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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

12 - 第12話 序 協力? そしてーー② 結ばれた協力関係

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2025年06月28日

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“キリト”



アミにもその名に聞き覚えがあった。



彼女がまだ幼かった頃、此処から去っていった人の事を。



一族最高の力の持ち主と謂われながら、特異点で在るがゆえ夜摩一族を捨て、四死刀の一人と呼ばれるまでになった事まで。



アミはその頃はまだ幼かった為、キリトがどんな人物かまでは覚えていなかった。



此処ではキリトの名は禁句となっている為、誰からもキリトの事を詳しく教えて貰った事は無かったのだ。



“――でも、どうしてこの子が?”



アミの疑問。だがそれに通ずるはユキヤという名の特異点、そして四死刀の一人。



「キリトは三年前の狂座との闘いで冥王の魂を封じ、極秘裏にその封印の証、光界玉をこの地に隠したのじゃった……」



長老のその言葉。それはアミにとって初耳であった。



アミはてっきり一族の誰かが、封印したとばかり思っていたのだから。



「キリトはほとんど満身創痍じゃった……。ワシに光界玉を頼むと傷の手当てもお構いなしに、すぐにこの地から出ていった……」



長老が昔を思い出すかの様に、その時の状況を語り続ける。



そんな長老を遮る様に、正座したままの少年は口を開く。



「私はそのキリトに頼まれて、此処を捜していたんですよ」



彼はこの地に足を踏み入れた理由を、静かに語り始めるのだった。



「キリトに頼まれた……じゃと? お主は一体……」



それに続くは“何者?”なのか。



考えればこの少年の正体は、まだ誰にも分からない。



アミ以外には――



“やっぱり……”



特異点で在り、四死刀のキリトとも知り合い。



そして彼女は知っている、ユキヤと少年が名乗っていた事を。



「キリトの事をお話する前に、まず私の事を説明せねばなりませんね――」



どう考えても、導き出された答は一つしかなかった。



「私の名は……ユキヤ」



やはり、というかアミ以外は仰天だ。



只者で無い事は分かってはいても、あの伝説とも謳われた四死刀の一人が、まさかここまでの幼子だった事に。



「あれ? どうしたんですか皆さん?」



少年が正体を明かした瞬間、まるで塩が引く様に後退り、少年から距離を取る者達。



それは明らかな怯懦の顕れ。



「何か勘違いなさってるみたいですが、誰も“四死刀”のユキヤとは言ってませんよ」



別人との言い回しに、更に仰天。じゃあ本当に何者か?



これにはアミも意外だった。



しかし少年の左横に置かれた刀が、それを示していたのは――



「アナタ方の知ったユキヤとは非なる者……。私は彼からその刀と名を受け継いだ者。私は四死刀ーー“星霜剣ユキヤ”の後継者です」



それは幕府転覆を謀った四死刀に、後継者が存在していたという事実。



しかもこの様な年端も行かぬ少年が? という事実に驚愕を隠せない。



「まあ私の事は“どうだって”いいんです。キリトの事ですが……」



少年はあくまで、自分の事はそれ以上の何者でも無い事を強調し、早々にキリトへの話へ移る。



「そうか……。してキリトは? まだ生きておるのか!?」



もはや深くは問い詰めまい。重要なのはその先。



意気込む長老に対し、ユキヤという少年は冷静に対応する。



「それは……分かりません。私にこの地にある光界玉を護る様、伝えてすぐ去りましたから。普通なら生きてはいない程の重傷でしたが、仮にもキリトは四死刀の一角。そう簡単にくたばるとは思えませんがね……」



とにかく異常な程に、落ち着き払っていた。



少年は淡々と事の顛末を語り、また一呼吸置いて語り出す。



「キリトの生死は分かりませんが、師であるユキヤを含めた三人は、伝え通り亡くなっています」



まるで見てきたかの様な――



やはり四死刀の存在は、既に伝説と共に終わっていた事を。



伝えられていない後継者を遺して――



「それにしても此所を捜すのは苦労しましたよ。キリトは東北の、大まかな場所しか伝えなかったですからね」



それに皆が妙に納得。これで全て合点がいく。



この少年は迷い込んだ訳でも、この地を狙っていた訳でも無かった事が。



そして、ここからが本題。



「では……狂座から光界玉を護る為、我々に力を貸してくれぬか?」



最も重要事項。その力は必要不可欠と云えた。



その懇願とも言える長老の頼み。



皆黙して、その返答を待つ。



久遠にも感じられた静寂の刻の中、ようやく口を開く。



その答えを――



「……アナタ方に力を貸す義理は有りませんが、光界玉を護るのはキリトの意思であり、散って逝った彼等の鎮魂の為にも、冥王復活は絶対阻止ですね」



その返答を皮切りに、歓喜の声が上がった。これで一縷の望みが出てきた事に。



彼は決して、素直では無いかもしれない。



屈折した形であるにしろ、冥王復活阻止の想いは彼も一緒なのだ。



ここに夜摩一族とユキヤとの間に、掟を越えた協力関係が結ばれる事となった。



「とはいえアナタ達がどうなろうとか、それは私には関係の無い事ですし、身の安全までは保障しませんので……」



だがやはり少年はそれ以外の事に関しては、無関心であったのは言うまでもない。


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