テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺は「道永 勇弥(みちなが ゆうや)」。20歳の大学生!特別イケメンなわけでも、ブサイクでもない…と思う。裕福でもないし、貧しくもない。いわゆる普通の大学生だ!ちなみに彼女はいない。俺の特徴として挙げるなら…そうだな。「とにかく漫画が好きで、時間さえあれば漫画を読んでいる男」だな!同じ漫画であろうと、何周も、何十周も読む男だ。
そんな俺は、とある日に、不思議な体験をした。
大学の男友達5人と飲み会に行ったとある日のこと。
「おいゆーや〜?お前ちゃんと飲んでるかぁ?」
「恵多(けいた)…。お前飲み過ぎだっての」
顔を真っ赤にして俺にだる絡みをしてくるこの男は「坂宮 恵多」。幼稚園から大学まで、奇跡的に全部同じの幼馴染で、実家は隣。全てにおいて奇跡的すぎる。周りから付き合ってると誤解されるほど仲がいい。でも俺は男なんぞに興味ないし、ちゃんと彼女が欲しいんだ!!
「おい彼氏ぃ。お前恵多のこと家まで送ってやれよ」
別の友達がそう言う。まぁ確かに時間も遅いしな。…いや誰が彼氏だって?!
「ったく、仕方ねーな…。おい恵多。帰るぞ」
俺は恵多の分の飲み代も払い、こいつを担いだ。
「さっすが彼氏〜」
とからかってくる友達を軽く蹴り飛ばして、飲み屋を出た。
実家は隣だが、今住んでいるアパートは恵多とは全然別方向。でも、時々こいつの家に遊びに行くので、この辺のマップは全部頭に入ってる。何事もなく恵多の家に着き、適当なところに置いて俺は帰った。
自分のアパートまで帰る時、俺は何故かは知らないが、普段とは別のルートで帰ろうと思った。普段は通らない道で、ちょっと新鮮だった。
しばらく歩いていると、道端に座り込んでいるの老人を見た。
(服装もボロいし…路上生活者の方なのかな。)
特に気にせず通り過ぎようとした。
「そこの若いお方」
声をかけられた。ひどくしゃがれた声だ。ここで気付かないふりをしてそのまま歩き続ければ良かったんだろうな。俺は反応してしまった。
「あ、はい?俺のことですか?」
「えぇ、そうです…。あなた、本はお好きですか?」
本!俺はその言葉に反応した。漫画は大好きだが、小説も好きだ。というか。本ならなんでも好きだ!
「はい!めっちゃ好きですよ!!」
「それは良かった…でしたら、この本を受け取っては貰えませんか?」
そう言われて、俺は老人から題名が塗りつぶされている黒くて分厚い本を受け取った。
どんな本なんだろう。 俺はとにかくそれが気になって、早く帰って読みたいと思った。そのため、いつもよりずっと早くアパートに到着した。
俺は謎にこの本に惹きつけられていた。部屋の電気をつけるまで待ちきれない。早くこの本が読みたい。そう思い、部屋の電気もつけず、デスクライトのみをつけてその本を読み始めた。
その本は読み切り漫画だった。物語を簡単に言うと、いわゆる転生ものだ。転生した男は勇者と崇められて、全世界から選ばれた優秀な人たちと魔王を討伐しに行く…そんなありきたりの物語だった。
でも、俺はそれを十分楽しみながら読んだ。なぜ楽しめたのかって?それは、俺は考察しながら読み進めるのが大好きだからだ。進んでは戻りを繰り返し、寝ずに4時間かけて読み切った。知らないうちに太陽が昇っていた。ま、明日…じゃなくて、今日は休日だし、別にいいか。
この漫画は面白かった。予想外な展開がちょくちょくあって、予想の逆をいくことが多かったからだ。だが、いくつか違和感があった。
それは、グロい描写が多いことだ。まぁ、それくらいなら他の漫画でもある。他のと大きく違ったことは、
普通であれば、切断面などはモザイクなどで隠したり、簡単に描いてしまうことが多い。でもこれは違う。骨も、内臓も、全てを忠実にはっきりと描いているのだ。言い忘れていたが、俺は医大生だ。解剖などで、そうゆうのには耐性がある。
次に、この漫画はバッドエンドで終わったことだ。だからこそ面白いと言えるが、正直に言って恐怖を覚える終わり方だった。最後のワンシーンでは、勇者がこちらを見ながら、悲惨な状態で何も言わずに息絶える。それで終わりなのだ。
そんな感じで違和感は多かったが、いい作品だった。昼夜逆転してしまうけど、今から寝ようかな。俺はそのままその本を閉じた。その時、俺は初めて表紙をちゃんと見た。貰った時は暗くてよく見れなかったが、今は太陽の光が差し込んでいるから。そこで俺はあることに気付く。その表紙は、茶色っぽいシミでいっぱいだったのだ。
「茶色…いや、赤黒い…?うっ!なんだこの臭い!」
それに気付いた途端、とてつもない異臭にも気付いた。この色と臭い。なんで今まで気付かなかったんだ!解剖の授業で散々嗅いできた臭いだろ!
そういえば、この色は作中でも見たぞ。そう思い、俺はもう一度漫画を開く。…俺の記憶は正しかった。作中で血が出るシーンに表紙と全く同じ色。つまり、本物の血が使われているんだ。このページも、このページもそうだ。俺は…なんて本を貰ってしまったんだ…。
すると突然、なぜか最後のページが開かれた。そう。主人公である勇者が死ぬシーンだ。そのシーンにセリフや効果音などの文字はなく、ただ目を見開いたまま死んだ勇者がいるだけだ。そのはずだった。しかし、今開かれた最終ページには吹き出しがあり、震えた血文字で
と書かれてあった。
突然、強烈な眠気が襲ってきたんだろうか。視界がどんどん暗くなって、俺は意識を失った。
次に目を覚ますと、周りには見知らぬ人々。床には意味不明な魔法陣。知らない場所。そして人々は口々にこう言う。
「おぉ、成功したぞ!」
「勇者様ぁ、勇者様ぁぁ!!」
…最悪だ。いくつもの作品を熟読してきた俺なら、すぐにこの状況を察することができる。俺は、あの漫画の世界に入ってしまったんだ。しかも…勇者で。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!