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同時刻、闘技場の中央近くの舞台では、ジュリアが男子ボクサーと向かい合っていた。袖なしのシャツとハーフ・パンツは鮮やかな青で、それらが包む肉体は、子供ながらによく引き締まっていた。両手には、真っ赤なグローブを付けている。ジュリアの友達のレオンだった。
「ジュリア、今日こそお前にゃ負けねーぞ。お前に負けまくって、俺のプライドはずたずただ! 今回は完全完璧に勝ってやるから覚悟しとけ」
「いやいやレオン。とっても残念だけど、そりゃあ無理だよ。あたしは誰にも止めらんないからさぁ」
(しょっぱなはレオンかぁ。もっとおっきくなったら、男の子にはどうやっても勝てなくなんだろな。でも、まーだまだ、あたしは君らのうーんと先を行っちゃうんだから。今日も当然あたしが勝っちゃうよ!)
ジュリアが言葉を切るなり、レオンはファイティング・ポーズを取った。僅かに遅れて、ジュリアはジンガを始めた。リズムに乗りつつ、ゆらゆらと接近していく。
身体が半分ほどの距離まで近づいた。レオンはノー・モーションで、頭にジャブを放ってきた。
腰を落としてジュリアは回避。しゃがみつつ左足を前に持っていき、レオンの足を狙う。攻撃を避けつつ足払いを掛けるネガティーヴァである。
レオンは軽快に一歩引いた。地に伏すジュリアは、両手で地面を押した。レオンの腹へと頭突きをかます。
レオンは腰の下から左腕を回した。ジュリアの顎を打ち抜く気だ。
ジュリアは右腕を顎下に遣り、パンチの威力を減らした。パンチで少し軌道が変わるも、ジュリアのカベサーダ(頭突き)が腹部に入った。バランスを崩したレオンは、ステップを踏んで離れていく。
(いったーい。まともにアッパーを貰っちゃったかぁ。でもなんか、楽しくなってきたよね。気を付けなきゃダメだよレオン。ハイになったあたしは、だーれも手がつけられないんだからさ)
ジュリアは、僅かにふらつきながら、レオンに蛙を睨む蛇の笑顔を向けた。