「な、ななな…」
無意識に女の子と視線がかち合う。彼女は便座に座り、凍りついたような表情でこちらを見ていた。その場に相応しく下着を下ろした状態で。
「う、うわぁーーっ!?」
「きゃあぁああぁぁっ!!」
直後に悲鳴が発生。単独ではなく2人分の絶叫が。
「ど、泥棒っ!」
「へ? え?」
「君、どっから入ったんだ! 人様の家に堂々と侵入して」
「あの、違うんです! 私…」
すぐにこの状況の真意を問いただす。動揺と葛藤しながらも。
女性は慌てた様子で下着を装着。同時に反対側の手をブンブンと振ってきた。
「そ、そうだ。警察呼ばないと…」
ポケットからケータイを取り出す。国の頼もしい組織に連絡する為に。子供の頃から頭に擦り込まれてきた番号を即座にプッシュした。
「わーーっ!! 待ってください」
「ちょ……何するんだ!」
「話を聞いてください。私、泥棒じゃないんです!」
「いやいや、そんな馬鹿な」
だが電話をかける前に彼女が妨害してくる。目前まで接近してきて。
自宅の中に見知らぬ人物が存在。考えられる可能性は1つしかなかった。
「きゃっ!?」
「あっ…」
仕方ないので無理やり突き放す事に。端末を持っていない方の手を伸ばしたのだがそこで予期せぬアクシデントが発生。
「ご、ごめんなさい…」
「……うぅうっ」
指先が衣類の中に吸収される。ダイレクトに女性の胸を触ってしまっていた。
「ひ、酷い…」
「いや、ワザとじゃないんだから仕方ないじゃないか。というか悪いのは君の方だし」
「……ぐすっ」
すぐに謝罪の言葉を口にする。鼻をすする行動を目の前に。一瞬、怯みはしたすぐに考えを改めた。場をごまかす為の芝居なんだと。
「うっ、うぅっ…」
「ちょ…」
「うあぁぁ、あうっ…」
直後に彼女の瞳からポロポロと涙がこぼれ出す。苦しそうな嗚咽と共に。
「ご、ごめんってば」
「んぐっ……はぁっ、はぁっ」
「本当にワザとじゃないんだよ。不可抗力」
どれだけ声をかけようとも泣き止む気配を見せない。気が付けば通報しようとしていた意識はどこかへと消え失せていた。
「私、本当に泥棒じゃないのに…」
「え?」
「ただおばさんに鍵を渡されて、んっ……先に帰ってろって言われただけなのに」
「おばさん?」
「なのに……何で何で」
肩に触れようとした瞬間、小さな囁きが耳に入ってくる。言い訳のような台詞が。
下から顔を覗き込むが驚いてしまった。記憶違いでなければ目の前にいるのは昨日、電車の中で遭遇した女性だったからだ。
「くそっ…」
「……え?」
「オラァッ!!」
「うがっ!?」
戸惑っていると下半身に衝撃が走る。かつてない程の違和感と痛みが。
「あががが…」
思わず床に倒れてしまった。額を床に接着させる形で。
「……うぁ、えぐっ」
「し、死ぬ…」
「お母さぁ~ん…」
「うぅ…」
助けを乞うが意識してもらえず。股間に蹴りを入れてきた犯人は涙を流してばかり。
逃げるのかと思えば彼女はその場に棒立ち。それはまるで昨日、電車の中で泣いていた小学生のような仕草だった。
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