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30 ◇戻れない道もある
「人は変わるっていうその人って、誰のことなんだ。
君のこと?」
「私を裏切ったあなたになんて私の大事な人のことを言いたくない。
ただ言えることは良くも悪くも人の変化で幸不幸が決まっていくん
だって、何か達観した気分なの今の私はね。
私はあなたとの間にできた悲しみをさっぱり捨てて
マリリンと人生を歩むことにしたわ」
「考え直してくれないか」
「駄目、私の考えは変わらない。裁判してでもあなたとはお別れする」
◇ ◇ ◇ ◇
そうだよなぁ、 姫苺が誰とも付き合ってなくて独りぼっちならいざ知らず
結婚まで決めた、しかも小さい頃からよく知ってる人間となると、もう
俺の存在なんてうっとおしいだけなんだろうなぁ。
もう完全に詰んだと思うのに、俺はどうしても 姫苺を失いたくなかった。
「 姫苺 …… 姫苺の嫌がることをいっぱいして悲しませたこと
今更だけど謝らせて。ごめん、ほんとにごめん。
俺が馬鹿だった。
とにかく俺は君が戻ってきてくれるのを家で待ってるから」
◇ ◇ ◇ ◇
夫はそう告げて家に帰って行った。
―――――――――――――――
私は帰り道、マリリンの家に寄ってくことにした。
たぶんマリリンの顔を見て癒されたかったのかもしれない。
「フンフンフン~Good By by by~♪ Good By by by~♪ ~」
食器を洗いながら鼻歌交じりに……
同じ歌詞を繰り返す私に側で聞いていたマリリンが突っ込みを
入れてきた。
「それさぁ、誰に向けて言ってんのかなぁー?」
「ヤダ、分ってるのに聞く?
マリリンいつからそんな意地悪な人になっちゃったの?
ってかほんとマリリンって毎度同じ反応するよねぇ~」
「ははっ、楽しそうだからさっ、つい……ね」
「そうだよね、離婚するのにこんなにすっきりしてはっちゃけ気味な
人ってあんまりいないわよね。マリリンっ、ありがとっ」
「えっ? なになに?」
「離婚するっていうのにこんなに元気でいられるのはマリリンの
お陰だもんっ」
「礼なら俺のほうだよ。俺なんかと結婚決めてくれてありがとなっ」
いやいや、そんなに自分sageするなんてマリリンらしくないよ?
謙虚な人間は好きだけどさっ。
私もマリリンにプロポーズしてもらったことを感謝して忘れずに……
これから仲良く暮らしていくように頑張るからっ、マリリンよろしくね
って口にはしなかったけれど、心の中で誓った。
マリリンは容貌にも恵まれ家庭にも知人にも恵まれて育った人間だけど、
それでも普通じゃないっていう負い目はどこかにあって気苦労もあったこと
だろう。
そんな彼は謙虚さと正直を兼ね備えた人間だと私は思っている。
付き合いの浅い人たちから見れば容貌に恵まれ、お気楽に過ごしている
ただのイケメンとしか捉えられてないかもしれないが……。
◇ ◇ ◇ ◇
今も蘇る小さかったマリリンんの告白
「僕ね、姫苺ちゃん……男の子のことが好きなんだ」
ふんがフンガ鼻息荒く、それでいて、こそっと感たっぷりに
告白してきたマリリンのセリフが。
まさかね、当のマリリンも告白した私と結婚することになろうとは
思ってなかったろうね。
小さな頃からいつも一緒に居た子は、これからもずーーーっと
一緒にいてくれるらしい。
“ 悔恨 Regret “
どうして、妻が俺の行動に強く抵抗せず、甘んじるだなんて思えたんだろう。
俺は傲慢だった自分に、
今になってみて……
妻から本気の離婚を迫られてみて……
気がついた。
俺に従順でやさしくて忍耐強く、そして何より俺のことが
大好きでいる妻が、本気でびくともしない強い意志で俺のことを
拒絶する日が来るなんてことは夢にも思ってなかった。
どうしてこんなに鈍感でいられたのだろう。
異動でこちらに転勤してきたあの日に帰れるものならば――――
あぁ、帰りたい。
姫苺 と会って直接離婚したいと言われ、独りきりで自宅に
戻った日からそう思わない日はない。
どんなにあがこうと、もうあの日には帰れないものを……。
学生時代から女に不自由したことはないが、結婚相手となると
そういう問題でもないってことを結婚経験のある俺は知っている。
結婚相手というものは、一生に一度出会えるかどうかくらいの
相手がいいのだ。
だって 姫苺 は俺にとってそういう存在だったから。
それなのに、夫という立場に
愛されているという立場に
胡坐をかき、パートナーの気持ちをおざなりにし、自分の気持ちを
優先させてしまった。
そして――――俺たち夫婦の関係を壊してしまった。
割れた茶碗を一生懸命接着剤でくっつけようとしているのが
今の俺だ。割ったのは俺。
割らないように割れないようにと願っていたのが 姫苺 だ。
一度のキスくらいで、粉々になるなんて考えもしなかったな。
俺にくびったけな姫苺ならこれくらいのこと許すだろうって
高を括っていた部分がなかっとはいえない。
あまりに姫苺のことをみくびっていた。
健全で思いやり深く従順な人間を、甘くみるんじゃないぞって
俺は学んだ。
若いからといって甘い顔をして油断していたら、寝首を
かかれると学んだ。
家で待ってると告げて帰ってきたけれど、二度とこの家に妻が
戻る日が来ないであろうことは夫の俺が一番よく分かっていた。
―――――― Fin. ――――――
皆さま、最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。*ᴗ ᴗ)⁾⁾☆彡設樂理沙
私の一推しページは1ページめなんです。(๑’ᴗ’๑)
小さな頃の 姫苺 ちゃんとマリリンが微笑ましくて。
このシーンが降りてきて、このお話ははじまりました。
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