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颯ちゃんが近くに引っ越してくる?それとも今のリョウちゃんち周辺で2人で暮らしていける部屋を探す?2人の未来を見据えてね💝 あ!2人暮らしに1票!多分颯ちゃんはリョウちゃんが北川先生の所で生き生きしてるのわかってるから、リョウちゃんも違う分野の案件したいって言ってるしね。うん!そうだと思う!

北川先生、素敵な上司だね!!
お母さんの思惑には気づかないふりで電話を終えると、紅茶を飲もうとお湯を沸かす。
すると再び鳴った電話にビクッ……とした。
あーお湯を持っている時でなくて良かった。
今度の電話は颯ちゃんからだった。
‘一日、体は問題なかったか?’
「大丈夫。ねぇ、颯ちゃん」
‘うん?’
「颯ちゃんのマグカップ使っていい?」
‘ふっ…いい。どんどん使え。毎日使って’
「やったぁ、お借りしまぁす」
話をしながら紅茶を入れて、マグカップを持ち座る。
「あのね、相談というか…考えていることがあって聞いて欲しいんだけど」
‘聞く’
力強過ぎる即答に、自分の頬が緩むのがわかった。
「部屋、引っ越そうかと思って」
‘どこへ?忠志くんのとこ?’
ほら、颯ちゃんは私が地元に帰らないのはわかってくれているんだ。
「ここと颯ちゃんの中間地点に」
‘リョウが電車通勤するのがイヤだ’
「へっ?」
想定外の返事に、おかしな声が出てしまった。
「日本の都会じゃ、電車通勤は当たり前でしょ?」
‘当たり前とか世間一般の常識とか、そんなことはどうでもいい。俺のリョウが満員電車に乗るのがイヤだ’
「……」
‘その部屋は職場もスーパーも徒歩圏内で気に入っている。出かけるには駅も近いし文句なしの立地’
「…でも…颯ちゃんからは遠いもん」
‘今は毎日行けないけど、もっと一緒に居られるように考えるから少し待って’
「うん……」
考えるって言っても、考えて1時間半の距離が縮まるもの?
日曜日の昨日一緒にいて今朝分かれた時に思いついただけだから、私ももう一度考える必要があるのかな?
その週の木曜日。
颯ちゃんは、夕方うちの鍵を持って来るはずだ。
「良子ちゃん、お昼食べた?」
「いえ、もうすぐ大木さんが戻られてから休憩に入ります」
「じゃあ会議室で一緒にお昼にしよう、面談を兼ねて」
北川先生は、事務員と二人で向かい合い食事をしながら面談することが年に2度あると聞いている。
私は初めてだが、先週から順に面談されているのは知っていた。
ここで勤務時間の調整から、業務への不満などの聞き取りがされるらしい。
なので、基本的に私たち事務員は9時から5時半勤務だが、一人は8時半から5時勤務、一人は4時までの勤務だ。
どちらもご家族のデイケアセンターからの帰宅時間に合わせているらしい。
大木さんもお子さんの小さい時は5時まで勤務で、保育所へお迎えに行っていたという。
「失礼します。今から昼食を買ってくるので10分後くらいに会議室に入ります」
北川先生のブースで声をかけると
「裏の幕の内弁当、一緒に買って来て」
と、2つ分の代金を預かる。
私もおつかいのお駄賃としてご馳走になるということだ。
いつものお昼より少し豪華なお弁当を頂きながら、先生は仕事についていくつかの質問をした。
「今後、特に扱ってみたい案件や力を入れたい業務はある?」
「家事事件と債務関係について扱うことが多かったので、これからは一般民事を一人で扱えるように頑張っていきたいです」
「良子ちゃん、この職1年で、弁護士がどれだけ数多くの種類の案件を扱うか驚いただろ?一人でできるものは?」
「破産手続、個人再生、離婚、親権、養育費、財産分与、慰謝料、相続、成年後見、未成年後見…などは特殊でなければ出来ると思います」
「ははっ、見事に家事事件だね。損害賠償請求、不動産関連、労働事件等の一般民事を今後積極的に良子ちゃんに回すようにパートナー先生に指示するよ」
「ありがとうございます」
そして、先に食べ終えた先生はお弁当に蓋をしながら
「彼と話した?」
と、穏やかに聞いてくる。
私は先に北川先生に相談した手前、正直に……颯ちゃんに言われたことを伝えた。