『貴方ノ為ならどんな罪モ犯ス』〜桃の花は赤く散る〜
第2輪 育つノは赤イ執着
その日の夜。寝静まった屋敷は静かだ。
『すぅ。すぅ…。』
ガチャ。
私は静かに部屋のドアを開ける。
『ふふ、よく眠っていますね。可愛らしい寝顔です。』
(私は貴方の為ならなんでもしますよ。でも貴方はどんな人にも優しい。今日の貴族にも。
貴方に非はないのに。)
サラッ……。
私は主様の髪に触れる。
『貴方に触れるものは私が全て消してあげます。貴方に触れていいのは私だけです。』
ギシッ。
主様に覆いかぶさり、耳を甘噛みする。
カプッ。
『んっ。』
ぴくんっと主様の身体が反応する。
『寝ていても可愛らしい声を出すんですね…。』
チュッ……と、舌で弄ぶ。
『ん、ダメ…ッ。』
『はぁ、はぁ…っ。』
(可愛らしい反応ですね……。もっと、私だけにその顔を見せて下さい。)
『愛しています。主様。早く私に――私の気持ちに気付いてください。そして――私に堕ちてきて下さい。』
翌朝――。
『よく寝た…。』
『おはようございます。主様。』
『ん、おはよう。』
『今週から天気は不安定で雨が降って台風も近付いて来るようです。ですので、外には出歩かないことをおすすめします。』
『そうだね…。別邸大丈夫?』
『はい。今週は本邸で過ごすしかないですね。』
『そっか、不便だね…。』
『いえいえ。主様が気にすることではありませんよ。むしろ私としては嬉しいです。ずっと主様と本邸で居られるので。』
『そ、そっか。それなら良かった。』
嬉しそうに私を見つめるユーハンの目が怖く感じた。
『お、お腹すいたね。そろそろ食堂に行こうか。』
『えぇ。』
私とユーハンは食堂へ向かう。
『……。』
(なんて好都合なんでしょう。今週はずっと雨。)
『ふふっ。』
(雨は全てを洗い流してくれるんですよ。
私の一番好きな天気です。)
『…ご安心を。主様。危険分子は私が取り除いてあげますから。貴方は必ず…私の手で守ります。どんなものからも。』
私はボソッとそう呟いた。
『ふぅ。ご馳走様でした。』
(ユーハン、なんだか様子が変だったような気がしたけど…気のせいかな。)
『主様!今日のデザートはホットチョコレートです!雨で気分も落ち込んでると思って!』
『美味しそう…!ありがとうちょうど暖かいものが欲しかったの。』
『沢山あるんで好きなだけ食べてくださいね!』
『うん!』
(あれ、そういえばユーハン居ないな。
食堂まで送ってくれたけど…。その後どこに行ったんだろ。)
『ねぇロノ、ユーハンは?』
『ユーハンですか?さぁ…?執事の食堂でご飯でも食べてるんじゃないですかね?』
『そっか…。』
この時私はモヤモヤしていた。
そう、既にこの時ユーハンは屋敷には居なかったからだ。
一方その頃――。
『あの方はグロバナー家の傘下であるトゥルージュ家の長男でしたね。サクリア・トュルージュ…。妻の名前はサラマリ・トゥルージュ。
娘が1人と息子が1人。名前はリンとアン。
中央の大地に住んでいるんですね。ここからそんな遠くないですね。』
(貴方に報いを受けさせます。私の純真無垢な主様を穢れさせた貴方に相応の報いをね。その他にも主様を穢した人は沢山いる。悪魔執事の主だからと言う理由で。赦しませんよ。必ず…その身をもって思い知らせます。)
コツコツ……。
中央の大地にとって恐怖の1週間が始まる。
惨劇の幕開けまで、残り6日――。
次回
第3輪 誰ノ為ノ報復カ?
コメント
2件
ユーハン怒らすと怖いよね😱美人の怒りは特に('ω' 💢)
わー…!ゾクッとする…ちょっと怖いよこの人!でも何か憎めない…次回も楽しみに待ってます!