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〜side小柳〜
叶さんにもう一度会えた
もう一度触れ合えた
それだけで良かった
俺は後ろ髪を引かれる思いで市役所を飛び出し、気付けば四つ足で駆け出している
俺の姿を見て目を丸くしてるローレンさんの元へ駆け寄った
「こ、小柳?」
「‥‥‥‥‥‥」
無言のまま乗ってきたローレンさんのパトカーを指さす
そして両手を合わせてお願いのポーズをした
少し考えたローレンさんはポケットを探り、鍵を俺に投げて渡した
もう一度手を合わせ、感謝を伝えると俺は急いで車に乗り込む
そしてゾンビが出てからは一度も鳴らさなかったサイレンを響かせる
「うぉっ!小柳⁈」
ローレンさんが慌てて俺を見る
ごめんねローレンさん
説明したくても、もう俺は言葉が言えないんだ
だから早く‥‥
ここに長居は出来ない
この音に集まってこい!
アクセルを蒸し目的の場所に向かった
この間に倒れた警官や市民が手当出来ると良いんだが‥‥
進路は北
俺はデスマウンテンに向かっている
パトロール中に気付いた
あの山付近が一番ニオイが濃い事を‥‥
車から電子音が鳴る
ヤバい‥‥ガソリンが切れそうだ
この街にも、もうガソリンは無いだろう
住宅街を抜け林道を走る
とうとうガソリンが切れ、脇道にパトカーを寄せるとエンジンが止まる
サイレンも止め、さらに上を目指す
せっかく集めたゾンビが散ってしまっては困る
俺の撃つ銃声でまだ近くにはいると思うけど‥‥
少し山奥まで来ると大きく息を吸い込んだ
「アオォォーン!」
高く伸びる声はこだましながら遠くまで鳴り響く
少し登っては遠吠えし、集まっては撃ち殺す
どこまで聞こえてるんだろう
街中まではさすがに無理なのか‥‥
それでも声が枯れても止めることは出来ない
街の中の銃撃戦とは違い、体力の消耗が激しい
山の中腹を越えるか超えないか‥‥
もうそろそろ良いだろう
四つ足で駆け上がって来た手は血だらけだ
銃は途中で捨てて来た
弾が切れてしまったから
真っ赤な月が近く感じる
その月を見つめながら最後の力を振り絞った
「アオォォーーーン‥‥」
襲い来る痛みの中
瞼の裏に見えたのは太陽の下で笑う叶さんの姿
これは夢?
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