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「おはようございます。今日は晴れてよかったですね」
佐々木隆二の母の佐々木あずさが、車からBBQの荷物を運ぶ際に声をかけられた。
今日は、公園に併設されているBBQ広場に現地集合で訪れていた。果歩は、比奈子と手を繋いで、
公園をぶらぶらと動いて遊具で遊んでいた。
晃は1人、予約していたBBQ広場に必要なキャンプ用品やクーラーボックスなどを運んでいた。
「あ、どうも。おはようございます。この間の児童館では、お世話さまでした。果歩と比奈子なら、あっちのブランコとかで
遊んでましたよ」
晃はさらりと向こうの方に誘導しようとした。
「荷物、多いですよね。お手伝いしましょうか?」
「いえいえ、1人で運べますよ。今日、お父さんは家1人って聞いてましたから、大丈夫です。ママさん達はお子さんの方、
優先で大丈夫ですよ?」
「そうですか? あ、隆二、ちょっと危ないでしょう!」
あずさは、走って遊具の方へ行く隆二を追いかけ始めた。1人でどこまでも歩けるようになり、好きなものにはまっしぐらの隆二には、母のあずさの声は届いてない。
尚更、比奈子が遊んでいることもあって、急いで、ブランコの方へ行ってしまった。
「……元気がいいなぁ。やっぱ、男の子はパワフルだなぁ」
晃はボソッと独り言を言っていると。
「おはようございます。もしかして、比奈子ちゃんパパですか?」
「あ、はい。おはようございます。えっと、ごめんなさい、お名前は?」
トランクのドアを閉めると、後ろから比奈子と同い年くらいの女の子と小学生の男の子を連れていたお母さんが声をかけてきた。
「あ、すみません。名前も名乗らずに……。この子は、比奈子ちゃんと同い年の杉本美咲《すぎもとみさき》と言います。その母の杉本亜梨沙《すぎもとありさ》です。この子は、小学1年生の 杉本奏多《すぎもとかなた》です。今日はお父さん参加できなくてごめんなさい。力仕事は小松さんばかりにお世話になるかもしれません。これ、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちです。持ち帰ってください」
亜梨沙は、手に持っていたビール6本が
入った袋を晃に渡した。
「いえいえ、受け取れませんよ!! いいんです。今日はボランティアみたいなもんでママさんたちが楽しんでもらえれば
それだけで嬉しいですから」
「いえ、もらってください。うちの夫からの差し入れなので、持ち帰ってしまったら怒られてしまいます」
何度も繰り返し、いらないどうぞのやり取りが続いたが、結局晃が折れて、受け取ることになった。
「すいません。んじゃ、お言葉に甘えていただきます。ありがとうございます。大したお手伝いできないですから期待はしないでくださいね」
「いいんです。男手がいるだけで、私たちは助かりますから。その代わり、今度、うちの夫とお酒を飲んでやってくださいね。
喜びますから」
「ぜひ、喜んで、お酒飲みますよ。ほら、あちらで、比奈子と隆二くんが遊んでますから、行ってみてください。ブランコとかすべり台があるみたいですよ」
晃は、杉本家族を誘導した。あっさり、遊具の方へ移動する。あずさと比べて、亜梨沙は性格が二極化するもんだなっと晃は思ってしまった。
とりあえず、屋根のあるBBQの釜に持ってきた大きな網を置いて、炭を次々並べていく。
火を付けるまでにだいぶ時間を要する。頭にタオルを巻いて、気合いを入れた。
着火剤を炭の間に投入して、ガズバーナーで火をつけた。なかなか火がついているようでつかない。うちわであおぎながら微調整する。
クーラーボックスに入れていた冷凍保存のお肉やウィンナーを太陽の光で解凍する。
さすがに暑いためかあっという間に溶けそうだった。
スポーツドリンクをぐびっと飲んだ。額から滴り落ちる。
こんな家族サービス小松になってからしたことあったかなと思い出す。過去に一度もないが、晃が小学生の頃、父親が炭に火をつけていたのを思い出す。昔は着火剤が無くて、新聞紙に火をつけて炭を燃やしていた。
今は便利な着火剤がたくさんある。
ホームセンターのキャンプグッズもたくさん増えた。
ピザが焼けるプレートが売っていたりもする。
でも、榊原晃であったときは、多少、やっていた気がする。記憶が薄れているだけか。
1人で黙々と準備していると、果歩と比奈子、あずさと隆二美咲、亜梨沙、奏多の3人がこちらにやってきた。
プラスチック製の折りたたみ椅子を何個か広げたり、レジャーシートを広げた。
晃は、持ってきたジュースを紙コップに人数分準備した。
「お疲れ様です。暑かったですよね、これ、飲み物用意したので、飲んでください」
BBQコンロ近くにあったベンチに座っているママ友メンバーから紙コップを配った。みな、汗をかいていて、暑そうだった。何となく、お父さんが1人参加しているせいか、ママさんたちはなかなか話を切り出すのに難しかった。
ひたすら、晃は網に焼きにくい野菜を先に乗せていく。
しばし、沈黙が続いた。