私
にとってあなたは、とても危険な人です。
あなたの存在は私の平穏を脅かす。
だから私はあなたを排除しなければなりません。
しかし、私にはあなたを排除することができない。
なぜなら、あなたの存在はとても有益なものだと思っているからです。
あなたの排除は、私の望むところではないのです。
あなたの存在が私にとって有用であることに変わりはない。
あなたに居て欲しくないと思う気持ちと同じくらい、あなたを必要としています。
あなたは私の敵であると同時に、私の友人でもあるのです。
矛盾していると思われるでしょうが、これが本音なのです。
あなたを失うことが怖い。
そうならないために、僕は僕を強くしなければならない! 誰かに支配されるのはごめんだ!! だから俺は俺の意思を貫く! 誰にも従わない!! 俺には絶対服従してもらうぞ!!! これが……俺のやり方だッ!! 俺の命令に従わない奴は許さない! 逆らう者は皆殺しだァーッ!! 死ねェエエエーッ!!! 俺こそが王だァアアーッ!!! もう誰も信じられんわ!! 俺についてこれないなら切り捨てるだけだ!! この世はすべて俺のものなのだからなァ!!……そうだろ?……えぇ~? なんか違うよぉおおお!? お前は誰だよ!? なんで勝手に入って来てんだよ!? おいコラ出てけ!! 俺の許可なく入ってくるんじゃねぇーッ!!! くそっ!! こんなところで死んでたまるかぁあああーッ!! 俺は絶対に生き抜いてみせるぞォオオーッ!!!……ハッ!? 夢か……? ここはどこだ……? 暗い闇のなかをさまよいながら、 必死に逃げ続けていた気がする。
だが……今はどうなっているのだ? 何も見えない……音もない……。
体を動かしている感覚すらも曖昧だ。
意識だけがぼんやりと浮いている感じだ。体は眠っているようだけど、夢を見ているというわけではないらしい。
自分の体を見下ろすこともできないけど、なんとなく分かるのだ。それにしてもここはどこだろう? 真っ暗で何も見えない。目を閉じていても開けていても同じ闇が続くだけ……ああそうか、僕は死んだのか。
じゃあここは死後の世界なのかな?
『おめでとうございます』
はて、誰の声だろうか? 若い女性のように聞こえるけど。
『貴方様は見事【勇者】に選ばれました!』
えーっと……うん、やっぱり僕死んじゃったみたいだね。
しかし勇者に選ばれるなんて、よっぽど悪行を積んだに違いない。……俺には関係ないけどね!
「……おい!」
「え?」
振り返るとそこには、いかつい顔つきの男がいた。
身長190cmはあるだろうか? かなり大きい。
「お前、見ない顔だが新人か?」
「あぁはい、今日から冒険者になりました」
男はジロリとこちらを見る。
俺は思わず目をそらしてしまった。
「名前は?」
「ラタトスクです」
「そうか、覚えておこう」
それだけ言うと男は去って行った。
なんだったんだろうか?
「まあいっか」
それより今はクエストだ。
ギルドに行って依頼を受けよう。
◆ ギルドで依頼を探す。
さすが王都だけあって、たくさんの依頼がある。
どれにしようか迷ってしまうな。
とりあえず掲示板を見渡していると、ふとあるものが目に入った。
それは一枚の依頼書だ。
内容は討伐任務となっている。
報酬額は5万Gと書かれている。
「これは……」
内容を読む限り、どうやらオーク退治らしい。
場所はここから近い森だ。
よし、これに決めたぞ。
受付に行き受注する。
これで準備完了だ。
早速出発しよう。
「すみません、ちょっといいですか?」
後ろから声を掛けられる。
振り向くとそこには女性が立っていた。
年齢は20代前半くらいに見える。
髪の色は黒で、腰まで届くほど長い。
瞳の色も同じ色でとても綺麗だ。
肌は白くきめ細やかで美しい。
服装は白いローブに身を包んでいる。
どこかのお嬢様のようにも見える。
「あなた、もしかして新米さんかしら?」
「えぇ、先程登録しました」
「やっぱりそうなのね。実は私も今日から冒険者に仲間入りしたの。だから一緒に行ってもいいかしら?」
「あー……悪いけど俺はソロの方が気楽だし、パーティーとか組むつもりはないんだよ。じゃあな!」
「あっ! ちょっと待ってよ!!」
こうして俺の冒険者人生が始まった。
◆◆◆
時は流れて二年後―――
「おいこら! お前のせいで死にかけたぞ!! どうしてくれんの!?」
「えっと……ごめんなさい?」
「疑問形で言うんじゃねえよ! ああもうっ、これだから初心者を連れていくのは嫌だったんだ!」
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