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____数分後
「……京一郎、のあんな姿はじめて見た」
「……そうか」
正直、俺は男に興奮することなんか1度もなかった。
「…のぼせちゃうよ?」
「…あ、……
もう、6時……か」
「…昼夜逆転、っていうのかな。
悪い子だね。俺たち……」
「そうだな。」
湯気がまだ残って、タイルは静かに冷えていった。
濡れた髪を拭く音だけがして、
ふたりとも、言葉を選ばなかった。
「メシ、食うか 」
「……え、京一郎の?」
「……簡単なのしか作れねえけど。
どうだ?」
「…食べる…食べる、
京一郎の……手作りご飯、えへ…」
……今度はおっさんの作るメシが嬉しいらしい。
「…服、あんのか?」
「……んー、
シャツと、下着……
あ、下着は洗ったから履けないんだ。」
「…、貸せるけど、
お前細いから履けるかわかんね。」
「……それでも、いいよ。
…?」
「……持ってくる」
俺はクローゼットに向かう。
どうして金髪はあんなに危機感がないのか、
もし彼奴が他の奴らに誘われたら、
すんなり受け止めてしまうのか?
胸の奥が、少しもやもやしている。
その気持ちのまま、金髪のところに戻る。
「……履けるか?」
「履ける、」
「……全然ぶかぶかだろ。
コンビニで買ってくるから待ってろ。」
「……、うん」
金髪は何故か顔を俯かせた。
鍵を閉めて、さっきとは大違いに
明るくなった道を歩く。
明るい道は、
さっきまでの夜とは別物みたいだった。
コンビニの自動ドアが開く音が、
やけに現実的で。
俺は無意識に棚を眺めながら、さっきの金髪の顔を思い出していた。
俯いたまま、何も言わなかった顔。
あれは――不安か、遠慮か、それとも。
「……」
適当に下着と、簡単な朝飯をカゴに入れる。
会計を済ませて外に出ると、朝の冷たい空気が肺に刺さった。
「……ガキだな」
誰に向けた言葉かも分からないまま、
家に戻る。
鍵を開けると、部屋は静かだった。
風呂上がりの湿った空気と、生活感のない朝。
「……おい」
呼ぶと、金髪はソファの端に座っていた。
借りた俺のシャツの裾を、
ぎゅっと握ってる。
「……おかえり」
袋を差し出すと、金髪は少しだけ目を丸くした。
「……ありがと」
声が小さい。
「……どうした」
一瞬、迷ったみたいに視線が揺れてから、
ぽつりと。
「……京一郎、
俺さ……帰ったほうが、いいよね」
胸の奥が、きしっと鳴った。
「……なんで、そう思う」
「……だって、
夜のテンションっていうか……
朝になったら、全部
……重くなるじゃん」
金髪は笑おうとしたけど、
うまくいってなかった。
俺は少し黙ってから、頭をかいた。
「……重くなってもいいだろ」
「……え」
「夜だけの関係なら、
最初から名前なんか呼ばせねえよ」
金髪が、ゆっくりこっちを見る。
「……京一郎」
「……今日、学校あんだろ」
「……うん」
「行け。
でも……」
言葉を切って、少しだけ近づく。
「……逃げたくなったら、
ここに来りゃいい」
金髪の瞳が、じわっと揺れた。
「……ほんと?」
「嘘つく意味ねえだろ」
しばらくして、金髪は小さく笑った。
「……ずるいな、京一郎は」
「……知ってる」
朝日は完全に昇っていて、
夜はもう戻らない。
それでも、
ここには確かに“続き”が残っていた。