虚勢を張っては、共感を得たいだけの日々だった。
お前が眩しかった。
そうだ、俺は所詮何もできない、〈無敵〉のレッテルを張ってるだけの成り損ないだ。
その成り損ないが、俺であっただけだった。
苦しいから、悲しいから、生きたいから。
もう何をしたいのかすら分からないのに。
喧嘩ばっかりの日々。
救えるはずないのに。救われるはずないのに。
俺は、逃げていた。ずっと、どこか、遠くへ。
だけど、俺は…
あのヒーローの神様になれていただろうか?
俺がお前を慰めたってお前の傷が癒えるわけない。
大半が俺のせいのはずなのに。
俺が未来を台無しにしたせいなのに。
俺だって、シンイチローやバジやエマを救いたい。
でも俺には無理だ。
俺はお前じゃないから。
救いたかった。
全員救いたいなんて、ただ共感が欲しかっただけだ。
でも、今なら救えるお前は救いたかった。
俺は、無力だ。
俺は、無力なんだ…!
もう古しまくった古傷を抱えて思っていたこと。
それが、誰かと対等な喧嘩をしてみたかったことだ。
馬鹿みたいな話だが、それが一番難しいんだ。
誰かに感謝されるほど、俺は強くない。
結局、それはそいつが成長できた証なだけで、俺のおかげではない。
だから、俺は褒めてやることしかできなかった。
確かに、東卍で総長張っていたころは、俺だってシンイチローみたいに語り継がれる総長になれると思っていた。
「最強の佐野兄弟」って。
でも、今の俺はどうだ。
反社だ。
輝きとは程遠い、影の存在。
生きたいと思う気力さえも失った、最低な奴だ。
何度も、東卍時代を思い返した。
もう、自分が影の者として生きる時より、ずっと、長く。
東卍の総長のまま、俺はお前を守れる神様でいたかった。
こんな俺のドロドロな気持ちでお前の痛みが癒やせるわけじゃない。
俺がお前に謝ったって、今更守ったって、現実は何も変わりはしない。
こんな後悔の間で揺れ動く気持ちのまま宣うのは実際俺も好きじゃない。
誰かに「頑張ったね」って言われたかった。
無理だけど。
無力だから、出来るわけないんだけど。
生きた証とか、〈無敵〉のレッテルとか。
今はどうでもいい。というか要らない。そんなもの。
東卍の誰かを救う、東卍の誰かを守る、お前を救うような『喧嘩』をしたい。
無理だ。
だって、タケミっちはタケミっちのやり方で幸せになれる。
ヒナちゃんと、幸せに暮らせるんだから。
だから。
こんな俺の宣う気持ちで、お前に負わせた傷が消えるもんか。
タケミっちを抱きしめたい、頑張ったねって叫びたい。
お前がこれまでに負ってきた傷も痛みも、全部消えるくらい、たくさん。
でも、タケミっちは俺みたいに弱くない。
きっと、そんなの気にしないでたくさんの人を救うんだろう。
そして、いつの間にか本当の神様になってる。
それが”お前”だから。
それが”タケミっち”だから。
それならそれでいい。
でも、もしも汚れまくった”こっち側”に来そうになったら。
お前の痛みを、辛さを、影の心を。
俺が全部、全部背負って行ってやる。
俺は”神様”にはなれなかった。
正直、もう人間でもないんだから。
俺は無力だ。
その無力な歌で、お前を救いたかったけど…。
こっちに来たら意味ないじゃんか、バカヤロー。
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