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「姉ちゃん、僕勇者になれるかな」

「なれるわ、あなたなら」

そんなやりとりを今まで何十回したのだろうか、回りの冷たい視線に気づかずに。けど、回りの視線が悪い訳ではない。あの時は勇者なんてただの伝説だったから。

けれど、魔王は現れた。魔王にこんな言い方をするのはおかしいかもしれないけれどまさに、彗星のごとくっていう感じで。しばらくすると、近くの村が一つなくなったという噂が届いた。でも、驚きはしなかった。僕たちの住んでいる村に魔王の噂が届いた時にはもう、100を超える街や村が壊滅状態にあったのだから。「魔王」という存在は魔物と呼ばれる化け物作り出しそれを各地に送り殺戮の限りを尽くした。女子供もも皆殺しにした。人間は平和ボケしすぎていた。そういう僕はどうだったのかというと。

ただただ焦っていた。怖かったせいではない。当時の僕は、自分が勇者になることを強く望んだせいで魔王が現れたのだと本気で思っていた。そして自分が魔王を倒す運命だと確信していたのだ、僕は村で一番強かったし、頭が良かった。今思うとほんとうに自分に酔いすぎだろ!なんて突っ込んでしまう。それからはというと、、まあ、僕は勇者にならない。いや、正確にはなれなかった。勇者の決定については王国であったことだから、詳しくは知らないが聞いた話によると王宮に深い関係がある誰かに神からのお告げがあったらしい。

「これから述べる男を勇者にせよ」

という内容の。そこまでだと俄かに信じがたい話だが、王国から遥か遠くの村の名前を読み上げ、その男の名前、そして苗字まで指定があり、ほんとにその村に同性同名の男がいたのだから信じるしかない。そこからはもうトントン拍子。神に選ばれた男は王国に呼ばれた。そして、王の下に集まっていた力自慢を全員完膚なきまでに叩きのめしたそうだ。それでいてその時生まれて初めて剣を握ったなんて言うから、そりゃ神も選ぶわなー、って感じだ。医者を目指すほどの頭を持っており知識も十分すぎるほど十分だった。そして、そんな男に村人、いや、全人類は大期待。姉ちゃんも、もはや恋なのではないかと思うほど勇者様を慕っていた。もちろん、僕が勇者になりたがっていたことはみんな忘れていて、姉ちゃんさえも覚えていなかった。まあ、僕も勇者になりたいのなの字すら言葉に出す気はなかったし、もし言っていたなら笑い物だっただろう。村の人たちはみんな勇者に夢中だったーー

「もう朝、起きなさい。ラウ。」

うぅ、もう朝か。どうせ使命も役目も僕にはないんだからほたっといてくれたらいいのに。

「サナちゃんきたよ。待ってるよ」

サナが待ってる。現実に気づいて飛び起きた。そして急いで起きて服を着る。朝ごはんは食べないまま走って家を出る。






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