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#uni
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龍也が乾いた土を強く蹴ったその瞬間だった……
「ガラッ」と
まるで世界の底にある「別世界へと扉」が外れたような音が響いた。
蹴り上げられた土や砂が重力を無視して空へと吸い上げられていく
「……え?」
龍也の足元から急速に「色」が消えていった
空き地の雑草も遠くに見える街灯も夕焼け空さえも。
すべてが煤(すす)のような灰色の粒子となって崩れ去り代わりに現れたのは底の見えない漆黒の「奈落」なのだ
「おい、龍也! 逃げ――」
叫ぼうとした俺の言葉は、凄まじい風圧にかき消された
逃げる場所なんてもうどこにもない
俺たちが立っていた世界そのものが巨大なシュレッダーにかけられたみたいに足元からバラバラに砕け散っていく
「海斗っ!!」
龍也が手を伸ばす だが、その指先が触れ合う前に俺たちの体は重力から解放された。
「がぁああああああああああ!」
視界がぐるぐると回転する……気持ちが悪い……
ビルや学校の校舎慣れ親しんだ街の景色がまるで割れた鏡の破片のように俺たちの周りを通り過ぎていく
その時だった。
鞄の中から鼓膜を震わせるほどの音が響いた
『――目覚めよ、戦士よ、運命の刻きは来た』
ライオンのフィギュアが黄金の光を放ちながら吠えた
けど2人の意識はとうに無くなっていた
森の中で
「……いってぇ……めっちゃ腰打ったんだけど……」
どれくらいの時間闇の中を彷徨っていたのだろうか、 意識を引きずり戻したのは背中に伝わるゴツゴツとした岩の感触とどこからか聞こえる鳥の羽ばたきのような音だった
「おい海斗……生きてるか?」
すぐ横で龍也の声がした
俺は重いまぶたをこじ開けゆっくりと上体を起こす
「俺が……死ぬわけねぇだろ?」
そして視界に飛び込んできたのは見慣れた空き地の雑草ではなく見たこともない生き物や見たこともない植物だった
「……なんだよ、ここ。アマゾンか……?」
龍也が起き上がって海斗にそう伝える
「だとしてもどうしてアマゾンに……」
龍也の指さす先を見上げ俺は言葉を失った
枝葉の隙間から見える空には太陽があった……だけどそれはどこか普通じゃない……2つある太陽だった
「ははっマジかよ……俺たち本当に帰って来れなくなったのか……」
呆然と立ち尽くす龍也の足元でガサガサと鞄が動いた
中から転がり出てきたのはあのライオンのフィギュアだ
「あ……このライオン……」
するとその瞬間だった。
『よっ、ようやく起きたか……この寝坊助共!』
ライオンには思えない高い声で最初は幻聴かと思った……けれど……
「うわあああ! やっぱり喋ったぁぁぁ!!」
「……海斗、うるさい耳元で叫ぶな」
いて飛び退く俺の目の前でライオンのフィギュアが器用に四足歩行で立ち上がり あくびをするように口を大きく開けた。
『喋るに決まってんだろ!俺様は誇り高き百獣の王ライオン様だ!感謝しろよ?お前らがバラバラに砕け散らないように守ってやったのは俺様なんだからな!』
「人形が、偉そうに威張ってやがる……」
龍也は今にも踏み潰してやろうと言う気満々で近づいていく
『人形じゃねぇ!ライオン様と呼べ!』
目の前で繰り広げられる小さなライオンと龍也の言い合い。
海斗はそれを冷めた目で眺めていたが
「じゃあライちゃんでいっか 」
海斗は2人の間を割って入りそう呼んだ、 ライオンの脳内は真っ白になった、それは龍也も同じ
「ぷはははははははは!!」
龍也は寝っ転がり笑いこけた
「ライちゃんだってよライちゃん!いいじゃんお似合いだぞぉ!」
ライちゃんはブチ切れ龍也に体当たりをかます
そして平和な時間も終わりは来る……
地響きと共に森の奥から現れたのはかつての騎士の面影を残しながらも全身が錆びついた鎧でできている怪物だった
「なんだよ……あの化け物…鎧を着てるのか……?」
龍也が息を呑むその怪物の胸元にはかつて魔王を封印した勇者の紋章が無惨に引き裂かれた状態で刻まれていた
『気をつけろ! ありゃあ**【ジャンク】**だ!』
斗の肩の上でライちゃんが鋭い牙を剥いて威嚇する
『大昔に魔王と勇者が共倒れになった場所へ空から不気味な隕石が落ちてきやがった……その中にいた「ジャンクの魂」が眠っていた魔王の怨念(おんねん)と勇者の抜け殻を無理やり融合させちまったのさ。……今じゃ世界を食い荒らすただの動くガラクタだ!』
「勇者の成れの果てだってのかよ……最悪だな」
「まるでホビー屋にあるジャンク人形だな……」
海斗が顔を歪めた瞬間怪人がギチギチと金属の擦れる音を立てて咆哮したその手には折れた聖剣に黒い隕石の破片がこびりついた、不気味な大剣が握られている
「……龍也、これ……マジでやべぇ!?学校の先生に怒られるのとはレベルが違うぞ!」
「当たり前だ! 死ぬぞ海斗死ぬ気で逃げるぞ!」
二人は無我夢中で森を駆け出した。背後ではジャンクが追いかけ回して来る
海斗はライちゃんに問いかけた
「はぁっ…はぁっ……おいライちゃん! あんなのどうやって勝つんだよ! 俺らただの高校生だぞ!」
『ガタガタ抜かすな!伝説に「鋼鉄の戦士」って記されてたのは、お前らのことだ!この先にこの世界で1番大きい大国がある!そこまで走れぇぇぇぇ』
「適当かよぉぉぉぉぉぉぉお!?」
「あんまりだぁぁぁぁぁぁあ!?」
2人は後ろを振り返る事をせずひたすら前へ前へと走り抜けジャンクから逃げ切るのだ
「……なぁ、ライちゃん。案内してくれるのは助かるけど……これあとどれくらい歩くんだ?」
「うるせぇ海斗! 泣き言抜かすな! 伝説の勇者が筋肉痛とかライオン様のメンツ丸潰れだろ!」
異世界の森を抜けて数時間。
海斗の肩の上で偉そうに指示を出すライちゃんと制服のシャツをはだけさせて歩く海斗そして後ろを警戒しながら歩く龍也
そんな奇妙な一行の目の前で、急に視界が開けた
「……うわっ、すげぇ……」
二人の足が止まった……
崖の上から見下ろした先には見たこともないほど巨大な城壁と天を突き刺すような 黄金の塔が立ち並ぶ巨大国家――**大国「アステリオス」**が広がっていた
「マジかよファンタジー映画のCGより凄くないかこれ!龍也あれ見ろよ!空飛んでるの鳥じゃないぞ! ドラゴンだ!小 っちゃいドラゴンが郵便配達してんぞ!」
「すっげぇな海斗!ちょっと写真撮っとこ!」
『へへん驚いたか! あれがこの世界で一番デカい国だあそこならお前らの怪しい制服も「遠い異国の服」で通じるはずだぜ!』
「よっしゃ〜そうと決まれば突撃だ! 腹減って死にそうなんだよ! 異世界のメシ、食いまくってやる!」
海斗がダッシュで崖を駆け下りようとするが案の定足をもつれさせて転がり落ちる
「痛ってぇ……! おい誰だここに石置いた奴!」
「……自分から転びに行っただろお前は……海斗、泥だらけだぞ?そんな格好で大国に入ったら勇者じゃなくて浮浪者として捕まるぞw」
「うるせー! 龍也!」
大国の巨大な門の下に辿り着いた二人。
見上げるような巨体の門番が、錆びた槍を交差させて行く手を阻む
「止まれ! 貴様ら、見ぬ装束だな……そこの肩に『喋る珍獣』を乗せた男何者だ!」
『……珍獣だとぉ!? 俺様は――ラi…』
「あ、あはは! こいつは腹話術です! 趣味です! 俺たちはただの通りすがりの学生、あ、いや、旅人です!」
必死にライちゃんの口を塞ぐ海斗と必死に言い訳をしている龍也、2人のコンビ技で何とか危機を脱した……そしてここから 伝説の「鋼鉄の戦士」への第一歩は門前払い寸前のドタバタ劇から始まった。