家に帰りベッドの上で横になっていると、ゆずきから電話がかかってきた。
『圭太、今大丈夫?』
『大丈夫だよ』
『どうだった?』
『わりい、ダメだった』
『そう――だよね』
ゆずきにはこうなることがわかっていたかのようだった。
『もうこれ以上は無理かもしれない。ゆずきからもマナに何か言ってくれよ』
『圭太でダメだったんだから私なんて尚更無理でしょ』
『ゆずきはマナの唯一の女友達だし、懐いているみたいだから説得してくれよ』
『やってはみるけど、期待しないでよ』
『頼むよ』
翌日の昼休み ――食事をしているマナのもとに、あまり見かけない女子生徒が2人やって来た。俺たちと同じ2年生ではないようだ。黙って見ていると、しばらくしてマナはその2人に連れられて教室から出て行った。それと入れ違いでゆずきが教室に慌てた様子で駆け込んで来た。マナのことだと直ぐにわかった。
「マナが3年の女子と歩いてたけど、どうなってるの?」
「わからないけど、2人に連れられて出て行ったよ」
「マズイんじゃないの?」
「何が?」
「だってあの2人、3年の女子だよ。しかも白鳥先輩といつも一緒にいる――」
「それじゃあ、マナは白鳥先輩のもとに連れて行かれたってことか?」
「間違いないって! どうするの?」
ゆずきは不安そうな表情で俺を見ていた。
「どうするって言われても――別に何かされる訳じゃないだろ?」
「何もされないっていう保証はないでしょ!」
ゆずきは顔を真っ赤にして怒っていた。余程マナのことが心配なのだろう。
「わっ、わかった。直ぐにマナを連れ戻しに行こう」
「私も行く!」
それから俺とゆずきは、3年の女子に連れていかれたマナを探した。たまたまマナ達を目撃したクラスメイトがいたので、それほど探すこともなくマナたちに追いついた。しばらく黙って後をつけていると、女子テニス部の部室に入って行った。俺とゆずきは部室の前まで来ると、気付かれないように、中の様子を伺ってみた。
「私に用って何ですか?」
女子A「しらばっくれてるんじゃないわよ!」
女子B「何で白鳥さんに呼ばれたかわからない訳ないわよね?」
「わからないんですけど――」
女子A「ふざけんじゃないよ!」
「もしかして飯塚先輩のことですか?」
白鳥「あなた、もしかしてわかっていて拓海と一緒にいたの?」
「まぁ――」
パシッ!?
女子A「ふざけんな!」
女子B「飯塚さんはね、サッカー部のキャプテンで全校の女子生徒のアイドル的存在なのよ。そんな飯塚さんが猛アタックをして付き合えるようになった相手が白鳥さんなの。あんたみたいな何の取り柄もないバカ女が、飯塚さんに近付こうなど、100年早いのよ!」
パシッ!?
マナは女子Aに続き、女子Bにも頬を叩かれた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!