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まだ三人が付き合いたてで、
えっちなことはしたことがなかった頃。
夜、三人でソファに並んで映画を観ていた。
恋愛映画。
ちょうどキスシーン。
涼ちゃんがぽつりと言う。
「若井ってさ」
嫌な予感。
涼ちゃんがちらっと横を見る。
「こういうの上手そうだよね」
空気が止まる。
若井の動きが一瞬止まる。
「……何が」
涼ちゃんは映画を見たまま。
「キス」
無自覚。
完全に無自覚。
僕は思わず吹き出しそうになる。
「りょ、涼ちゃん、それ本気?」
涼ちゃんがきょとんとしている。
「え?なんで?」
若井がゆっくり涼ちゃんを見る。
目が少し細い。
「上手そうって?」
涼ちゃんは本気で考えてる顔。
「なんか余裕あるし、大人っぽいし」
素直。
だから危ない。
僕は横で笑う。
「確かに。余裕そう」
若井の理性が少し削れる。
「じゃあ、試してみる?」
「え?」
本気の目。
距離が近い。
涼ちゃんの心臓が跳ねる。
「ち、違うよ?そういう意味じゃなくて」
若井が近付く。
「じゃあどういう意味」
声が低い。
涼ちゃんは完全に挟まれる。
後ろはソファ。
逃げ場なし。
僕は横で面白そうに見てるだけ。
でも、ほんとは少し嫉妬してる。
「涼ちゃん、自分で火つけちゃったね」
涼ちゃんの顔が赤くなる。
「ぼ、僕そんなつもり、」
若井がそっと顎に触れる。
「天然は一番ずるい」
涼ちゃんの呼吸が浅くなる。
「……だって、本当に思っただけなのに、」
若井がさらに近付く。
鼻先が触れそうな距離。
「じゃあ確認する?」
涼ちゃんが完全にフリーズ。
「ま、待って、心の準備」
「さっき映画で見てたじゃん」
「それとこれとは違う!」
涼ちゃんの声が裏返る。
若井は一瞬だけ優しく笑う。
そして、軽く触れるだけのキス。
ほんの一瞬。
でも、 涼ちゃんの顔が一気に真っ赤になる。
「……っ」
涼ちゃんから言葉が出ない。
置いてきぼりな僕。
だけど、僕は横でにやにやして涼ちゃんに聞く。
「どう?上手そうだった?」
涼ちゃんは顔を隠す。
「ずるい……」
若井が淡々と。
「煽った罰」
涼ちゃんが小さく抗議。
「煽ってない」
僕は肩をすくめる。
「天然で煽るのが一番危険なんだよ」
涼ちゃんは僕たち二人を見る。
少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに。
「……でも、嫌じゃなかった、」
その一言で、今度は若井の理性が削れる。
僕がすぐ止める。
「はい終了!これ以上はだめ。
僕がかわいそーでしょ!」
若井がくす、と笑う。
「っふ、笑」
「な、なに、!笑わないでよ」
そして僕の方をじっと見つめて顎に手を置く。
「なに、寂しかったの?」
そう言って僕に迫る。
涼ちゃんが顔を赤くしながらこっちを見る。
「っちょ、ちが…ッ、み、みないで、」
涼ちゃんに見られているのもあって、
恥ずかしくなってしまう。
でも、若井はそんなのお構い無しに僕の唇を奪った。
一瞬、何が起きているのか理解出来ずに
ぽかん、としている僕。
そんな僕を見て嫉妬したのか、涼ちゃんが一言。
「……ね、若井、もういっかいして、」
若井が息を吐く。
「、ほんとに無自覚だね」
涼ちゃんはまだ赤いまま。
でも少しだけ笑う。
「だって好きなんだもん」
さらっと爆弾。
今度は若井が黙る。
僕も一瞬言葉を失う。
天然は、やっぱり一番強い。