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__むかしむかし、夜空に星が瞬くずっと前のこと。 “夜”は少女に恋をした
***
天空を覆う藍色に、宝石のような星が輝く空の下、誰も立ち寄らない、話題にもしないような森の奥に一軒の小屋。
「お願い!今夜のお話を聞かせて!」
暖炉の前のロッキングチェアに腰掛ける女性に、男の子がそう言った。
「今夜はもう遅いわ。 早く寝なさい。」
女性は、編み物をする手を止めず、男の子に言った。
「でも…今日はお話をしてくれるって、昨日言ったよ!」
「そうでした、すっかり忘れていたわ。」
そこで、ようやく編み物を止め男の子へと向き合った彼女は、しばらく考えたあと、男の子を膝に乗せて、語り始めた。
ずっとずっと、昔の話を。
***
今日は、素敵な夜だわ。
星は瞬き、月も明るく森を照らしている。
でも、昔は違ったの。
私が生まれるよりもずっと昔のこと。
昼と夜を守る、二つの一族が生まれた。
昼を守る一族は、街に暮らす人達の為に、昼を美しく彩った。
青空に白い雲を浮かばせて、植物の為に雨をふらせて、雨が止めば美しい虹が空にかかっていた。
みんな、昼の一族に感謝し、昼のことが大好きだった。
昼もまた、街の人たちを愛していた。
世代が変わっても、昼の美しさが変わることはなかった。
夜を守る一族は、街の人のことなど見向きもしなかった。
太陽が沈んだ夜は、暗闇に包まれていた。
明かりもなく、冷たい北風が泣き、大雨が降れば川は暴れ、農作物を次々と沈めてしまった。
街の人達は、夜を嫌っていたし、夜も街の人など愛していなかった。
自らの子に対する愛情も、彼らは持っていなかったのかもしれない。
先祖代々夜の一族は、住民達に顔を見せることなく世代は移り変わっていった。
今回のお話の舞台
__愛と光に溢れる街、メカニア