side_不破湊
あの後は、解散することになったけど、
社長と俺は他の収録があった為、楽屋に戻った。
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やっと収録が終わり、自分の家の方の歩道に
向くと、もちさんが居た。
声をかけようと思ったが、そんな雰囲気では
無かった。
こんなに偶然なことがあるのだろうか、
という程、もちさんが同じ電車を乗り降りしている。
こんなに偶然なのは可笑しい、と思い、俺は
ちょうど次の駅に止まる時に話しかけようとした。
だが、…
急に小走りで駅に降りた。
自分の存在がバレたのかと思い、俺も小走りで
追いかけた。
もちさんは少しすると、何度もスマホを確認し、
普通、学生が行かないような場所に向かっていた。
もちさんは何度か路地裏を通り、
誰も居なさそうな公園の裏に行った。
すると、ぞろぞろと複数人の男達が出てきた。
見た感じでは4、5人程だろう、
剣持さんはそいつらに気づくと、焦った素振りで、
そいつらに近ずいて行った。
遠すぎて何を喋っているのか聞き取れないが、
何かを話している。
そしてキョロキョロと周りを確認すると、
そいつらは、鞄の中から札束を取り出した。
多分50万前後だ。
そんな大金を持ってどうしたのだろう、
と思ったが、
直ぐに色々なことが思いついてしまった。
その中で1番可能性があるのは、売春だろうか…
嫌、でももちさんがそんなことする訳が…
そう思っていたが、予想は当たっていたそうだ、…
男達がもちさんを連れて、近くのホテルへ向かった。
これは止めるしかない、
でもこのままだと、アイツらの方が優位になる、
だから、盗撮することにした。
もちさんの腕を掴んでいるところをピンポイントに
…よし、これで良い。
証拠さえあれば…。
『…何してるんや』
(バッ
« なんだてめぇ! »
「っ、え…?」
『そっちこそ誰だよ』
『もしかして、高校生に手出してんの?』
« そーだよ笑 »
『それ犯罪じゃない? 』
« 犯罪? いや証拠ねぇじゃん! 笑 »
« どーせ刀也、お前も俺らの方に着くもんなぁ? »
(ビクッ
「…は…ぃ…、」
男がそうもちさんに問えば、こくりと弱々しく頷き、震えていた手も、なにかに耐えるようにぎゅっと弱々しく握られていた。
« だってよ、残念だったな?助けられなくて笑 »
『証拠ならありますよ~?笑』
『ごめんなさい、盗撮しちゃいました!笑』
(パッ
スマホの録音画面を男に見せれば、男の瞳孔はズグと開き、秒に満たない間グッと固まった。
« は? 、 だる… »
『まー、証拠あるんで…』
« ちッ、くそがよぉ! »
少し挑発するように男に言い聞かせ、スマホをポケットに仕舞おうとする時、男の拳が自分の頭上にあることに気づいた。
…、っ!
殴られる…っ
(ガシッ
…、ッ?
『何してるんですか』
『しゃ、ちょ…??』
表を上げると、いなかったはずの、社長がいた。
『それと、なんで剣持さんも居るんですか?』
少し社長の口振りが怒っている…、
それに対してもちさんは返事をしない…
やってんなぁ、
『まぁ、とにかく揉め事なら警察を呼びますが』
『今、不破さんに殴ろうとしたお方、』
『これはどうゆう事ですか?』
« なんでもねぇよ…、ッ、!»
« ちッ、 めんどくせぇなぁ、ッ »
『はぁ、やっと行ったかぁぁ、』
『不破さん、これ本当にどうゆう事ですか?』
『…もちさんが、』
『売春を…、多分すけど』
『え、…、』
『剣持さん?』
(ビクッ
『…何してたんですか?』
『剣持さんの口から教えてください。』
もちさんは、ずっと俯いて黙っている。
その後も社長が何回か問いかけたが、
ずっとこのままだ。
少しして、社長が驚いた様な顔をした。
その時は何故驚いているのか理解出来なかったが、
剣持さんの方をふと見ると、
驚いている理由がわかった。
きっと今、
俺も社長と同じ様な顔をしているだろう。
もちさんが泣いていたからだ。
凄く静かに泣いていて気づかなかった。
それでも、体は震えていた。
フードを被っていて顔は良く見えないが、
苦しそうに泣いているのはわかる。
そんなもちさんを見た俺は、
助けてあげたい。
そんな感情が込み上げてきた。
そして、もちさんに寄ろうとしたと同時に、
社長ももちさんの方に近寄った。
そしてもちさんの小さな頭を撫でながら、
子供をあやす様な声で、
『もう大丈夫ですよ。』
と言った。
社長がそう言うと、
剣持さんは少し「ぅ…ッ、」と声を上げながら
泣いた。
俺も、もちさんに近寄り、
小さな子供をあやす様に、慰めた。
少しして、もちさんが泣き止むと、社長が
場所を移そうと、近くの店まで案内をしてくれた。
店に入り、奥の個室の部屋に入り、
俺がもちさんの隣に座り、社長が奥に座った。
社長はドリンクのメニューを開き、
もちさんに何が飲みたいか聞いた。
また黙っちゃうかなー、?と思ったが、
今度は小声で、
「っオレンジ、ジュース…で……」
と言った。
社長は少し安心したような顔をして、
俺にも何が飲みたいかを聞いてきた。
とりあえず何でも良かったが、ジンジャエールを
頼んでもらった。
コメント
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オレンジジュースとか可愛いかよッッ!
あーなんだ、えぐい神か
今回も神でしたわ…