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ことり
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🐈⬛˚ᯤ₊
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赤い部屋。
ルイは椅子に座ったまま、後ろ手に鎖のついた錠で拘束されていた。
だらんと垂れた髪の隙間から、目の前にある扉を睨みつける。
「……ルイ?」
小さな声が聞こえた。
その声の方へ顔を向ける。
ゆっくりと、誰かがこちらへ近づいてくる。
「タイキ……?」
その姿がはっきり見えるまで近づくと、タイキは急いでルイのもとへ駆け寄った。
『ルイ! 大丈夫か?!』
ガチャンッ――。
その瞬間、ルイの手首を縛っていた錠が外れた。
「……え……?」
ルイは自分の手を見つめる。
自由になった。
そして次の瞬間、タイキの身体を強く抱きしめた。
「……ありがとう」
『ここから出よう』
タイキはルイの手を握り、目の前の扉へ向かう。
扉を開ける。
その先に広がっていたのは、果てのない長い廊下だった。
ところどころ空間そのものが歪み、壁も床も、まるで現実ではないように揺らめいている。
「……外に出たのは、初めてだ」
『……あぁ』
ルイはその光景を見つめる。
しかし、数歩進んだところで突然、目眩に襲われた。
「う……っ」
身体が傾く。
タイキがすぐに肩を抱き、支えた。
『大丈夫か?』
「……大丈夫」
タイキにもたれながら、ルイはゆっくりと歩き出す。
「……どこまで続くんだろう」
『さあな』
どれだけ歩いても、同じ景色が続いている。
『異空間に閉じ込められてしまったみたいだな』
「……っ」
突然、ルイの頭に鋭い痛みが走った。
「っ……!」
その場にしゃがみ込み、頭を抱える。
『ルイ!』
タイキはすぐに隣へしゃがみ込んだ。
そして、ルイの頭にそっと口づける。
しばらくすると、激しかった痛みが少しずつ和らいでいく。
「……ん。もう大丈夫」
『本当に?』
「うん。ありがとう」
タイキは少し迷ったように口を開いた。
『ルイ。俺、おまえに言わなきゃいけないことがある』
「ん? 何?」
『強いヒーリングには、強い副作用が起きる可能性がある』
「副作用?」
『そう。主なものは、眠気、幻覚……それから依存や中毒』
タイキは一度、言葉を詰まらせる。
『だから…俺と、その……身体を重ねることが……おまえにとって本当にいいことなのか、分からなくて』
「……だから昨日、俺のこと拒んでたの?」
『……』
ルイは少しだけ笑った。
「俺、もともとこういう性格だよ?」
『……』
「嫉妬深いし、わがままだし」
『う……それは、そうかもしれないけど』
「でも」
ルイはタイキの手を取る。
そして、その手を自分の頬へそっと寄せた。
「タイキに触られると、安心するんだ」
タイキの瞳が揺れる。
「今までずっと、ひとりだった」
ルイは静かに続ける。
「でもタイキが現れて……俺に安心をくれた」
「ひとりじゃないって、思わせてくれた」
そして、まっすぐタイキを見つめる。
「だから……これからもずっと、一緒にいよう」
『ルイ……』
タイキの顔が泣きそうに歪む。
触れ合った手が、小さく震えていた。
『……信じて、いいの?』
「うん」
ルイは微笑む。
「俺、タイキのことには自信ある」
「この気持ちは、病気のせいでも、副作用でもないよ」
タイキは堪えきれなくなったように、ルイの身体をぎゅっと抱きしめた。
『……わかった』
二人は手を繋いだ。
そして、再び長い廊下を歩き始めた。
ゆっくりと目を開ける。
見慣れた天井。
「……」
ルイはぼんやりと隣を見る。
すると、ほぼ同時にタイキの瞳もゆっくりと開いた。
「……おはよう」
『……おはよう』
ふと気づく。
二人の手は、しっかりと繋がれていた。
「……ありがとう」
『何が?』
「夢の中でも、そばにいてくれて」
タイキは答える代わりに、ルイの胸へ顔を埋めた。
ルイはその頭を優しく撫でる。
「俺、挑戦したいことがあって……」
『挑戦したいこと?』
「今まで、無理だと思ってたんだけど」
ルイは少し照れたように笑った。
「タイキがいてくれるなら、やれる気がするんだ」
『何?』
「今度、ボーイズグループのオーディションがあるだろ?」
『……うん』
「俺、それ受けようと思ってる」
『……え?』
タイキが顔を上げる。
「どうした?」
『……嘘』
「え?」
タイキはスマートフォンを手に取った。
そして画面をルイへ向ける。
そこには、まさにルイが受けようとしていたオーディションの詳細が表示されていた。
「……知ってたの?」
『……俺も』
「え?」
『それ、俺も受ける』
「…………」
ルイが固まる。
そして――
「……えぇー!?」
部屋に、ルイの驚いた声が響いた。
数日後。
夢の中。
赤い部屋に、ルイはひとり立っていた。
腕を上げる。
ガシャリ――。
手首に繋がれた鎖が音を立てた。
ルイはその鎖をじっと見つめる。
「……これは、俺の心が現したものか」
恐怖。
孤独。
自分自身を縛りつけていたもの。
ルイがそっと目を閉じる。
すると――
サァ……。
鎖が、砂のように崩れ落ちていく。
そして、跡形もなく消えた。
「もう、何も怖くない」
ルイは前を向く。
「弱いところも、全部抱えて……」
「それすらも糧にして、俺は生きていく」
赤い部屋が、ゆっくりと色を変えていく。
真っ赤だった壁が、少しずつ緑色へ変わっていく。
もう、あの頃の自分を閉じ込める場所ではない。
ルイは最後に振り返った。
「……さよなら」
そして、扉の向こうへ歩き出した。
目を開ける。
目の前には、心配そうな顔をしたタイキ。
『ルイ……?』
「……タイキ」
『大丈夫か?』
「……寝なかったの?」
『おまえがヒーリングするなって言うから……』
タイキは不安そうにルイを見る。
『大丈夫か?』
「うん」
ルイはゆっくり身体を起こした。
「もう、大丈夫」
『……』
「もう悪夢は見ない」
少し考えてから、ルイは続ける。
「……もし見たとしても、もう逃げない」
「全部、受け入れるよ」
タイキが静かに笑う。
『……夢蝕症は、自分の意思で治さないと意味がないって聞いた』
『……乗り越えたんだな』
「……おまえのおかげだよ」
ルイはタイキの髪を優しく撫でる。
そして、少しだけ照れたように笑った。
「……やっぱ、変わんないよ」
『ん?』
「……俺の気持ち」
ルイはタイキの頬に手を添える。
そして、その顔をそっと引き寄せた。
唇が重なる。
「やっぱり、違う」
『……え?』
タイキは驚いたように目を見開いている。
ルイは自分の胸元に手を当てた。
「前はさ……タイキがいないと、俺は駄目になるんじゃないかって思ってた」
『……』
「でも、違った」
ルイは穏やかに笑う。
「タイキがいてくれたから、俺は自分で立てるようになったんだ」
タイキは黙ったまま、ルイを見つめている。
「だから、これからは……」
ルイはそっとタイキの手を握った。
「俺がタイキの隣にいたい」
『……うん』
少し照れながら、ルイは笑った。
「俺が、タイキを好きだから」
タイキの目に、じわりと涙が浮かぶ。
『……ずるい』
「何が?」
『そんなこと言われたら……もっと好きになるじゃん』
「……ふふ」
ルイは笑いながら、もう一度タイキの手を握り直した。
窓の外から、朝の光が差し込んでくる。
「タイキ」
『ん?』
「……一緒に行こう」
『どこへ?』
ルイは少しだけ笑って、窓の外を見る。
「俺たちの、これからのところへ」
タイキも笑った。
『……うん』
二人は手を繋いだまま、朝の光の中へ歩き出した。
コメント
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第9話、読み終わりました……「光」ってタイトル、本当にぴったりだね。 赤い部屋で自分を縛ってた鎖が砂になるところ、胸がぎゅってなった。あのシーン、すごく好き。 それに「俺の気持ちは病気のせいでも副作用でもないよ」ってルイが言ったところ、強くなったんだなって思った。依存じゃなくて、ちゃんと自分の意思で隣にいたいって言えるの、尊すぎる🥀 朝の光の中、手を繋いで歩き出す二人、見守りたくなるよ。 続きも読ませてくださいね。