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「自分が可愛いと思うのが当たり前のように、私も自分が可愛いと思ってやった事なの。誰が咎めようと、愛されなかった私には怒られても喜ばれても分かんないし、親友もどきの女に逃げられた私には何も無い…」
と言うと加奈子ちゃんの目から大粒の涙が零れた。
「私は罪の重さも、命を弄び奪った代償も、母や父の私への感情も、大切だと思っていた飼い犬が殺された時の感情も全く分からない…。」
切なげな表情をする彼女からは羨ましいという感情だけは私には読み取れた。
自分はこんな事しても何も思わないと言っているけれど、私がこんな事をしてしまったらどうしようもなくなる。自分を見失ったような、自分じゃ無いような気がしてならない。
「それでも奪っていい命は無いのよ。そんな簡単な理由で殺めるなんてしてはならない。」
そう言うと加奈子ちゃんはただ泣いていた。泣いている中でも「私には分からない。私が愛されていたら、自害していたかも知んない…。」とだけ言い続けていた。ゲームを続行出来そうには見えなかった。
『では裁判官は、哀れで無垢で可憐な少女を生かすか殺すか…判決を下してくださ〜い。』
私は軽々とこんな態度を取るこのARIAという子に憎悪だけを抱いた。こんな形で2度も死を味わせるの?どんなにいけない事をしても、無垢な少女に、未来のある子供に、ただ友達に裏切られて助からなかった尊い命を、この中のどちらかの一人の人物が軽々しく手で握り潰していいものではないのに…。
すると栄太が挙手し、「はい。」といい席を立った。
「判決を言うわ。ごめんな、こんな事で人の命っちゅうもんは潰しちゃ意見言うのは一番分かっとるねん。痛いほど、でもここから出るのにアンタの命が必要やねん。悪く思わんといてな。」
と静かに加奈子ちゃんにいい、真っ直ぐ眼を合わせた。
「有罪。」
『やっぱり自分の命が尊いって思うのが人間なんだねぇ。醜いし、如何に哀れな生き物なのに僕にはさっぱりわかんないよ。』
「実は俺の貰った裁判官の職業に書いてあったんは、[人狼を有罪にしなさい。出なければ死あるのみ。]ちゅうもんが書かれとって、有罪にするしかなかったんや。」
やはりこのゲーム…最初から人狼が吊られ死ぬ前提で作られた人狼ゲーム。バツの悪いカードを引けば確実に死ぬのが当たり前だったのだろう。ARIAはやっぱり酷い子だった。こんな事してなにが面白いのか検討も付きかねない。
『そろそろ時間だから第2ゲームを始めようか!』
と、ARIAが言うと壁がゆっくり開いて風を飲み込んでいく。
『じゃあこっちに来てくれる?』
みんなは黙って、違う部屋に移った。
ふと加奈子ちゃんが居ないことに気付き、振り返ると加奈子ちゃんは死体の前で、しゃがんでいた。
私は彼女に近づき話しかけようとしたら、
「分かってる。でも手は合わせさせて。」
と、呟いた。
「…私が殺した事に変わりない。だから手だけは合わせておきたいの。」
と一人黙祷している彼女には、確かに自分のした事に謝るような心はとても感じられていた。
6話に続く。
今回は私的にも考えさせられ、再度奪っていい命など無いと実感しました。
ここまで読んでいただき有難うございます。