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今日の音楽番組は、少し大人っぽいコンセプト。
スタイリストさんに渡された衣装を見て、
僕は少し戸惑った。
薄手のシャツ。
鎖骨がしっかり見えるデザイン。
インナーなし。
鏡の前に立つ。
「……別に、変じゃないよね」
少しだけ不安。
でも、コンセプトに合わせただけだし
これくらい普通。
そう思って楽屋の扉を開けた瞬間。
空気が止まった。
分かりやすく若井が固まる。
涼ちゃんも固まる。
沈黙。
「……何?」
僕が眉を寄せる。
若井がゆっくり近付く。
視線が、露出した首元に落ちる。
「それ、本番用?」
声が少し低い。
「うん」
涼ちゃんの顔が真っ赤。
「も、元貴、それ……ちょっと……」
涼ちゃんから言葉が出ない。
僕はムッとする。
「なに?」
若井がため息をつく。
「無防備」
「は?」
涼ちゃんが小声で続ける。
「透けてる……」
その言葉を聞いて僕は鏡を見る。
確かに、照明の下だと薄く影が出る。
「……別にいいでしょ。衣装だし」
若井の喉が上下する。
side 若井
視線が逸れない。
――やばい。
頭では分かってる。
でも。
「着替えて。」
思わず言ってしまう。
元貴が目を細める。
「……なんで?」
その無自覚さが一番きつい。
俺は視線を逸らして額を押さえる。
「俺が無理」
涼ちゃんが小さくうなずく。
「僕も……ちょっと心臓に悪い」
元貴はぽかんとする。
「え、そんな?」
俺が一歩近付く。
「自覚ない?」
耳元に低い声。
元貴の背中がぞくっとする。
「鎖骨見えてる。首筋も出てる。
動くたびに布が揺れてる」
淡々と列挙。
元貴の顔が一気に赤くなる。
「言わなくていい!」
涼ちゃんも隣でさらに赤くなる。
「わ、若井、言いすぎ……」
でも涼ちゃんの視線も、ちらっと見てしまう。
すぐ逸らされたけど。
俺は深く息を吐いて言う。
「あと、俺が興奮する」
直球。
涼ちゃんが「えっ」と声を漏らす。
元貴は固まる。
「ば、番組だよ!?」
「だから困ってる」
俺は本気。
「他のやつに見せたくない」
その一言で、空気が変わる。
独占欲。
真っ直ぐすぎる感情をぶつけられる。
僕の鼓動が速くなる。
「そんなの……」
言葉が詰まる。
涼ちゃんがそっと近付く。
「僕も、ちょっと嫌」
優しい声。
でも本音。
「みんなに見られるの、なんかやだ」
僕は二人を見た。
なんだか心の奥がじんわりする。
守られてる。
でも。
「……じゃあどうすればいいの」
少し意地悪く言う。
若井は即答。
「上になんか羽織って」
涼ちゃんも頷く。
「そうだね、それなら安心かも」
僕は少し悩んでから、衣装ラックを見る。
薄いジャケットがある。
「これなら?」
若井が見る。
少しだけ首元が隠れる。
それでも色気は消えない。
「……まあ、許容範囲」
涼ちゃんがほっとする。
僕は腕を組む。
「はぁ、二人とも過保護すぎ。」
若井が近付いて、低く言う。
「好きな人がそんなえっちな服着て
無防備なのは落ち着かないだろ」
涼ちゃんも小さく言う。
「うん、僕もドキドキしちゃう」
思わず僕の顔が真っ赤になる。
「ッな、、もう!二人とも変態!!」
でも、 悪い気はしない。
本番前。
袖で待機中。
若井が小さく囁く。
「終わったらちゃんと見せろよ」
「な、何を」
「その服」
涼ちゃんも言う。
「僕にも見せてね?」
さっきまで恥ずかしそうにしていたのが嘘みたいだ。
僕の頭が追いつかない。
でも分かる。
二人とも、本気で好きなんだ。
ステージに出る直前。
若井が背中に触れる。
「行こう」
涼ちゃんが反対側に並ぶ。
挟まれてる僕は安心感に包まれた。
収録終了後。
若井はこっそり衣装さんと話をしていたらしく
今日の衣装は若井が貰っていた。
そして、この日以降
こういった衣装を僕が着ることはなくなった。
その日の夜。
僕は今日の衣装を着させられ、二人の思うがままに。
少しえっちで、 でもちゃんと愛されてる。
それが分かる夜になった。