私は最近、弓道やってて辛くなっちゃった。だって、芽依は居ない。架那はレギュラーメンバーに抜擢。私だけ何も出来ていなかった。元々、芽依の後に架那は上手だった。私だって、上手いと思ってた。でも、顧問は架那を補欠に選んだ。少ない二年生とは違って、わざわざ一年生の深津架那を選んだ。それが悔しくて、でも何処か寂しくて切なくてやりきれない感情に支配された。だからと言って恨んだり妬んだりはしなかった。ただただ、嫉妬心に狩られてた。芽依の居場所を守ることが目的の筈なのに心が体がそれを拒否していた。
「私ならやれる」
そんな戯言を吐いては、心ばかりが暴れて正気ではなかった。学校に行くのもしんどい。架那に会う度に吐き気ばかりに襲われて体調不良になる。母に相談しても弓道から離れなさい。そう言われた。弓道以外に生き甲斐なんてない。そんなことは両親も理解している。
「ちーちゃん、パパの出張について行く?」
急な母からの連絡に心が震えた。場所は東京だった。私にとっては好都合。あはは、港先輩に会いに行けるじゃん。そう考えた。本当に苦しくて助けて欲しくて、心の休養が欲しくて堪らなかった。私の心を癒してくれるのは港志織先輩だけ。連絡もとって、アポもとった。会った時の港先輩は全然暗くない。むしろ以前と比べて格段にテンションが高い。通信制の高校に入ったことが利点となっている様子だった。より一層、弓道に励んでいる様子だった。会った時には安心を感じられた。港先輩は新しい友達、恋珀さんって人に教えてもらう名目でかの有名な松枝スタジアムに弓道をして行ったの。正気、三人が使うのには勿体ないくらい広くて綺麗な場所なんだけどなんて言ったって、空気が気持ちいい。引いていて、全く苦ではなかった。そのうえ、楽しささえ感じる。港先輩は小さなことに幸せを感じるタイプだから私が楽しいと言うと。真っ先に喜んでくれた。楽しいっていう感覚を取り戻して欲しかったらしい。私にとってとても充実していたし、素敵な一日だったよ。そこからは架那と戦友のように仲が深まったよ。それがここ最近の私の姿かな。
芽依は泣きながら、千鶴の話を聴く。芽依にとってそれは感情が動かされるほどの事だったのだろう。
「千鶴……そんなことあったんだ……」
「うん、まぁ今はめちゃくちゃ元気だけど」
「芽依こそ、不安になってない?」
「うん!千鶴と全国大会に行った時の写真見ながら頑張ってたよ!全く寂しくなかったんだもん」
芽依はレギュラーメンバー、千鶴は補欠という風に全国大会に行ったあの日を思い出す。千鶴が楽しいという感情を取り戻してくれたことに喜びを感じている。気がつくと、部活が終わる頃の時間になっていた。
「千鶴、大丈夫?架那と一緒に帰るんでしょ?」
「…!?本当だ!!芽依、ありがと~!!」
「うん!千鶴、また来てね」
「もちろん!じゃ、またね芽依!」
「うんっ!」
芽依は千鶴が病室から出るまでずっとふりふりと手を動かしている。急いで架那の元に向かわなければならない。
続く。.:*・゜
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