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復讐

復讐

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1

『楽になるよ』

♥

70

2023年12月29日

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ー楽になるよー





…許せない。

あいつの…冬弥の、どこに…死ななきゃいけない理由があったんだ?

ーーーーー

小さい時はよく冬弥と遊んだ。

会った時は「おはよう」

帰りには「また明日。」と。

でも…小学六年生の時、冬弥が病気を発症した。

「冬弥…?病気って、なにが__」

「いいんだ彰人、少し…重たい病気のようだが、俺は元気だ__うっ…」

「げほっげほっ…」

「お、おい!無理すんなって…」

「…彰人、俺は、入院らしいんだ」

「入、院…って、は?」

「おい、そんな冗談は__」

「……」

冬弥の口角は少しではあるが上がっている…なのに…なのに目は…何かを訴えるようで、悲しいようで…そんな目だった。

「…っ!くそっ…!」

「じゃあ…俺は入院の準備があるから…またな。」

「…ああ」

もどかしい思いが喉に突っかかって…気持ち悪くなる。

「冬弥…」

ーーーーー

一緒に遊べないなんてことはどうでもいいから、早く元気になってほしい、そんな思いでオレは過ごしてた。

毎日お見舞いに行って話してた。

学校でのことや夏祭りで見たミュージシャンの話とか色々。

でも、冬弥の反応は薄くなっていって、目が虚になっていった。

それでも…ずっと、冬弥と一緒に、いたかった。

今だからわかる。オレは冬弥のことが好きだったんだ。

…この時も、本当は、気づいていたのかもしれない。いや、気づいていた。

けど…「苦しくなるだけだから」と、気持ちを押し殺していたんだ。

ーーーーー

「冬弥〜!きたぞ〜…って、どうした、!?」

そこには、苦しそうに自分の口元を抑える冬弥がいた。

「あきとっ、苦しいっ…!助け…けほっごほっ」

すぐにナースコールを押し、冬弥の手を握った。

「冬弥、まってな…っ!もう看護師さん来るからな…!!」

助かる、絶対大丈夫、って…何回も自分に言い聞かせた。

ーーーーー

容態が悪かったようで、緊急手術が行われることになった。

「頼む…神様…」

冬弥の両親も…オレの両親も…不安でいっぱいだったと思う。

オレも…そうだ。

冬弥と過ごした日々はオレにとって、宝物で、すごく楽しくて…

何より、これからも…ずっと一緒に、って。

ーーーーー

「全力を尽くしましたが_________。」

その言葉を聞いた瞬間頭が真っ白になって、気づいたらその場から逃げ出していた。

「はあっ、はあっ…っ…なんっでだよ…冬弥…っ…!」

「とうやぁっ…!!!置いてくなよ…!!オレはっ、これ、から、…っ、どうすれば…っ」

トイレの個室にこもって一人泣いていた。

声が枯れても、ひたすら同じ言葉を繰り返して

「冬弥、とうや」って。

そんな声なんて、届くわけないのに。

ーーーーー

泣くのにも疲れて、トイレの個室から出た時、こんな声が聞こえた。

「いやー205号室の青柳は…医療ミスだな…ま、いいか」

「たかが、“ガキ”だし…」

「わざとじゃねえし、…はっ、運が悪かったな…“青柳冬弥”笑」

今思い出しても怒りが湧いてくる。

オレの…オレの大切でかけがえのない存在の冬弥が

こんな奴らの手で…帰らぬ人になるなんて…

そんなの、あっていいわけがない。

「こんなの…ありかよ…っ…」

この時は怒りよりも悲しみの方が強くて、何もできなかった。

ーーーーー

…オレは今大学生。どこにでもいる“普通”の。

…でも、オレにはやらなくちゃいけないことがある。

誰でもない、冬弥ただ一人の為に 。

調べ尽くした。確実に殺す。

人生、そのことばかり考えて、全て注いだ。絶対失敗は許されない。

医者を殺すのは今日。

運がいいことにまだあの病院で働いていた。

虫唾が走る…

…医者がいつも病院帰りに利用しているタクシーに偽装して、

扉を開けて医者が入った瞬間、注射型睡眠薬を投入する。

そして

山奥で、殺す。

ーーーーー

「こんばんは〜」

…調べてる時でさえ怒りが湧いてくるのに、目の前にいると、早く…この手で…。

「…こんばんは、ご乗車ありがとうございます。」

「…失礼します。」

ぷすっ

「っ…なにしてるんだ…!!」

「…」

即効性のあるものだから、すぐ効いてくるはずだ。

筋弛緩剤も混ぜてあるから身動きもあまり取れない、はず。

「っ…体が動かねえ……」

許さない。

許されない。

こいつは、死ぬべきだ。

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…………

ーーーーー

「起きてくださいってば…っ!!」

ばんっ

「うっ…」

「こいつ、ほんっっっと起きねえ…!!」

「スコップで叩いても」

「叩いても叩いても叩いても叩いても叩いても!!」

起きねえ。

眠剤強すぎたか?

「…待つか…でも」

一回くらい、制裁を。

ぐさっ

「ぐあああっ…!!」

ぐさっ

「っ“…あ”あ“っ!!!」

「両足を刺せば、もう完全に動けないはず…」

「はあっ…!!身体中、いって…え」

「…あ、おきました?」

「…なかなか起きないから、心配したんですよー」

「○○さん?」

「なん、で…俺の名前…」

「青柳冬弥、って覚えてないですか?」

「は、はあ?覚えてねえよ!それはなんだよ…ちっ…いってえ…」

「青柳冬弥。オレの親友、」

「親友?それがなんだっていうんだよ…」

「親友…“だった”人だ。」

「…そ、それとこれ、どう関係あんだよ…」

「…」

ぐさっ

「んがあっ!!」

手を刺せばもう何も握れないから反撃はない。

「青柳冬弥、8年前にそちらの病院に入院していた子供です。」

「オレの親友だった…大切で、大好きな。」

「ある日容態が悪くなって緊急手術が行われました。」

「執刀医は貴方。○○さんですよ。」

「表面上は“助からなかった”と言っていましたが」

「本当は“医療ミス”ですよね。」

「それなら………っ、…いや、…良くない、です。良くないですけど、それだけだとしたら…オレはここまではいかなかった。」

「裏で…“たかがガキ”だとか“わざとじゃない”だとか…なんですかそれ。」

「医療ミスで子供一人死なせたんですよ…オレの親友なのに…大切な…親友なのに…」

「それなのに…なんですかあの態度…意味わかんないです…」

「だから…」

「 貴方を殺すんです 」

「ぁ…そ、そのことについてはだな…その………」

「す、すまなかった!許してくれ!!隠すしか、なかったんだっ!!」

「今更謝られたところで、冬弥は戻ってこないし、貴方が殺される未来も…変わってないです」

「オレは貴方のことが…許せないんです…っ」

「俺は、そんなつもりで手術に挑んだわけじゃ___」

ああどうしよう。

オレの中で感情が溢れ出る。

こいつを早く殺せ。

殺せ。

殺す。

こいつが生きてるなんてありえない。

死ね。

もう…頼むから口を開けないでくれ…っ!!!!

「…っ!お前のことが、許せねえんだよ!!」

「裏で好き放題言って挙げ句の果てには許してくれ?そんなの…自分勝手すぎだろ…!」

「冬弥はっ…死ぬべき存在じゃなかった…」

「絶対に…違う、お前なんかにっ…お前みたいな奴の手で…っ」

怒りと悲しみ、虚しさが入り混じり涙が溢れる。

こいつが許せない。

「帰らぬ人になるなんて…っ、そんなこと、あっていいわけない、だろ…!!!」

「お前みたいなっ!」

どさっ

「う”っ…」

「奴が…のうのうと生きて…っ!!」

どんっ

「っ“」

「オレは心底…っ、恨めしいんだよ!!!!」

ぐさっ

「あ”あ“あ”!!」

ぐさっ

ぐさっ

ぐさっ

「あ“ががが…っかはっ…」

「はあっ、はあっ…も、本当、お前なんてっ…」

嫌い

嫌い

こいつが心底恨めしい

嫌い

恨めしい

なんで

冬弥

冬弥

冬弥っ…!!

とうや…

ーーーーー

いつのまにか、もう医者は死んでた。

もう、解放された。

オレ、は…も、う…

できることはやった…

冬弥…オレはもう…いいか…、?

「彰人、お前がやったことは…俺は望んでいなかった」

「とう、や…?」

「オレ…もしかして無駄なこと…し、た…?」

「あ、あああ…な、んてこと…オレは、」

「ごめんなさっ…ごめんなさいっ…ごめっ、あ”、あ“あ“あ”!!」

「でも、俺のためにやってくれたのは…わかっている」

「もう、いいぞ」

「楽になろう。彰人…。」

「とうや…オレは、もう…」

『  楽になるよ  』

ーーーーー

自分史上最高の出来です

好評だったらチャットノベルの方でも書きます

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コメント

1

ユーザー

初コメ失礼しますm(_ _)m 最高です。毎度すごい作品をありがとうございます(*^^*) 今後も頑張ってください

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