テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
私、早乙女華凛《さおとめかりん》のさいごの記憶は修学旅行。
行き先の観光名所、どこかの崖で集合写真を撮るためみんなで集まった時隣の子の肩が触れてバランスを崩した。丁度雨が止んだから写真を撮ろうという事になっていたので、濡れた岩肌はとても滑る。
海におちた
自分の死を理解しても尚冷静な自分に驚いた
よく聞く走馬灯とやらはみることが出来なかった
….頭が割れるように痛い。
死んだ後も痛みと言う概念はあるのか。
そもそも意識がある事自体おかしくないか。
「…どこやねん、ここ」
生まれてこの方使ったことがなかった関西弁が出てしまった。
いやほんとにどこだここ。
周りは木々が生い茂っていて空は暗かった。
空ってあんなに紫色に見えるものだろうか。
私はその森の中の参道?らしきところに倒れていた。服が濡れた形跡はなく私は本当に海に落ちたはずなのにと不思議になる。
「おい!大丈夫か!?」
「わぁ!?」
「うわぁ!?意識あったのか!?」
男の子が急に話しかけてきて思わず驚いてしまった。相手も驚いてるようだが私はもっと驚いてる。
「あの…どなたですか??」
見た限り同年代の男の子だ。…髪が夕日のよう真っ赤ことを除いて。
「君こそ誰? ここがどこかわかる?」
質問を質問で返されてしまった。
「いや私も今気づいて」
「そっか…」
…ここでもう一回聞き直すのは無礼だろうか
流石に私にもそんな勇気はない
「…なぁ、向こう側なんか光ってないか?」
「え、どこですか?」
「あっちの方」
そう言って男の子が指を指したのは参道の下の方。上に向かう階段とは逆の方向の坂道だ
「確かに少し明るいですね」
「人がいるかもしれない!行ってみよう!!」
え
「待ってください!!!」
何か見えた。今のは!?
「はぁ?なんでだよ!?」
「少し待ってください!あれ多分人間じゃないですよ!!?」
「は?なんだよそれ?
人間じゃないってどう言うことだよ!?」
「そもそもなんでここからあっちが見えるんだよ!?!?」
「え?」
「光ってる所だいぶ遠いんだぞ!?
しかも光源が見えるほど開けた場所じゃねぇんだよ!!!」
「…あれ?」
ほんとだ、なんでわかったんだろう。
でも…私が見えたのは
たくさんの子供
体が薄い黄色に光ってる六歳程の子供
みんな…参道を登ってきてた
「上に登りましょうッッ!!!」
「なんでッッ!?!?」
「子供がたくさんこっちに向かってきてるんですッッ!!!逃げましょう!!」
「ただの子供だろ!?!?」
「光ってるんです!!!その子供達が光ってるんですよッッ!!!」
「は!?」
「いいから上にいきましょうッッ!!!」
説明してるだろ!!なんで理解しないんだよ!
私は強引に男の子の腕を引っ張った。
「なにすんd…」
「いいからッッ!!」
振り向いたら間に合わない。
もうすぐそこまで子供達はきてる。
そう思って男の子の手を引いた。
あれ
軽い
「…は?」
振り向いて思わず声が出た。
腕
私が掴んでるのは男の子の腕だけ
体は…
彼の後ろに夥しい数の子供がいた
彼は、
黄色に光っていた
なんでなんでなんでなんで
彼は光った後膨れ上がって弾けた
死んだ
最後、彼も子供と一緒に笑っていた
今私は走っている
ここは日本じゃない
なんなら世界線も違う
けど私が走っているのは森の中の神社みたいな所
湿った石階段を駆け上がりながら必死に恐怖を堪えてた
どこなのここ
他に生き物もいない
あの子供達は生き物じゃない
人間はあんな顔できない
そもそも光らない
あ
死ぬ
あれ、生きてる…?
周りを見渡すと森の中じゃない
ここは…
海だ
また気を失ってたのか
そもそも気を失うに入るのだろうかあれは
トンッ
肩を叩かれた
振り向くと同級生達がいた
戻って来れたの…?
「華凛大丈夫ッッ!?!?」
友達が抱きしめてくれる
温もりを感じながら私は涙を流す
「…怖かったッッ…!」
本当に良かったッッ!!!戻って来れて!
私は声をあげて泣いた
その日宿泊先で私が不思議な世界に行っていた間何がおこったかを聞いた
どうやら私が滑って海に落ちた後それを追って赤髪の男の子が飛び降りたらしい
その男の子は自殺をするつもりだったらしい
私が先に飛び降りたと思って止められる前に自分も飛び降りようとしたらしい
なんでそんなに詳しいの?と聞いたら
警察が遺書があったから自殺とみなして
友達がその時の男の子を見ていたらしく
疲れきった顔でフラフラ歩きながら崖の端に向かったらしい
だから多分私を自殺の仲間と思ったんじゃない?と言われた
その後警察やなどと協力して海に落ちた私を探していたそうだ
死んでても死体は見つけるつもりだったらしい
帰って来れて嬉しいが彼が本当に死んでしまったのは悲しい
せめて明日ここから帰る前に崖の近くにお参りに行こう
今日は修学旅行最終日
私が無事に帰ってきたことで中止にはならなかったらしい
私が落ちてから見つかるまでたった4時間しか経っていなかった
あれは気を失って見た単なる夢なんだろうか
色々あったけど楽しい旅行だった
帰ったら両親に私がした不思議な体験を話そうと思う
今となってはいい思い出なんだろう
「あ、ほら集合だってさ」
そう言って友達を振り向いた
「うん、早くいこ!」
笑い返してくれる友達とまた会えて良かった
「…ね?」
「あー惜しいな」
「理解できかねるであります!」
「なんだよそれ、俺はアイツが死んだのが惜しいんだよ」
「ほほぅ?、確かに我らの意識に介入してくるものは珍しいでありますが…」
「だろ」
「しかしアイツらも可哀想だな」
「飛行機事故なぞ起こる時に起こる事象であるからして、運命として受け入れるべきですな」
「せっかくアイツは生き返してやろうと思ったのに…」
「ややっ!もしや恋慕ですかな!?」
「黙れ、消すぞ」
「あの時子供達に捕まらず社まで走っていればな」
あれは呼び込みの魂だから
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!