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「ソフトクリームはバニラだよね。美味しかった。って、さっきから2人して黙ってるけど大丈夫?」
終始ご機嫌の果歩は、晃と比奈子の顔を交互に見た。なんとも言えない複雑な表情をさせていた。
晃は、エンジンをかけて、自宅まで車を走らせていた。
景色は木々が多い茂っている道路を走っていた。
自然が多いと、いくらか気持ちがやわらぐというが、比奈子の心境的には今は何をしても心ここにあらずだった。
「あのね、今日の夕飯。ひき肉とキャベツの味噌炒めとかいいかなぁとか思ったり、あと、手作り餃子も良いよね」
スマホのレシピを確認しながら、話す果歩。
何か吹っ切れたのか、気持ちが穏やかだった。
「果歩、今日、出かけて疲れただろ? 簡単なものでいいよ? 麺類とか茹でてかけうどんとか。あっさりめに」
「あー、そっか、日中食べすぎたもんね。それはいいね。比奈子はうどんでいいの?」
助手席に座っていた果歩は後ろの比奈子に聞く。比奈子は慌てて、首を上下に振って同意した。
まだ、話せなくなったことを果歩は知らない。どう反応するかが気になっていた。
「あ、今、あずさから、ライン来て、機会があればまたBBQしましょうねだって。隆二くんも楽しかったってよ。ね、比奈子も楽しかったよね」
ずっとニコニコ顔をして、頷いた。いつ声のことがバレるのかヒヤヒヤだった。内心、晃もそのことで気が気じゃなかった。
そのことを果歩に説明しようとするとタイミング悪く、果歩のスマホに着信が入った。
「もしもし、お父さん? 何かあった?」
実家の父からの電話だったらしい。その話は祖母が倒れて、病院に今、入院中であるという話だった。
「わかった。明日、お見舞いに病院に行くから」
果歩はそう言うと、電話の通話終了させた。
「お義父さん、なんだって?」
「なんか、おばあちゃんが怪我をして、入院してるんだって。最初はめまいだったらしいけど、そこから倒れて、頭を怪我して
入院することになったみたい。晃は明日、仕事でしょう。私と比奈子でお見舞い行くから」
「あ、え!? そうなんだ。俺は仕事に行かなくちゃいけないもんな」
「ね、比奈子、お母さんと一緒におっぴおばあちゃんのお見舞い行こうね」
そう言うと、また言葉を発することもない頷きを繰り返した。
「……さっきから気になるんだけど、なんで、比奈子喋らないの?」
「……!?」
果歩がそれに気づいたことに目を大きくさせた比奈子。
「え、もしかして、話せないの?」
「……」
何も言えなくなった。
「ねぇ、なんで? 晃、知ってたの?」
「なんで話せないんだろう。プレッシャーなんじゃないの?」
「え、私のせい?」
「そうは言ってないだろ」
「……病院、連れて行ったほう、良いのかな」
晃は、話せない理由は知っていたが、さすがに果歩には本当のことは言えなかった。何とかごまかした。心配そうに見つめる果歩。
「話せなくても文字とか書けるようになれば筆談で大丈夫だろうけど、手話でもいいのかな? え、でもなんで、急に話せなくなるの?」
肩をくすめる比奈子。
「でも、元気そうだし、大丈夫か。気にしたら、はげるもんね」
無言でうんうんと頷く比奈子。声がでなくて本当に過ごしていけるか心配だった。晃は、果歩と比奈子がバトルしないかとかあらぬ想像を張り巡らせていた。