テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
ユーハン魅力的すぎます!次回も楽しみに待ってます。
『貴方ノ為ならどんな罪モ犯ス』〜桃の花は赤く散る〜
第1輪 私ノ執事はどこカおかしイ
私の朝は、ユーハンが起こして始まる。
コンコンッ。
ガチャッ。
ユサユサッ。私は主様の身体を揺らす。
『主様。起きて下さい。』
『後、少し…。』
『あらあら…。その寝顔も素敵ですが、私は起きてる時の主様が見たいです。』
『…そんなふうに言われたら起きないわけにはいかないじゃん…。』
私は起き上がる。
『ふふ、おはようございます。食事の支度ができております。身支度をお手伝いしますね。』
と、言ってユーハンは私のパジャマのボタンにてをかける。
『えっ!?あの、自分で…。』
『何言ってるんですか?私は貴方の執事です。お着替えさせるのも執事の務めです。』
『着替えくらい自分で…!』
『おやもしかして……私に下心があるとお思いで?』
『いやそういう訳では…。』
『私は一度忠誠を誓った相手には献身的に仕える。それが私の流儀です。さぁ、私にお任せ下さい。』
『っ…。』
(ここまで言われたら断れない…いやでも恥ずかしさの方が勝ってる…。)
『でもやっぱり恥ずかしいから…着替え終わるまで、部屋の外に出ててくれる?』
『残念です…分かりました。』
ユーハンは部屋を出ていく。
『…ふぅ。』
シノノメ・ユーハン…彼はデビルズパレス別邸1階の執事だ。彼は忠誠を誓った相手には献身的にお仕えする。そう。主である私に。
(ユーハンらしいっちゃらしいけど…いくらなんでも着替えまではね…。)
『お待たせ、ユーハン。』
ガチャッ
『いえ。大丈夫ですよ。では髪を梳きます。』
『うん。お願い。』
私は櫛を渡してユーハンに髪を梳かしてもらう。
『……。』
(あぁ。なんて無防備なお方だ。こんなにも警戒心がないなんて…私のことを見てないんですね。男として。私は貴方のことを1人の女性として見ていて、こんなにもお慕いしていると言うのに。)
まぁいずれ…その身に解らせてあげますよ。
私が貴方のこと…狂おしい程愛してるってこと。
『はい。出来ました。』
『ありがとう。あれ、この髪飾り…。』
『はい。赤色の紐リボンを付けさせて頂きました。今日の洋服に似合うかなと。』
『ありがとう、ユーハン。じゃあ行こっか。』
『はい。』
ふふっ。鈍感な主様。今日の服に赤色は似合いません。牽制ですよ。他の人へのね。
『頂きます。』
『今日は主様の好物を作りました!たくさん食べてくださいね!』
『うん!ふふ、美味しい!』
『それは良かったです!デザートもありますよ!』
『やったぁ!』
『……ふふっ。』
遠くで主様を見ていた。
可愛らしい笑顔ですね。……私にだけ向けてればいいのに。まぁ、まだダメです。あるじ様が完全に私に堕ちる前に手にかけたら主様が悲しみます。まぁそれもまた一興かもしれません。
『ご馳走様でした。デザートも美味しかったよ。』
『ありがとうございます!』
『あ、いけない。エスポワールに買い物があったんだ。』
『あ、そしたら俺と行きましょう。ちょうど買い出しあったし…。』
『分かった、そしたら一緒に――。』
と、その時――。
『いえ、それなら私が行きますよ。ロノさんはご飯の仕込みがあるでしょうし。』
『え、いいのか?買い出し頼んで。』
『えぇ。では行きましょう。主様。』
『う、うん。』
(今、遮られた――?)
『欲しいものは買えましたか?』
『うん。買い出しも済んだし帰ろっか。』
『えぇ。』
と、屋敷へ向かって歩いていた時――。
ドンッ!
『痛…っ!』
勢いよくぶつかられてしまう。
『あぁ?どこ見て歩いてるんだ。悪魔執事とその主が。』
『主様!お怪我は…!』
『へぇ。俺より先に主の心配か。俺は貴族だぞ?』
『先にぶつかってきたのはそっちですよ。』
『あぁ?俺に楯突くのか?俺はグロバナー家の傘下のトゥルージュ家の長男だぞ。お父様に言えばお前なんて…。』
『グロバナー家を利用するのがあなたのやり方なんですね。なんて汚い…。』
『っ、お前――!』
『っ、ユーハン!!私なら大丈夫…。大丈夫だから…。』
『ですが…!』
『申し訳ございませんでした。私の不注意で…。』
『それでいい。次はないぞ。悪魔執事。』
『……。』
『……。』
私とユーハンは黙って屋敷に帰る。
自室にて。
『あの、ユーハン…。』
『はい。主様。』
『ユーハンが私のためにしてくれてるのは嬉しいけど…少し、やりすぎじゃないかな。』
『……。』
『っ…。』
ユーハンは黙って私を見つめたまま。
『っ、ユーハンの気持ちは嬉しいけど、立場上やり過ぎたらダメって言いたいんだ。私は。相手は貴族だし…後からどんな仕打ちが――。 』
『…かしこまりました。主様がそう言うなら…。』
『ありがとう、ユーハン。』
彼は納得してくれた。と、思っていた――。
まさか、あんなことが起こるなんて――。
シノノメ・ユーハン…彼はデビルズパレス別邸1階の執事だ。彼は忠誠を誓った相手には献身的にお仕えする。そう。主である私に。だが
それは異常な忠誠心だった。私に危害を加える者に対しての異常な執着…。消して許さないという強い信念…。それに対して私は少し恐怖を覚えるのだった。
次回
第2輪 育つノは赤イ執着