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第三話
それぞれの個性
「先日の骸牙鼠の討伐レポートを書くように言われてるから……意見を出して」
放課後。
私たちは教室に集まり、先日の初任務についてのレポートをまとめていた。
……まともに終わる気がしない。
「意見ゆーても……ライフル一発で終わりましたー、って書けばええんと違う?」
ピンク色のツインテールを整えながら、椥辻さんが答える。
私も、それしかないと思う。
思うけども。
「だめよ、椿希ちゃん。それだと、あたしの勇姿が書けないでしょ?」
七鳳が胸を張る。
「勇姿ぃ?」
椿希が呆れた顔をする。
「ネズミに噛まれて、痛いよーって泣いてただけやないの」
「あら。失礼ね。ちゃんと戦ったわよ?」
七鳳は不満そうに頬を膨らませると、可威へ顔を向けた。
「ねー、可威くん♡」
「え? ぼ、僕に振らないでよ……っ」
可威は困ったように目を泳がせる。
「僕、薬の準備で忙しかったし……」
「……はぁ」
会議すらまともにできないなんて。
頭が痛いわ。
でも――
ライフル一発で、数万匹はいた骸牙鼠を全滅させたのも事実。
そんなことをそのまま書くわけにもいかない。
「……あー!」
思わず頭を抱える。
そして、仕方なく口を開いた。
「え、っと……じゃあ、ライフルで全滅させる前までを書いて提出……する?」
三人が私を見る。
「最後は……みんなの力を合わせて討伐しました、ってことで」
「それでええんちゃう?」
椿希があっさり頷いた。
「うん、僕もそれでいいと思う」
可威も頷く。
「じゃあ決まりね」
私はレポートにペンを走らせた。
ふと、可威を見る。
前髪で目元が隠れているから、表情が分かりにくい。
もっと堂々とすればいいのに。
あんなに素晴らしい薬学の知識を持っているんだから。
「そうね……これでいいわね」
書き終えたレポートを確認する。
そして、ふと気づいた。
「ところで……神剣くんは?」
「え、っと……たぶん……お、屋上だと思う」
可威が答える。
「昼寝にいい場所って言ってたから……」
「…………」
……本っ当!!
集団行動ができないんだから!
「レポートには班員全員のサインが必要なんだけど……」
私は立ち上がった。
「私、神剣くんを探してくる」
「なに?」
「え?」
振り返る。
「神剣くん!?」
いつの間に。
「い、いつ戻ってきたの?」
「……いま」
相変わらず眠そうな顔。
「み、神剣くん……サイン書いて」
私はレポートを差し出した。
「ここ、班員全員のサインが必要だから……」
「ああ……」
朔夜は何も言わずに椅子へ座ると、ペンを取り、レポートに自分の名前を書いた。
決して綺麗とは言えない。
でも、読みやすい字だった。
少し癖のある文字。
「……これでいいか?」
「ええ。ありがとう」
その時だった。
「……ねー、朔夜ちゃん」
七鳳が口を開いた。
「ん?」
「どうして瞳が黄色なの?」
教室の空気が止まった。
「周りの視線とか、気にならないの?」
――言った。
入学して数ヶ月。
誰も聞けなかった疑問を、七鳳は真正面から聞いた。
私も思わず朔夜を見る。
黄色い瞳。
この世界で、人間にはありえないはずの色。
けれど――
「……別に?」
朔夜は、あっさりと答えた。
「どーでもいい」
「……あ、そう」
七鳳も、それ以上は何も言わなかった。
朔夜は書き終えたレポートを机に置く。
そして、そのまま教室を出ていった。
残された私たちは、しばらくその背中を見つめていた。
周りがどれだけ騒いでいても――
本人は、まるで気にしていないようだった。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第3話、読みました。レポートのシーン、それぞれのキャラの性格がよく出てて楽しかったです。七鳳が朔夜の黄色い瞳について「どうして黄色なの?」ってストレートに聞いたところ、ハッとしました。ずっと誰も聞けなかったことを、ああやってちゃんと聞くのって勇気いるし、すごいなって。でも朔夜が「どーでもいい」ってさらっと言い返すのも、すごく朔夜っぽくて好きです。周りが気にしても、本人は気にしてないっていう空気感、いいなと思いました。続きも楽しみにしてます🌙
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