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芙月みひろ
92
#王子
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「……最高っすね。やっぱり見た目じゃなく、結果(仕事)だけで判断されるのって、こんなに楽なんだって。……だからこそ、さっきの雨宮主任の態度は、俺にとって衝撃だったんすよ」
「あ、そうなの? ……実は私も、陽一さんへの愛とは別次元で、主任にハートを掴まれたのよ。あの無駄のない指摘、圧倒的なプロ意識……。陽一さんが『人生の最推し(神)』なら、主任は『理想の上司(憧れ)』よ」
「すげえ分かるっす……。俺の顔を『納期延長の材料にならない』って切り捨てた、あの冷徹な瞳。……一生ついていくっす。あんなにゾクゾクするダメ出し、初めてで逆に感動したっすよ」
さっきまで陽一さんを取り合って殺伐としていた空気が、雨宮主任という「共通の推し」の話になった途端、異様な盛り上がりをみせていた。
私と王子谷くんは、どちらがいかに主任に厳しく詰められたかを、「名誉の負傷」か「勲章」のように語り合い始めた。その時だった。
「――おしゃべりに夢中で、午後からの仕事の『段取り』を忘れているわけじゃないわよね?」
「「!?!?!?」」
背後から響いた凛とした声。振り返ると、マイボトルを手にした雨宮主任が、私たちを見下ろしていた。
「あ、主任……! これは、その、仕事のための情報交換で……!」
私が取り繕う間もなく、主任は私たちを一瞥し、短く言い放った。
「……そう。午後は、さらに要求レベルを上げるから」
「「……承知しました!!!」」
颯爽と立ち去る、隙のない後ろ姿。私たちは、その美しい背中に向かって、深々と頭を下げた。