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赤らむ頬を両手で押さえて下を向く。
「あんまり、苛めないでください……」
「あなたのそういう顔が、見たいんです」
そう口にして、うっすらと唇の端で微笑む彼に、この人には本当に敵わないとも感じる。
「紅い色の薔薇の花言葉を知っていますか?」
そんな風にも感じていると、彼の方からふと尋ねられて、首を横に振って返した。
椅子から少しだけ腰を浮かせ、伸ばした手で私の首筋を引き寄せた彼が、
「……死ぬほど、あなたを愛しています」
耳に唇を寄せて囁いて、顔から湯気が出るんじゃないかというくらいに、一気にのぼせ上がるのを覚えた。
「……座ってください…本当に…」
込み上げる照れくささに、再び同じ言葉をくり返しつつ、だけど私を先に待たせてサプライズを仕掛けて、彼がかつての出会いのシーンを素敵な思い出に変えようとしてくれていることがわかると、幸せな思いにただただ包まれていくようだった……。
運ばれてくる以前と変わらないディナーコースを口に入れる度、本当に美味しくてと感じていた。
初めて食事を共にした時には、食品サンプルでも食んでいるみたいで味も何もわからなかったのに、一品ずつがこんなにも味わい深いものだったなんてと噛み締めながら食べていると、
「……美味しいですか?」
と、テーブルの向かいから問いかけられた。
「はい、とっても」答えて、それから、
「だけど先生の作られる料理の方が、私にはもっと美味しいです」
思い浮かんだままの本音を伝えた。
すると、「……え、」と、彼が言葉を詰まらせて、普段はそう照れることもないのに、下瞼を微かに赤く染めて、
「……それは、嬉しいですね」
片手で顔を覆い、咄嗟に照れた表情を誤魔化すかのように、親指と人差し指で眼鏡のフレームをくっと軽く押し上げた──。