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「ふんふーん。ふふっ」ルーメは俺たちのために鼻歌を歌いながらお茶を用意している。

星淵天文台はロウニワ山の北側にある。そこからは海麻ヶ崎を一望できる。

屋上には展望台があり、そこからの夜景は絶景だと言われるらしい…


「あの…星霜さん」

「ん?」

「どうしてここに連れてきたんですか…?」

先程からこの部屋にはルーメの鼻歌しか聞こえていない。このまま沈黙を続けてもただただ気まずいだけなので聞いてみた。

すると星霜はああっという顔をして、何かを思い出したようだ。

「ルーメ。実はこいつらが例の。」

例の…なんだろう?俺らなんかしたっけ?

するとルーメは鼻歌を止めた。

「まじ?」

お茶を持ってこようとした足が止まった。

「大まじ。」

至って冷静に星霜が答える。

置いていかれる俺らは何をすれば?

「例のってなんだ?我ら聞いていいのか」

高い椅子に見栄を張って座り、結局床に足がつかないでじたばたしながらディアさんが聞く。

「ああ。こいつは耳がいいから、何処からか君たちの噂を聞いてね。急に僕に連絡して来てどうしても見たいって言うから…ごめん、君たちの了承も得ずに…」

苦笑いしながら彼はそう言う。『例の』っていう言葉で隠してるだけで、俺らが天界人だってことを彼女が耳にしたらしい。あれ、公にしないって風樹言ってたのになんでもうここまで…?

「あたしはなんでも知ってる。これも天命のおかげだね。」

お茶を出しながらルーメは言う。

出た。天命。能力のようなものか…て言うことはこの人も第3開眼してるのか!

「…そういえば、自己紹介が遅れたわね。あたしはルーメ、星淵天文台の13代目館長よ。好きに呼んで貰って構わないわ。…元は研究院にいたから星霜とは面識があるの。」

「そしてあたしの天命は読心。触れたものの感じたこと、見たことを知ることが出来る。いわゆるサイコメトリーに近いかも」

自慢げに彼女はそう言う。これは能力と言うよりかは超能力っぽい…

「あたしが君たちの噂を聞き付けたのは風に触れたから。微かだけど読み取れたからね…」

とても、とても自慢げに語っている。

彼女から少し目線をずらし、星霜を見ると真顔で彼女に向かって拍手している。やる気がなさそうな目で…するとちらっとこっちを見た。

星霜は顔でくいっと指示を出す。

出会ってまもない人だが、何を伝えようとしているかわかった。

俺はとりあえず言ってみた。

「ルーメさんそんな事ができるんですか…?めちゃくちゃすごいじゃないですか!あっ…えっと…その!触れたものの記憶が読めるとか僕できませんよ!」

その言葉に反応したのかディアさんも続く。

「そ、そうだ!我もここまでの人間を見た事がない!すごい!」

あたふたしてぎくしゃくしていたがまあ何とか行けた。星霜も一瞬飽きれた顔をしたがまあいい、と言わんばかりに目線を戻した

ーーーー

そんな妙な空気が収まってきた頃、ルーメはこういった。

「だから、君たちに触れれば当然本物の天界人か分かるって訳。記憶の中にある負の感情を読み取ればわかるんだ…」

そういえば彼女は手袋を外し、机の上に置いた。

星霜は言う。

「君たちが天界人という確信はまだ僕らには無い。そこで今日の本当の本題、君たちが本当に天界人なのかという疑問をここで確かめようと思って…別に痛いことはしないさ。」

ルーメの細く白い手が見える。彼女はそのうちの人差し指をこちらに向けてこう言った。

「君たちがただの天界人のフリをしている勘違いな人間なら今ここで言いな。後から後悔しても知らないよ?」

きっと疑っている。でも仕方ないじゃないか、本物なんだし。

「いや、俺たちはちゃんと天界人…でした」

少しつった目。それを怪しむようにひそめたが、彼女は目を閉じるとその指を俺に近づけた。

ヒヤッとした感覚が頬に伝う。一瞬だったがびっくりした。

「…っ」

ルーメは一瞬で指を外した。これで本当にわかるのだろうか…?と思っているとルーメは指をおろし、俯いている。手先は少し震えている。

「くっ…っ…」

ルーメはそこに座り込んだ。呼吸が荒いようだ。

なんだか苦しそうだ。あれ…?

しばらく黙り込んだがおぼろげな足取りで起き上がったと思えばこう言う。

「そこの君。ちょっとごめんね」

と言うと次はディアさんに触れる。

「うお」

急だったので小さな悲鳴をあげた。

しばらくすればやはりルーメの呼吸は荒くなっている。

「うぅ…っく」

「せいそ…う、みず…」

「もう持ってきてる」

星霜は何処からかペットボトルを取りだし開けてルーメに渡した。途端、凄まじいスピードで水を飲んだかと思えばしばらくすると苦しそうなのも治まってきたらしい。

それからしばらく経って。

ついにルーメは顔を上げて、俺らの方を見る。


「本物だったんだ、君たち…やっぱり風の噂は間違ってなかった」


彼女は目を輝かせてそう言った。


つづく


話の進行的に一日目から仕事サボるはえぐいですね。星霜は結構名の知れてるお偉いさんなのでそこはご愛嬌でおなしゃす


下界は地獄です。

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