TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

ひえっ! ここどこっ!?

今私、お風呂を待っている間に飴を食べたところのはずなんだけど……。

まただわ。どんぐり飴を食べたら違うところに飛んじゃった。

今回はどういう状況?


辺りを見渡すと、どうやらここは居酒屋のよう。


「おつぎしま〜す」

「え?」


ビールを勧められ、反射的にグラスを差し出す。


「あ、ありがとう……」


え、ちょっと待って、何この声!?

私、ひよっとしてまた――。


「森勢さん、ロスのお話聞かせてください!」


わぁっ! また鷹也になってるの!?


「あー、私も聞きたい〜」

「カリフォルニア大学にも通われていたんですよね?」

「MBAを取られたって本当ですか?」

「素敵……」

「恋人はいらっしゃるんですか?」

「やだ、ちょっとー! プライベートのお話はもう少しあとよ! あとのお楽しみっ」


……言葉の後ろにハートマークが見える。

なるほど、鷹也はハーレムにいるのね?

いやそれより、これ現実?

左腕のaウォッチを見ると、今は4月12日の20:16。つまり今日だ。時刻も合っている。

どんぐり飴を食べたら鷹也になったの? 私の生霊が鷹也に乗り移ったということかしら。

理解できない現状に、呆然としていた。

学生時代から恋愛小説やファンタジー小説を沢山読んだし、漫画も大好きだった私だけど、現実に男女逆転や変身が起こりうるなんて、考えたこともない。

だって私が生きる世界は現実なんだから。

この展開はファンタジー小説の中でしか有り得ないのよ!

しかもどんぐり飴!? 変身アイテムがどんぐり飴って庶民的過ぎない?

それに悠太が食べた時はなんともなかったんだから……ないない。


「森勢さん、時差ボケはないんですか? まだ帰国されてから2日しか経ってないですよね」

「――!」


帰国して2日!? 2日前に帰ってきたってこと?

海外赴任は3年じゃなかったの? 4年もアメリカに居たってこと?

とっくに帰っているんだと思っていたわ。


「ぼ、僕は体力には自信があるので、大丈夫です……」


鷹也が人前で自分のことを『僕』と言うかどうかはわからない。でも何が正解か分からないから、当たり障りなく喋るしかない。


「ヤダー! 体力には自信があるですって! イケないこと想像しちゃう~!」

「キャー! 私も〜」

「う、腕立て伏せとか、見てみたいわね~!」


顔を赤くしながらも何を想像してるんだか、興奮気味の女子たち。

大丈夫? 鷹也。これセクハラじゃない?


「あの……わた……僕ちょっとお手洗いに……いや、トイレに……」


男の人なら『お手洗い』じゃなくて『トイレ』と言うだろうかと思い、言い直してみる。


「あら、ここに戻ってきてくださいよ~? みんな森勢さんのお話を聞くの楽しみにしているんですから」

「あ、はい……い、いってきますっ」


とにかくこの場から離れなくては!

鷹也の海外研修の内容なんて知らないし。アメリカでの話なんてできるわけない。

それに恋人がいるかなんて……。

トイレを探しながら、ふと手を見てみた。

鷹也のすらっと細いけれど、節の出た手。

その左手の薬指には指輪がなかった。


「結婚は……まだ?」


でも、結婚していても必ずしも指輪をしているわけではない。

職場にもよるよね。医療系の商社ってどうなんだろう?


「お、鷹也。どこに行くんだ?」

「え?」


レジの前を通りトイレに向かおうとすると、居酒屋の入り口から一人の男性が入ってきた。

誰? 会社の人? でも鷹也って言ったわよね?

うちの父と同じ世代の、ちょっと強面で身なりが立派な人だ。

このスーツ、絶対オーダーメイドだわ。いわゆるイケオジってやつだ。


「鷹也? どうしたんだよ」


ど、どうしよう……。


「ちょっと……飲み過ぎて」

「は? お前が? うちは家系的にアルコールに弱いヤツなんかいないぞ? お前も強かったじゃないか」


うち? ということは、この人親族?


「ト、トイレぐらい誰でも行くでしょう……」

「なんだ。トイレか。フォースフォレストの海外事業部でお前の歓迎会をやってくれているって聞いたから、一応挨拶に来たんだ。父親としてな」

「ち、父親⁉」

「礼には及ばんぞー。まあついでにお前の相手になりそうな子を物色してだなぁ……」

「相手……?」

「父さんも帰国当日の見合いはなかったなーって反省したんだ。寂しい独り身のお前に潤いをって思ったんだがなー」


それって、一昨日の内巻きヘアが完璧な人?

美味しそうなデザートプレートを食べてた人よね?

あれお見合いだったのか!

潤いをって、このお父さん……「何やってるの、息子に……」

「お前は森勢の後継なんだぞー。とにかく早く孫の顔を見せてくれ」


孫! ドキッとした。

あなたの見たがってる孫の顔、うちの家に来たら見られます。……なんてことは口が裂けても言えないけど!


つまり、今の鷹也には奥さんも、恋人もいないってこと? 光希さんはどうなったの?

一体どうなっているのだろう……。わからないことがいっぱいだ。


いや、それより私が鷹也になってしまっていることの方が問題だわ。

この変身、どうしたら元に戻れるの?

前回はどうして元に戻ったんだっけ……。


「鷹也? ……お前どうしたんだ? なんかボーッとしてるな。時差ボケが残っているのか?」

「……じ、時差ボケというか、さすがに帰国してすぐTHE日本って感じの宴会はしんどいよ。み、見合いもあったしっ」


さもそれっぽいことを言ってみる。


「ああ、見合いは悪かったって。でもこの宴会はお前の歓迎会だろう? 有り難いことじゃないか」


あ、そういえばさっきお父さんが歓迎会って言ってたっけ。

私、主役なんだわ。いや、私じゃなくて鷹也なんだけどね。


「有り難いけど……正直ハーレムはちょっと……」


あれセクハラだから。

しかし、ハーレムという言葉にこの父親はニヤッと笑う。

「いいじゃないかー。選り取り見取りってことだろう?」


この人キャラが……少なくとも私が知っている鷹也とは全く違う。

かなりの陽キャだわ、この父親……。


「おわっ⁉ しゃちょーじゃないっすかー!」


え、誰? 今度は超陽気な酔っぱらいが来た。


「鳴瀬課長! 盛り上がってるねー」

「いやいや、まだこれからっすよ! しゃちょーも一緒に飲みませんかー?」


か、課長? 課長が社長を誘ってるの?


「いいのかい? じゃあ遠慮なく! おい鷹也、早くトイレに行ってこい。父さん先に行ってるぞー!」


嘘でしょう? この会社どうなってるの?

私が知っている会社とは古い因習にとらわれていて、こんなフランクな上下関係はあり得ないのだ。

おそらく住宅メーカー全てがうちの会社のようではないと思う。

もっと人間関係が柔軟なところもあるだろう。

でもきっと、この会社ほど柔軟な人間関係のところはないだろう。


「……いい職場だね、鷹也」



――――――そこで私の意識はまた飛んだ。

入れ替わったらバレました!

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚