化しても意味がない。もっと根本から伝えなければならないから。
だから阿部は一度、ふぅっと、大きく息を吐き出した。
砂浜では、夏音が数体の人形と楽しそうにかけっこをしていた。その様子を眺めている岩本と佐久間。二人が振り向いて頷き、皆も応えるように頷く。
「あ! お兄ちゃん達、みんな来たんだね! 待ってたよー!」
大きくブンブンと手を振っている夏音。
だから阿部は小さく手を振り返し、ゆっくりと夏音に近づいて行った。それを、他の者達は威圧しないように遠巻きに見る。
💚「夏音ちゃん」
「電子のお兄ちゃん。どうしたの?」
💚「ちょっと、お話してもいい?」
「お話? いいよ」
💚「ありがと」
言ってから阿部は砂浜に座り、夏音も阿部の隣にちょこんと座った。
「なあに?」
💚「この夢幻ノ杜のこと、教えてほしいんだ。ここは夏音ちゃんが作ったんだよね?」
「そうだよ! ボクね、ちっちゃい頃から病気で、お外に出られないんだ。でも、いーっぱい走り回りたいし、いーっぱい遊びたい。だからね、絵を描いたの。ここは海で、ここはお家でって、いろんなことを考えて、絵を描いたの。そうしたらね、目が覚めたら夢幻ノ杜に来てたんだよ! ボクが描いた絵にそっくりでビックリしちゃった」
それは恐らく、作りたいと思ってできたものではなく、その時に異能を授かったのだろう。そして、無意識のうちに絵を別の世界として構築した。それがここ、夢幻ノ杜。
「嬉しかったなぁ。ボクの想像通りだったんだもん。でもね、夢幻ノ杜には誰もいなかったんだ。それが淋しくって、誰か来てほしいなぁって思ったら、音が聞こえたの。陽ヶ瀬石の音。そしたらね、お姉ちゃんがいたの」
それが恐らく、最初の被害者。夏音が願ったから、呼び寄せた。これは二つ目の異能の可能性がある。
「だからお姉ちゃんと遊んでたんだけど、お姉ちゃんは帰らなきゃいけないって言うから、それはやだなって思ったら、人形ができたの。それがこの子! ダフネだよ!」
そう言って、夏音の足元にピタリとくっついていたおさげ髪の女の子の人形を抱っこしてみせてくる。それは、最初に阿部たちの前に姿を現し、建物の陰からこちらをチラチラ見ていた人形だった。
「驚いたお姉ちゃんが、この子がいたら淋しくないねって言って、ダフネに触ったの。その後お姉ちゃんは帰って行っちゃったんだけど、そしたらね、ダフネが動いたんだよ!」
興奮しっぱなしの夏音。
最初は偶然だったのだろうと思う。淋しいから誰かに来てほしくて、異能が人を呼び込んだ。そして、淋しいから帰ってほしくなくて、人形ができた。その人形に対象者が触れたら、人形が動いた。
全て、偶発的なこと。それが重なったというだけ。
「それからね、しばらくしたら、また違う人が来たの。今度はおじいちゃん。おじいちゃんともいっぱいお話して、帰りたいって言ったらお人形が出来て、おじいちゃんにお人形を撫でてもらったら、また動いたの。それが、こっちのロータス」
阿部と夏音の間に立っていた執事のような人形のロータス。
今度は明確に、夏音の方から人形に触れてもらっている。最初の時に人形が動いたことが成功体験になったのだろう。
「それからもね、たまに人が来ると人形を作って、触ってもらってっていうのを繰り返してったら、いつの間にかこんな数になってたんだー」
あははっと困ったように笑う夏音。作り過ぎちゃった、とでも言いたげな表情だ。
💚「あの子たちは? お屋敷の子。姿が違うよね?」
「うん。あの子たちは最近の子だよ。さっきボクが一緒だった、男の子みたいな女の子のマロウ。あの子が最初の子。いつもみたいに人形が出来上がったらね、いつもの街の子みたいなお人形じゃなかったの。もっと人間っぽくて、とっても綺麗で、街の子も可愛いけど、お屋敷の子もすぐに気に入ったよ。それからはずっと、お屋敷の子ばっかりかな。前よりも短い時間で来てくれるし、とっても賑やかになったよ」
一貫して、夏音が自分の意思で異能を使っているわけではない。夏音の願いに異能が応えているというのが正確だ。それは恐らく、夏音の異能の性質。夏音の感情に敏感で、夏音の感情に従っている。
ただ、それでも、何も知らないから夏音が悪くないという話にもならないのだ。
きゅっと、阿部は唇を結んだ。
💚「そうなんだね。お話してくれてありがとう。夏音ちゃんが、人形のことを大切に思っているのも、この夢幻ノ杜が好きなのも分かったよ。けどね、夏音ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」
「……?」
💚「夏音ちゃんのお人形はね、マテリアで動いてるんだよ」
「マテリア? あ、ボク知ってる! 体の中にあるよね。みんな色が違って、それが異能の性質? の違いだって、マロウが言ってた」
💚「うん。そのマテリアが、異能の心みたいなものなんだ。心がないと、異能は使えない。夏音ちゃんの人形は、その心を、他の人からもらってるんだよ」
「心……じゃあ、元気を分けてもらってるわけじゃ、ないの……?」
💚「そうだね。街の子たちは、異能の心の一部をもらった。でも、お屋敷の子は、心を全部もらってるんだ。夏音ちゃんがそうしたかったわけじゃないのは分かってる。でも、異能の心がなくなって異能が使えなくなって、困ってる人がいるのも事実なんだよ。だからお兄ちゃん達は、これ以上、夏音ちゃんが人の異能の心をもらわないようにしたくて、ここに来たんだ。どうしたらいいか、一緒に考えても、いいかな?」
優しく訊ねる。
すると夏音は困ったように考え、それでもコクンと頷いた。
「ボク、人を困らせたかったわけじゃないから……みんなのことは好き、夢幻ノ杜も好き。でも、ダメなものはダメって、分かってるから。だからボク、もうダメなことしないようにしたい。お兄ちゃん達が手伝ってくれるなら、できるかもしれないから」
ぎゅっと、ダフネを抱きしめている夏音。
良かった。ちゃんと伝わった。
阿部からもみんなからも安堵の息が漏れる。やはり夏音は、他人から奪いたいと思うような子ではなかった。だからこそ、阿部の提案を受け入れてくれたのだろう。
あとは一緒に考えればいい。そうすれば、いい方向に向かうはずだと、そう思って視界に入った人形のダフネと目が合うと、ダフネの首が右に90度傾いた。
次の瞬間、砂浜から何本もの槍が生えてきて阿部を取り囲み、それらは全て阿部の首元に穂先を向けている。
💚「え……」
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えー😱素直で良い子かと思ったら違ったの…