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「…どういうことか説明してもらおうか?」
いや、圧がすごい。
これ言い訳通じるの?無理くない?
【fk】
佐久間の部屋から追い出されて、危機を逃れたことに安堵しながら呑気にエレベーターの到着を待つ。
やっと開いた箱の中に乗り込もうとすると、そこにいたのは今1番会いたくない人物だった。
「ふっか?ここでなにしてんの?」
なにしてんのもなにも、もう分かってるって顔してるよね。
お泊まりしたの?って眉間の皺から聞こえてくるよ。
その深く刻まれた眉間の下にある鋭い目が、まずは寝癖でぼさぼさの俺の頭を捉える。
そして、視線を下げた先には季節外れのネックウォーマー。
やばい、と思ったときには俺の首にあったはずのそれは照の手の中。
分かるよ、こんな季節にネックウォーマーなんてつけてたら怪しいよね。
佐久間、お前の気遣いが綺麗に裏目に出ちゃったよ…
俺の首を見て、照がひとつ深い溜め息をつく。
それからはあっという間だった。
抵抗しても無駄だと悟った俺は大人しく首根っこを掴まれて、ずるずると引きずられるように佐久間の元へ。
そして、冒頭に戻る。
ベッドに跨がってぽかんと口を開けて固まってる佐久間。
ねえ、お前なんでまだパンイチなの?
無理矢理俺を追い出しといてそれはないわ。
「泊まるなんて聞いてないけど?」
「泊まるっていうかゲームしててそのまま寝落ちしちゃっただけっていうか…やましいことはなんも…!」
固まってしまって声の出せない佐久間の代わりに弁明する。
「パンイチになるゲームってどんなゲーム?」
佐久間お前本当なにしてくれてんだ…
「てかさあ…佐久間パンツ裏表逆だけどどうしたの?パンツ脱いじゃうようなことでもした?」
ハッと我に返って佐久間も弁明を始める。
「しっ、してないしてない!ふかざわだよ!?ないない!」
「ふーん…」
しどろもどろになってる恋人の様子は気にも止めずに、佐久間との距離を詰める。
焦らすような動きで、照が佐久間のパンツに指を掛ける。
いや、俺何見せられんの?大丈夫?
お仕置き的なものが始まってしまったらどうしようと軽くパニックに陥っていると、急に照の動きが止まって、こちらに振り返る。
「ふっか、脱いで」
…は?
「えっ、おれ?な、なんで…?」
「服脱ぐくらいできるでしょ?」
やましいことがないのなら、と挑発的な視線が俺を刺す。
できない。できるわけない。
照の後ろの佐久間に目をやると、顔面蒼白になって首をぶんぶん振っている。
「できないなら無理矢理脱がすけど、お前俺に勝てんの?」
無理です。
ごめん佐久間、俺が帰った後にお仕置きでもなんでもされてこの嫉妬の鬼を鎮めてくれ…
大人しく服を脱ぐと、無数の噛み跡が晒されて照の眉がぴくりと動く。
ああ、終わった。
どうせバレるなら初めから嘘なんてつかなきゃよかった。
「下も」
「へぁ?」
変な声出ちゃった。
えっ、なんでなんでなんで?
もしかして俺お仕置きに使われちゃう感じ?
いわふかされちゃうの?無理無理無理…
「照っ、やだやだ!ふっか抱くとこなんて俺見たくない!」
佐久間も同じこと考えてたみたい。
照の腕にしがみついて涙目になってる。
「違うから、ふっかじゃ勃たない」
それはそれでちょっと傷付くな。
安心したのも束の間、遠慮のない手付きでぐいっとスウェットを下げられる。
「…佐久間のパンツ」
そう呟いてスウェットを掴んでいた手を離す。
「佐久間が見たことないパンツ履いてるからもしかしてと思ったけど、いつの間にパンツ交換するほど仲良くなったの?」
俺のパンツそこにあったのか…
てか佐久間のパンツ全部覚えてるのやばくない?
佐久間も引いてるのか、照の腕を掴んでいた手を離して後ずさる。
「まあ、全裸でなにかしてたってことは分かったよ」
分かられてしまった。
嫉妬全開の照を前にして俺達無力すぎない?
言い訳する隙すら与えてくれないんだけど。
「で、これは?」
指を指した先は、もちろん俺の腕。
「これっ、これは…前に女につけられたやつだから!男同士でこんなんないって!」
「俺が佐久間の歯形を間違えると思う?大きさも噛み方の癖も完全に佐久間」
断定しちゃうのまじで怖い。
「これね、シてる時に噛んでいいよって教えてたら噛み癖ついちゃったの、可愛いよね」
待って待って待ってメンバーのそんな話聞きたくないよ!?
両手で顔隠して照れてる佐久間もなんなの?頭おかしいの!?
異様な状況に硬直していると、照の指がゆっくりと俺の腕に触れる。
「ふっかの腕、ここ、この位置は腕枕で噛んだ跡」
腕の噛み跡を1つずつ指を指して言い当てていく。
「こっちはバックハグじゃないと噛めない位置だね」
俺達も知らない事実をなんでこいつが知ってるの?
えっ、まさか監視カメラとかないよね?
「随分と密着してたみたいだけど?」
ぐっ、と噛み跡に爪を立てられる。
冷ややかな視線は真っ直ぐに俺を捕らえていた。
中ボスなんかじゃない、ラスボス、大魔王。
佐久間、まじごめん。
もう俺無理です。戦えません。
「飲み過ぎちゃって記憶はないけど、まじでお前が想像してるようなことはないから!こいつが俺の寝てる間に勝手に噛んできただけなんで!俺なんも知らないんで!お仕置きでもなんでもして話聞いてやって!俺今日午後から仕事だから後は付き合ってるお二人で!とりあえずごめん!」
「あっ、おいふかざわ!!」
早口で言い切って、俺の裏切りに怒る佐久間を無視してその場を立ち去ろうとするも、あっさりと照の腕に掴まってしまった。
「いやいやいや、待って、俺、被害者!」
「潰れるまで飲んだ時点で共犯」
その通り過ぎて、返す言葉がない。
でも友達同士で飲み過ぎて潰れちゃうことなんてよくある話じゃん。
何もなかったんだしそんなに怒らなくてもよくない?
照が背を向けた隙に俺に向かって、べ、と舌を出してる佐久間。
悪魔だ…大魔王とその手下じゃん…
「許すと思う?」
「照っ、本当に俺らなんもないから!あっ、お尻触ったら分かる!指入れたら分かるから!指!入れて!」
俺の目の前でそれはまじで勘弁してくれ。
テンパりすぎてこいつ自分でも何言ってるか分かってないな。
「それは後でやるから」
照も後で、じゃないのよ。
「まあ、もういいよ、別に最初からそこまでは疑ってなかったし」
えっ、そうなの!?
じゃあ今までのはなんだったの?
「ひかる…!」
その言葉を無邪気に受け入れた佐久間が照に抱きつく。
照もそれを受け入れて、佐久間の背中を宥めるようにぽんぽんと叩いている。
あっ、解決しました?
ほっと胸をなで下ろそうとしたのと同時に、響く低い声。
「セックスしてないことが分かったってだけで、怒ってないとは言ってないよ」
その瞬間、照の腕の中に収まっていたはずの佐久間がふわりと宙に浮いて、気付いたらベッドの上に仰向けに転がされていた。
えっ…何が起こったの?
いきなりのことで理解が追いつかない。
佐久間も俺以上に呆気にとられている。
「お前らさ、さっきからずっと緊張感足りてないんじゃない?」
その一言で一気に空気が変わる。
「メンバーだからなんだかんだ多目に見てくれるって思ってた?」
今目の前にいるのは本当に俺の知ってる照なの?
正直、許してくれるって思ってたよ。
だって実際浮気したわけでもないし、俺たちの関係性が変わることはないって…
「嘘、ついたよね」
照の手が佐久間の首筋に触れる。
止めなきゃ、と思うのに体が動かない。
それは佐久間も同じなようで、ベッドの上で固まったまま照を凝視している。
「俺の気持ち、どうしたら分かってもらえるかな?」
見たことのない不気味な微笑み。
照に組み敷かれている佐久間の肩がびくっと震えた。
これから起こるであろうこと、流石に俺でも分かる。
「ふっか、」
照に呼ばれて、返事もできずに硬直する。
「選んでいいよ、佐久間に任せてここから逃げるか、佐久間が頑張るところを共犯者として見届けるか、好きな方」
まさに地獄の選択。
俺の選択を待つつもりはないとばかりに、照が佐久間の首に噛み付く。
「…っ!」
薄く血の滲んだ跡、その血の一滴さえ自分の物だと知らしめるようにべろりと舐め取る。
「佐久間も、いっぱい噛んでいいからね」
愛しくて仕方ないものを見るようににっこりと笑う照。
初めて本当の狂気を目の当たりにした。
急かされる決断に足が竦む。
どちらを選んでも消えることのない罪悪感に囚われるのは変わらない。
それだけのことをしてしまったのだろうか。
俺達にとっては些細なことでも、照にとっては鬼にならざるをえない出来事だった。
ただ、それだけ。
ごめん佐久間、と心の中で呟いて、俺が出した答えは…
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