テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ラウだて
ポテチ
265
2,485
zetsu.
651
#政略結婚
クリオネ?
1,316
あの日、池で目黒に不意打ちのキスをされてから、二週間が経った。
【目黒 蓮の好感度:6%】
❤️「(……はぁ)」
宮舘は、小さく息を吐いた。
あのときの甘い空気が嘘だったかのように、それから目黒の好感度は【1%】たりとも上がっていない。
❤️「(……難しいなぁ……)」
恋人のフリをしている以上、少しくらいは距離が縮まると思っていたが、現実はそう簡単ではないらしい。
今日も二人で廊下を歩いているだけで、周囲からは黄色い声が飛んでくる。
「「「「目黒く〜ん!!!」」」」
「「「「いやあぁぁあああ!!!」」」」
廊下いっぱいに響き渡る悲鳴に最初の頃、宮舘は肩を跳ねさせていた。
しかし、慣れとは恐ろしいもので。
🖤「舘さん?早く行こう」
❤️「うん、今行く」
周囲から注目されることに三日も経てば、すっかり慣れてしまった。
***
恋人のフリを始めて一週間ほど経った頃から、二人は昼休みも一緒に過ごすようになった。
いつものように向かい合って席につき、昼食を広げる。
🖤「いただきます」
❤️「……いただきます」
宮舘は自分の弁当箱を開いた。
その向かいでは、目黒が購買で買ってきたパンを二つ並べていた。
宮舘は、何気ないふりをして目黒の手元を見る。
❤️「(……また、パンだけ)」
気になり始めたのは、少し前からだった。
目黒は昼になると決まって購買でパンを二つ買って黙々と食べるのだ。
❤️「(現実の目黒は、ちゃんと自炊をする人なのにな……)」
同じ名前で同じ顔をしていても、この目黒は宮舘が知っている現実の彼と少し違う。
ゲームの世界なのだから当然なのかもしれないと思っても、やっぱり気になってしまう。
❤️「(……どうしよう)」
宮舘は、自分の膝元へ視線を落とした。
今日のために用意してきた小さな巾着袋が置かれている。
中に入っているのは、丁寧に握った大葉入りのツナマヨのおにぎりが二つ。
以前、メンバーにおにぎりを作る企画で作ったものと同じだ。
❤️「(……やっぱり、気になるし)」
少しでも腹の足しになればいい、と思って用意したが、いざ渡すとなると妙に緊張する。
❤️「(……いいよね)」
小さく息を整えてから、宮舘は巾着袋を手に取った。
❤️「目黒」
🖤「ん?」
❤️「よかったら、これ食べて」
出来るだけ自然に言ったつもりが、声に少しだけ照れが滲んでしまった。
差し出された巾着袋を、目黒が不思議そうに見つめる。
🖤「……何?」
目黒は受け取った巾着袋の口を開け、中を覗き込んだ。
🖤「……はぁ」
あからさまに、深く重いため息をついた。
🖤「……俺、他人の握ったモノ食えないんだけど」
❤️「……え」
たった一言。
それだけなのに宮舘の心は、思っていた以上に簡単に傷付いてしまった。
❤️「(あの企画のときは……美味しそうに食べてくれたのに……)」
ここはゲームになぞらえた夢の世界で、現実の目黒とは違う。
分かっているはずなのに、現実との違いを突き付けられる度、胸が痛んだ。
しかも今回は、自分が作ったものを拒絶されてしまったのだ。
❤️「…………っ」
必死に堪えようとしたが、ポロッと一粒の涙が頬を伝った。
それを合図にしたように、次から次へと涙が溢れてくる。
🖤「……え」
目黒の表情が固まった。
まさか泣くとは思っていなかったようで気まずそうに視線を泳がせる。
🖤「……あー、クソ」
やがて、頭を掻くようにして小さく呟いた。
🖤「……分かった。食うから」
❤️「……え?」
🖤「せっかく作ってくれたんだろ」
目黒は観念したように巾着袋からおにぎりを一つ取り出した。
しばらく眺めてから、恐る恐る口へ運ぶ。
パクッ
🖤「……んっ」
目黒の目が、大きく見開かれた。
🖤「……うまっ……!」
❤️「……!」
目黒の口内に大葉の爽やかな香りと、ツナマヨのまろやかなコクが広がる。
シンプルでありながら、宮舘が心を込めて握ったおにぎりを目黒は一口、また一口と食べ進める。
先ほどまでの警戒心が嘘のように消え、一つ目はなくなっていた。
続けて二つ目にも手を伸ばし、パクパクと無言で食べ続けてた。
目黒は気付けば、あっという間に、二つとも綺麗に平らげてしまった。
❤️「……」
宮舘は、その様子を呆然と眺めていた。
そして、空になった巾着袋を見つめる目黒の耳が少し赤く染まっていることに気付く。
🖤「……さっきは、悪かった」
❤️「……目黒」
🖤「言い方、きつかった」
目黒は気まずそうに視線を逸らした。
🖤「……また、作ってくれる?」
その一言で、胸の奥に残っていた痛みが、嘘みたいに消えていく。
❤️「うん……!」
涙の跡が残った頬に、満面の笑顔が浮かぶ。
❤️「もちろん!今度は、おかずもちゃんと用意するね」
🖤「……ん」
目黒は短く返事をして、もう一度、空になった巾着袋へ視線を落とした。
その横顔は、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。
――その瞬間。
【目黒蓮が『苦手なこと(他人の手料理)』を克服しました】
【好感度が4%上昇しました】
【現在の好感度は10%となりました】
❤️「(……やった……!)」
頭の中に響いたシステム音声に、宮舘は思わず目を見開く。
たった4%と数字だけを見れば、まだまだ小さな変化だ。
それでも、今まで何をしても動かなかった好感度が確かに動いたのだ。
目黒が、ほんの少しだけ自分に心を開いてくれた。
その事実に宮舘の胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
❤️「(……大丈夫)」
まだ始まったばかりだ。
すぐに仲良くなれなくても、こうして少しずつ、目黒のことを知っていけばいい。
そしていつか、偽物の恋人ではなく本当に隣にいてほしいと思ってもらえればいい。
宮舘の小さな笑みを見た目黒もまた、気付かないほど僅かに口元を緩めていた。
コメント
5件
良きかな👍✨
はぁっ尊い✨続きが待ち遠しいですっ💕🫶
読了〜🥀 5話、めっちゃ良かった……。おにぎり拒否からの「うまっ」は正直胸キュンしたし、涙ぽろっとこぼす舘さんにこっちまで切なくなったよ。たった4%でも確かに動いた好感度、じわじわ来るね。現実の目黒とゲームの目黒の違いに戸惑う舘さんの心情が繊細で、すごく好きなエピソードでした🤍