〜side叶〜
負傷した警官や辺りに居て巻き込まれた住民達が次々に病院へ運ばれていく
僕もベッドに運ばれ、治療を待っている
ローレンが心配そうに駆け寄って来た
「叶さん‥‥」
「ローレン‥‥ごめん‥‥本当にごめんなんだけど僕先に治療もらえる?」
「‥‥頼んでる‥‥今来るよ」
何も言わなくてもローレンには伝わってる
僕がロウの所に行きたがってる事
「ロウは‥‥」
「俺のパトカーでサイレン鳴らしながら街から離れて行ったよ‥‥」
すぐに星川さんが来て治療にあたってくれる
「‥‥これで傷も治るんだけど、ちょっと傷が多いと効きが悪いみたい。薬飲んでも痛みが残るんだけど、痛み止めの強い注射もする?ちょっと眠気と体が動かし辛くはなるんだけど」
「いや、いいや。要らない」
「え、良いの?痛いでしょ?」
「んー、大丈夫かな」
「さすが叶さん。身体の作りが違うのかも」
違うわけがない
痛みを隠しながら上半身を起こす
渡された薬を飲み、ベッドから降りる
「叶さん‥‥叶さんの車ここまで持って来てもらったから」
「サンキュー、ローレン」
病院の駐車場にパトカーが止まっている
急いで乗ろうとドアノブに手を伸ばした時、微かに声が聞こえた
犬の遠吠え‥‥
違う‥‥狼
「‥‥ロウだ」
急いでエンジンをかけ、窓を全開にする
どこから聞こえた?
病院を出て街の外周をぐるりと周る
気がつくと街からゾンビが少なくなっている
きっとサイレンに誘導されたんだ
「‥‥オーーン‥‥」
こっちからか?
北側に決め車を走らせる
真っ直ぐ走り続け、住宅街を抜けた
「‥‥いた!」
道の端に見えるパトカー
だが気づく
運転席側の扉が空いていることに‥‥
真横に停め誰も乗ってない事を確認する
その時また遠吠えが聞こえる
「‥‥デスマウンテン?」
車を捨てて山に入ったのか?
僕はそのまま車で道のない山へ入っていく
すぐに経路は分かった
ゾンビの死体が教えてくれる
デコボコの道が行く手を阻む
コメットは速度は出るが車体が軽く、デコボコした地面では全体が浮き上がり走りづらかった
ある程度登るとゾンビの死体が無くなってしまった
そう言えば遠吠えは聞こえるけど銃声がしない
どこにいるんだ?
もう一度鳴いてほしい
「アオォォーーーン‥‥」
もう近い!
早く行かないと‥‥
少し先で茂みが動いている
ロウが隠れているのか?
ゆっくり近づくとそれはゾンビだった
顔が半分潰れたゾンビ
なんだコイツ‥‥
近くには肉片のついた大きめの石
‥‥なるほど
銃じゃなくて石で撲殺‥‥
まだ死に切れなくて動いていたのか
そりゃ銃声がしないわけだ
そのゾンビに向かって引き金を引く
銃声の音に反応したゾンビが一体山の上から降りてくる
ソイツを倒しゾンビが来た方へ走り出す
木と木の間
何体かのゾンビが動いている
地面に見えるのは白銀の尻尾
「‥‥ローーウ!!」
僕は夢中でゾンビに銃弾を浴びせる
そして辺りのゾンビを一掃した
周りに集まって来ているゾンビには目もくれずボロボロになったロウを抱きしめる
「‥‥酷いよ‥‥」
綺麗な白銀の毛の半分は血に染まり、肌のあちこちは深く抉られていた
ロウの顔を見つめる
赤い月に照らさらていたはずなのに青紫に変化する
一瞬暗くなった空
僕はロウを固く抱きしめた
もうすぐそこにゾンビの気配が差し迫っている
山の稜線が一気にオレンジ色に染まる
そこからスッと朝日が登って来た
瞬く間に日は上り、何日か振りに街が明るくなる
辺りに居たゾンビ達が砂のように消えて行った
そして僕の腕の中のロウの耳も尻尾も消えていた
「‥‥ロウ?」
呼びかけには返事が無い
僕は急いで車にロウを乗せ、病院へ向かった
「‥‥ねぇ、治療すんだよね?‥‥傷は?」
「‥‥‥治療は終わったけど‥‥あの‥‥治らないんだよねロウ君だけ‥‥」
星川さんがロウの腕に包帯を巻く
「もっと血清使ったら‥‥」
「いや‥‥それは‥‥」
「もうやれる事‥‥ないの?」
「‥‥‥‥ごめんなさい」
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コメント
4件
え、なにこの話。めっちゃ泣きそうになる😢良すぎですよ。ラストエンドまじで楽しみにしてます。