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切ない😭 でもたくちゃん嫉妬してるの可愛い(•ө•)♡
夜。
リビングのテレビだけが明るく光っていた。
拓実はソファに座り、無言でその画面を見つめていた。そこには、ドラマのワンシーン。
——瑠姫が、女優と抱き合っていた。
それも軽いハグじゃない。背中に腕を回されて、お互いの体温を感じられる距離で。
顔が触れそうなくらい近くて。
長かった。
明らかに長かった。
瑠姫は帰ってきて玄関に荷物を置き、拓実が動かずテレビを見ていることに気づいた。
瑠「拓実…?」
返事はない。瑠姫はゆっくり拓実の隣に座る。テレビは、まだそのシーンを流し続けていた。
拓「……なんであんなに長かったん?」
声は震えていた。怒りじゃなく、傷ついた声。
瑠「…演出だから。俺が決めたんじゃないよ…」
拓「わかってる。仕事ってわかってる。せやけど……」
拓実は拳を握る。テレビを見つめたまま、呼吸が浅くなっていた。
拓「俺の知らん顔で笑ってたやろ。」
瑠「……拓実。」
拓「ハグも……。あんなの……俺以外に、絶対にさせんといて欲しかった。」
瑠姫はゆっくり拓実に手を伸ばす。でも、触れようとした瞬間、拓実はその手をはらった。
拓「触らんといて。」
瑠「っ……ごめん……」
拓実はようやく瑠姫を見た。その目は赤く湿っていた。
拓「“ごめん”って言葉な。俺、もう信じられへん。」
瑠「…………。」
拓実の声は崩れかけていた。
拓「俺、ずっと不安やったんや。“いつか手の届かんとこ行ってしまうんちゃうか”って。」
拓「笑顔も、声も、仕草も、全部、みんなに見られて、俺だけのもんじゃなくなるんちゃうかって。」
瑠「拓実、それは——」
拓「でも俺、信じたかった。“るっくんは俺のもんや”って。せやのに……今日のは、無理や。」
瑠姫は唇を噛む。喉が締め付けられる。
瑠「……俺、拓実だけだよ。本当に。あれは仕事なの。拓実を傷つけたくてしたわけじゃない……」
拓「わかってる!!頭では、わかってるんや!!でもな、心が……ついてこんかった。」
拓実は立ち上がった。涙が一粒、靴のつま先に落ちた。
瑠「行かないで……」
拓「……俺、今いたらもっと傷つける。せやから、一回離れたい。」
拓実はドアに手をかける。瑠姫は震える声で呼んだ。
瑠「拓実!……俺は本当に——拓実だけを愛してる。」
拓実は動きを止めた。でも振り返らない。
拓「……その言葉、今は信じられへん。」
ドアの閉まる音が静かに響いた。瑠姫はその場に崩れ落ちる。
声にならない呼吸が震えながら喉を抜けた。ただひとつだけ確かなのは。
——ふたりとも、同じだけ苦しんでいた。
END
つづく