テラーノベル
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8月下旬の某日、日陰が濃くなるお昼すぎ。
蝉は疲れることを知らず、忙しく鳴き続けている。
「どこまで進んだー?」
「全然頭回んねー…今問3」
僕は今、蒸し暑い畳の部屋で若井と2人。
絶対7月中に終わらせるって意気込んでた課題を、あと一週間足らずで休みが終わるこの頃にやっている。
若井もそうだ。
それも夏休みの醍醐味と言ったところだろうか。
暑さに苛まれて正常な判断ができていないことは確かだ。
扇風機が意味をなさないこの天気では何をするにも気力が湧かない。
「俺もう無理ぃー……」
そう言ってパタリと寝そべってから言葉を発さなくなった若井。
彼の身体の節々には汗が光っている。
僕も同じだ。
火照った顔の若井はなんだかいつもと違う雰囲気で。
不思議な感覚がした。
「でもやんないとさー、また先生に怒られちゃうよ」
少し言葉をかけても、返事がない
…まさか、眠った?こんな暑さの中…?
「……はあ…よく寝れるね。」
なかなか言い出すタイミングが無かったので良いチャンスだと思い、トイレに行き、コップに氷を4つと麦茶を注ぎ足した。
そうして汗をかいたコップをしっかり握って部屋へと戻る。
若井は寝返りを打ったのか、体が横向きに倒れていた。
その時僕は目にした。
「……ズボンずり落ちてる」
友達の下着なんて目にする機会はほとんどない。
強いて言うならプールの授業くらいだろうか?
そんなことはさておき、 僕はなんとも言えない光景を目にして、どうしたらいいのか分からなかった。
起こして指摘するべき?
いや、さすがにそれはキモいか…
じゃあ僕が整えてあげる?
それもなんかな…
少し戸惑っていると、若井がおもむろに目を開く。
僕は何事も無かったかのように言う。
「若井寝てたよ。 よく寝れるねこんな中で…笑」
少し口角を上げて、彼は言う。
「寝てないよ〜? 」
驚いた。
一体何が目的で?若井のことを凝視してあたふたしてた自分も見られてたのか?
「別にこれといった考えはないけど、涼ちゃん俺が寝たら何するのかなーって。笑」
「もう…そういうとこあるよね、若井ってば。」
「…さっ、続きやんねぇと。」
「うんっ、」
若井は結局自分の下着が見えていたことは知らなかったようだ。
たぶんそう。
課題に手をつけ始めて約2時間。
効率はどうかと聞かれたらあれだが、やらないよりはきっとマシだ。
だが、暑さに体力と集中力を奪われた僕たちにはこれっぽっちも問題を解く気はなかった。
次は僕も一緒に横になった。
「はー…なんでもっと早くやんなかったかなあ……」
「それ絶対毎年言ってるでしょ笑」
そんな話ばっかりしてまどろんでた昼下がり。
さっき入れた麦茶の氷がカランッと音を立てて、少しだけ目が覚める。
隣を見ると、やっぱり若井が寝ている。
今度こそ寝てるのか?それともまた寝たフリ?
「若井〜……」
「起きてるなら返事してー?」
「若井のあほー」
そんなことをコソコソ言っても反応がない。今度は本当に寝ているようだ。
僕はまた、不思議な感覚に襲われた。
若井に触れたい。
ぐちゃぐちゃにしちゃいたい。
自分でもなんでこんなことを考えるのか分からなかった。
暑さからなのか、癖なのか、口で小さく呼吸を繰り返す若井がどこか艶っぽくて、愛しくて。
「…今、変なことしちゃったら」
「どうなるんだろう。」
僕の手は自然と若井へ伸びていた。
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コメント
1件
ぐわーーー!好きすぎるーーーーー!