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「あ、そう言えば咲結、少し前にK高の男の子に一目惚れしたとか言ってたっけ」
「うん、定期拾ってくれた人」
「そうそう、その人がK高だっていうから友達に探って貰ってさ、彼と仲良しの男の子に聞いたら今はフリーらしいから合コンやりたいって言ってくれたんだって!」
「で、合コンいつ?」
「それがちょっと急で明日の放課後なんだけど、大丈夫そう?」
「大丈夫大丈夫! わーい、合コン楽しみ!」
咲結が楽しみにしているK高の男子とは少し前に駅で定期を拾って貰った事がきっかけで出逢い、顔が物凄く好みだった事から一目惚れをした。
制服からK高生だと分かり他校にツテのある杏珠経由で彼を探してもらい、合コンまでこぎつけたという訳だ。
ただ、咲結の場合一目惚れしたから付き合いたいという訳でもない。
少し理想が高いせいか仲良くなっても理想と違う部分が出て来てしまうと急激に冷めてしまうという厄介な性格なのだ。
それ故、咲結は未だに一度も異性と交際経験が無い。
まだ高校生だしそれは普通の事だと思うも咲結の周りは大体彼氏が居るか、一度は交際した事があるという人ばかりで若干焦りもあった。
「それとね、咲結と一緒に写ってる写メ送ったら相手の男の子、咲結の事可愛いって言ってたみたいよ!」
「え? 嘘!? ってかどの写メ送ったのよ?」
「これこれ、咲結が結構気に入ってる花火大会の時の写メ」
「ああ、それね。確かにそれはメイクもめちゃ決まった時のやつだから結構自信ある!」
「あはは。まぁそういう訳で、相手は咲結の事意識してると思うからさ、上手くいくといいね! じゃ、詳しい時間とか決まったらまた教えるね」
「うん、ありがとう!」
そろそろ朝のHRが始まる時間という事もあり、ちらりとスマホで時間を確認した杏珠は慌ただしく去って行った。
(合コンかぁ……)
授業中、暇を持て余した咲結は窓の外を眺めながら明日の放課後にある合コンの事を考えていた。
(……何だろ、定期を拾ってもらってから昨日までは凄くカッコイイって騒いでたのに、今日は何だかちょっと霞んでるんだよね……)
つい昨日までは定期を拾ってくれた男の子とお近づきになれたら嬉しいと思っていた咲結だったのだけど、合コンの話を聞いた後から何故かその男の子が頭の中で霞みつつあった。
(まぁでも、せっかく杏珠が合コンの話を持って来てくれたんだし、とりあえず楽しもう! ってか私の事可愛いって思ってくれてるの、何だかちょっと恥ずかしいなぁ)
合コンに若干乗り気でなくなっている咲結だったけれど、せっかく話をつけてくれた杏珠を立てる為にも明日は楽しもうと切り替える。
それに、相手が自分を可愛いと言っていた事を思い出すと恥ずかしい反面やはり嬉しくもあり、授業中にも関わらず咲結の顔は終始にやけていた。
翌日の放課後、杏珠や杏珠の友達とK高の男子が集まり、駅近くのカラオケ店へとやって来た。
男女四人ずつの計八人で行われるこの合コン。美男美女の集まりだなと咲結は思っていた。
(男子はみんなイケメン揃いだし、女子はみんなモデル並みに綺麗で大人っぽいんだけど……私、浮いてない? せめてもっとメイクで大人っぽくするべきだった……)
咲結も決して浮いてはいないけれど、どちらかというと童顔寄りの咲結だけ年齢よりも幼く見えるせいか、一人年下っぽく見えていた。
「咲結ちゃん、だよね?」
「あ、うん! この前は定期拾ってくれてありがとう!」
「いいって。目の前で落としてるの見たら拾うでしょ」
「そっか、そうだよね」
隣に座った咲結の想い人、西片 隼人が早速咲結に声を掛けてくると、きっかけとなった定期の件から話は弾んでいく。
「でも、あの日咲結ちゃんの定期俺が拾えて良かったよ」
「え?」
「だって他の男が拾ってたら俺ら知り合ってなかった訳だしさぁ」
「確かに」
「ってか咲結ちゃん、可愛いからモテるでしょ? 」
「いや、全然モテないよ。彼氏もいた事ないし」
「え? マジで?」
「うん」
「えー、じゃあさ、俺、咲結ちゃんの彼氏に立候補してもいいのかな?」
話は盛り上がるし、思った通り良い人ではあるのだけど、話しているうちに咲結は彼への想いが冷めているのをひしひしと感じていた。