「三枝から聞いたらしい」
明那…?
明那が俺の噂を?
いやそんなわけはない。絶対にない
だってこれまで支えてくれたのは
俺のことを理解してくれたのは、
明那だけだったんだから
それでも俺の心の中に多少の疑惑が残る
最低だ。明那を疑うなんて
こんなにもモヤモヤが残るのならいっそ聞いた方が楽だろう
俺は明那の元へと走った
明那の元へと向かう途中
どこからともなく噂が聞こえる
俺が歩く度聞こえるような気がする
きっと自意識過剰になっているのだろう
あー結構辛いな
『 あ、ふわっち、』
明那はなんだか浮かない顔をしていた
[明那!一緒に帰ろ]
俺は明那と合流し、帰り道を二人で歩いた
帰り道
『 …』
[…]
なんだろう。なぜだか今日は無言の時間が多い
いつもなら元気よく明那が話しかけてくれるのに
なぜだか今日は元気がない
…俺のことが関係してたりとか?
なんて心の中でまた疑惑を詰まらせてしまう
明那を疑うなんておかしいのに
聞くなら、今しかないよな
[ね、ねぇあのさ、明那]
『 え、あ、どしたの?ふわっち』
いざ聞くとなると緊張して声が震える
もしも、もしも本当に明那だったら?
いや、絶対ない。大丈夫
俺はただ否定の言葉を聞きたいだけ
“俺が噂を?バラすわけないじゃん!“とか
“大丈夫。俺じゃないよ”って言葉が欲しいだけ
きっと大丈夫
[あ、あの、俺の恐怖症のことってさ、
誰かに話したりとか…した?]
あぁ緊張して顔が見れない
早く否定してくれ!
しかし数秒経っても明那からの返事が返ってこない
?あれ?明那…?
俺は恐る恐る明那の顔を見た
え
何その顔
明那は言葉では表現することができないような
引きつった顔をしていた。
え、嘘でしょ?
嘘だよね
『 …』
[ねぇ…なんか、いってよ]
『 …、』
[違う…よね?]
『 ごめん。』
は
そのごめんは、
なんのごめんなの…?
『 …』
[ねぇ!明那!]
俺は咄嗟に明那の肩を掴む
それでも明那はただ下を向くばかり
ねぇ、ねぇ
目合わせてよ…
違うよこんなの、なんで。
なんで謝るの?違うでしょ?明那じゃないでしょ?
だって、だって、明那は俺のヒーローで
だって、だって、ずっと俺のことを支えてくれてて…優しくて、そばにいてくれて
全部嘘だったの?
[なんっ、で…]
『 でも、!ふわっち!これは』
明那は何かを訴えるように俺の腕を掴む
パシン
俺は咄嗟に明那の手を振り払ってしまった
明那だった。その事実が何よりも辛い
噂を立てられるよりも、みんなに異常だと言われ
るよりも
好きな人に裏切られたことが辛い。
[理解者だって…、思ってたのに…、]
声が震える。感情が抑えられない
唯一の理解者だって、俺は明那さえいればって思っていたのに。
明那はそうじゃなかったんだね
勝手に理解してもらえてるなんて思って、
馬鹿みたい。
『 ふわっち、』
[ごめん。一人にして]
俺は明那を置いて一人で家へと向かった
コメント
2件
こういう演出、?好きです
お互いがすれ違ってる感じが本当に好きです!!