ガチャガチャ、バタバタ
いつも通り仕事をしていると何やら下の階が騒がしい。 つい、気になり見に行くと荷物をまとめているようだ。俺は近くに居た使用人に声をかけた。
「おい、何かしたのか?」
その使用人は驚きながら答えた。
「ま、魔王様!?」
「し、知らないのですか?」
「明日から長期休暇ですよ!?」
「は? 長期休暇? なんだそれは?」
長期休暇。それは休みの無い、もはやブラック企業と言ってもいいほど働いていた魔王とは程遠い言葉だ。
使用人は淡々と説明した。
「魔王様、長期休暇とは~~」
「まぁ、長い休みという事です。 」
「ほう、つまり仕事を休めという事か」
「はい。そういう事です。」
長期休暇の事は分かったが、何をしようか…。
悩んでいるとジリリリとけたたましい音の電話が鳴った。
電話をとると受話器から懐かしい声が聞こえてきた。戦友の颯馬(そうま)だ。
「おぉ、颯馬か!久しぶりだな」
「おぉ、久しぶり」
「魔界も長期休暇だよな?」
「あぁ、そうらしいな」
「こっち(天界)も休みなんだ」
「そうなのか」
「良かったらさ、人間界で会わねぇか?」
「良いのか?」
「おう!」
「分かった。明日な」
「場所は後で教えるからな」
「じゃあな」
ここで電話をきった。
颯馬は天界の長。凄く明るく陽気な性格だ。
戦友と言ったのは昔、魔界と天界で争いが起きた時に助け合ったり戦いあったりしたからだ。
しかし、俺と颯馬が仲良くなった事を知った颯馬の親が 悪魔と関わってはいけない と颯馬を叱ったらしい。
それ以来、会ってなかったのだが…。
まあ、とにかく颯馬の声が聞けて嬉しかった。
俺は急いで明日の準備をした。
準備とは言っても何をするのかも分からないのでとりあえず、日用品や生活必需品などバッグに詰め込んだ。
しばらくして、颯馬から電話がかかってきた。
明日の待ち合わせ場所や、スケジュール、時間などきっちり決めた。 颯馬も楽しみなのか声がいつもより明るい気がした。
「色々決めたけど、なんか聞きたい事ある?」「そういえば、お前確か彼女居たよな?」 「それがどうした? 」
颯馬には天使の彼女が居る。
「彼女とは行かないのか?」
聞いた瞬間、俺は受話器越しにも関わらず 悲しいような殺気のような負のオーラを感じた。
「行かないよ」
颯馬は悲しそうな声で答えた。俺はあまり深堀しないようにしようと考え「そうか」とだけ答えた。
「じゃあなまた、明日」
電話は途切れた。
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