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休日のデートから、また少し経った頃。
その日も練習後、達宣はいつも通り明るかった。
「えっ、まじですか!? それめっちゃ面白いじゃないですか!」
少し離れたところから、達宣の笑い声が聞こえてくる。
祐希が顔を上げると、達宣はほかの選手と話していた。
何か面白いことがあったらしい。
身を乗り出して話を聞いて、声を上げて笑っている。
祐希は、その様子をしばらく眺めていた。
達宣が楽しそうなのは、うれしい。
自分といるときだけ笑ってほしい、なんて思っているわけではない。
達宣には達宣の交友関係があるし、自分以外の人と楽しく過ごす時間だって大切だ。
そんなことは、ちゃんとわかっている。
――わかっているのに。
「……」
もう一度、視線を落とす。
手元の飲み物をひと口飲んで、息を吐いた。
別に、何かされたわけじゃない。
達宣はただ、楽しそうに話しているだけ。
それなのに、胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。
(……俺、何やってるんだろ)
自分で自分に呆れる。
付き合う前から、こういう気持ちはあった。
達宣がほかの人と笑っていると、少しだけ寂しくなる。
でも、今は付き合っている。
だからといって、達宣の時間を独り占めしていいわけではない。
そんなことを考えているうちに、達宣の話し声が近づいてきた。
「……あ、祐希さん!」
顔を上げる。
達宣が、ぱっと笑って近づいてきた。
「お疲れさまです!」
「お疲れ」
「何してたんですか?」
「休んでた」
「そっか!」
達宣は、そのまま祐希の隣に腰を下ろした。
いつも通りの距離。
いつも通りの笑顔。
「さっきの話、聞きました? めっちゃ面白くて!」
「……聞いてない」
「あ、そうなんですか! あのね――」
達宣は楽しそうに話し始めた。
祐希は相槌を打ちながら、その顔を見ていた。
さっきまでほかの人に向けていた笑顔が、今は自分に向けられている。
それだけで、さっきまでのもやもやが少しずつ薄れていく。
単純だな、と自分でも思った。
「……祐希さん?」
「ん?」
「今日、なんか静かじゃないですか?」
心臓が、ほんの少し跳ねた。
「そう?」
「うん。なんか、いつもより反応薄い!」
「そんなことないよ」
「えー、絶対そうですよ!」
達宣はじっと祐希の顔を見つめた。
祐希は、目を逸らさなかった。
「……疲れてるだけ。大丈夫だよ」
嘘ではなかった。
ただ、疲れている理由が少し違うだけで。
達宣は納得したような、していないような顔をした。
「……ほんとですか?」
「うん」
「じゃあ、無理しないでくださいね」
そう言って、達宣は自分の飲み物を手に取った。
そして、少しだけ祐希のほうへ寄った。
「……俺、ここにいていいですか?」
祐希は一瞬、言葉を失った。
「……もちろん」
「よかった!」
達宣は何の疑いもなく笑った。
祐希は、その笑顔を見ながら思った。
――ほんとに、敵わない。
少し寂しくなっただけなのに。
こうして隣に来てくれるだけで、全部どうでもよくなってしまう。
それでも、ひとつだけ。
達宣が自分の隣にいることを、もう少し特別に感じてくれたら。
そんなことを願ってしまう自分がいた。