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#ヒューマンドラマ
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私だけの1人の彼氏 第4話:先輩と姉、狂宴のバスタイム1. リビングの宣戦布告
「ただいま……」 健が恐るおそる足を踏み入れたリビングには、氷のような微笑を浮かべた姉・愛良が待っていた。
「お帰りなさい、弟くん。……あら、久しぶりね、美羽さん」
「お久しぶりです、愛良お姉さん」
美羽は健の隣に堂々と座り、これまでの経緯――莉子の裏切り、翔子の暴力――をすべて説明した上で、毅然と言い放った。
「そういうわけで、私が健くんとお付き合いすることになりました。彼を必ず守り通すと約束します。今後とも、よろしくお願いします」
沈黙が流れる。愛良は優雅にお茶を啜り、吐き捨てるように言った。
「……だめよ。認めるわけないじゃない」
「なっ、話が違うだろ!」 美羽が立ち上がる。「挨拶に来れば認めると言ったはずだ!」と怒鳴る美羽に対し、愛良は冷たくあしらう。 「私は『友達としてなら』考えてあげてもいいと言っただけ。こんな暴力的な人に、弟は任せられないわ。気が変わる前に、とっとと出て行って」
「何様のつもりだ! あんたは弟を縛り付けているだけだ!」 美羽の罵倒を、愛良は鼻で笑った。
「お姉ちゃんが弟を守るのは当然でしょ? ……ほら弟くん、あんな怖い女の言葉を聞いてたらお耳が腐っちゃうわね。お姉ちゃんが綺麗にしてあげる」
愛良は強引に健を膝枕させると、耳元に「ふぅ……」と熱い息を吹きかけた。
「やめて、姉さん……」
「嫌だ、美羽さんに指図されるなんて。ほら、見て。弟くん、こんなに気持ち良さそうにしてるわよ?」
挑発する姉に、美羽の我慢は限界に達した。
「離れろ! 健くん、君自身はどうなんだ! お姉さんに監禁されかけてるんだぞ!」
美羽は健を愛良から引き剥がすと、今度は自分が健に耳打ちをした。
「ふぅ……。君がこういうのが好きなら、私がいくらでもやってやる。お姉さんの言いなりにならず、キッパリ断るんだ。君の恋人は私だけなんだから」
板挟みになった健は、恐怖と混乱で震えるしかなかった。
「よし、この人の汚らわしい匂いがついちゃったわね。弟くん、お姉ちゃんと一緒にお風呂に入りましょうか」
愛良が微笑むと、美羽が食ってかかった。 「卑怯だぞ! 不公平だ! 私も入る!」
「はあ? 正気なの?」
「……何だ、私に健くんを奪われるのが怖いのか?」
「いいわよ、そこまで言うなら。私たちの絆に圧倒されなさい」
健の意思は無視され、三人は浴室へと向かう。 「ほーら、服を脱がせてあげるわね」
「待て、私が脱がせる!」
二人の女が健の服に手をかける異常事態に、健は悲鳴を上げた。
「一人で脱げるから! 二人は、僕が良いって言うまで入ってこないで!!」
五分後。湯船に浸かる健のもとへ、全裸の美羽と愛良が現れた。 「髪を洗ってあげよう」「私が洗うに決まってるでしょ!」
再び始まる争い。健は胃の痛みを感じながら提案した。
「……髪は姉さんに。背中は、美羽さんに洗ってもらうから!」
「……ふふ、気持ちいいか、健くん」
美羽が背中を流し、愛良が頭を洗う。だが、愛良の手は次第に際どい場所へと伸びていく。 「そこはダメだよ、姉さん!」
「いいじゃない、姉弟なんだから」
「おい、嫌がっているじゃないか!」
浴室はもはや戦場だった。健は限界を感じ、泡を流すとそのまま脱衣所へ逃げ出した。
自分の部屋に戻り、ようやく一息ついた健のところに、着替えを終えた美羽が入ってきた。 「健くん……すまなかった。あんな事になってしまって」 「いえ、大丈夫です」
美羽は静かに健に近づくと、突然、彼の唇を奪った。 深く、熱い、愛の証明。
「これが、したかったんだ……♡」
「美羽さん……! 僕は、あなたを愛しています……!」
健の瞳に、初めて確かな愛の光が宿る。
「抱いても、いいですか?」
「いいぞ……。私を君のものにしてくれ」
姉の支配を打ち破るかのように、二人は強く抱き合い、重なり合った。 それは、凄惨な不幸の中に見つけた、唯一の幸福な時間だった。
(つづく)
今回のポイント
* 女同士のレスバトル: 愛良の「姉という特権」と、美羽の「恋人という特権」のぶつかり合いを激しく描きました。
* 混浴の緊張感: サービスシーンというよりは、健にとっての「精神的拷問」に近い空気感を出しました。
* 愛の結実: 最後に健と美羽が結ばれることで、不幸な物語の中に一筋の希望(あるいはさらなる狂気への入り口)を作りました。
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