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憂海歌
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Haru
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心
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その帰り道。
駅へ向かう途中、達宣は何度か祐希を見上げていた。
「……祐希さん」
「ん?」
「今日、ありがとうございました」
「何が?」
「一緒にいてくれて」
祐希は少しだけ目を細めた。
「俺も一緒にいたかったから」
達宣は、また顔を赤くした。
付き合う前から、祐希はこういう人だった。
自分の話をちゃんと聞いてくれる。
急かさずに待ってくれる。
何気ないことを覚えていてくれる。
でも、恋人になってからは、その一つひとつが以前よりもずっと心に残る。
「……祐希さんって、ほんとずるいですよね」
「え、何が?」
「……そういうとこ!」
「よくわからないけど、ごめん」
「謝らないでください!」
達宣が笑う。
祐希も笑った。
駅に着く。
いつもなら、ここで「また明日」と別れるだけだった。
今日は、達宣が少しだけ立ち止まった。
「……祐希さん」
「うん?」
「……また、こういうの、したいです」
「うん。しよう」
「……二人で」
祐希は、静かに頷いた。
「もちろん」
その返事を聞いて、達宣はほっとしたように笑った。
「……よかった」
小さな声だった。
祐希は、その声を聞き逃さなかった。
達宣はきっと、まだ自分がどれだけ大切に思われているのか、全部は知らない。
自分がどれだけ、達宣と過ごす時間を楽しみにしているのかも。
けれど、今はそれでいい。
少しずつ伝えていけばいい。
達宣が自分のペースで近づいてくれるように、自分もゆっくり歩いていけばいい。
「大塚」
「はい?」
「……また誘ってね」
達宣は一瞬、きょとんとした。
それから、ぱっと笑った。
「はい! 絶対誘います!」
その笑顔を見て、祐希は思った。
――ああ、好きだな。
何度思っても、足りない。
好きで、好きで。
一緒にいられることが、まだ少し信じられないくらいにうれしい。
けれど、それを全部伝えるのは、もう少し先でもいい。
今はただ。
「じゃあ、またね」
「はい! また明日!」
手を振って離れていく達宣を、祐希は穏やかな顔で見送った。
達宣も、少し歩いてから振り返った。
まだ祐希がそこにいた。
目が合う。
達宣は、照れくさそうに笑って、もう一度手を振った。
祐希も手を振り返した。
それから達宣は、今度こそ前を向いて歩き出した。
胸の奥が、ずっとあたたかかった。
恋人になったからといって、毎日が劇的に変わるわけじゃない。
でも、これからは。
会いたいと思ったときに、会いたいと言っていい。
もう少し一緒にいたいと思ったときに、そう伝えていい。
そして、その気持ちを受け止めてくれる人がいる。
それが、達宣にはうれしかった。
祐希もまた、同じことを思っていた。
コメント
2件
2話更新ほんとにありがたいです‼️‼️もう毎回の事だけどだいすきです💓💓