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無名.@投稿頻度低
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もちつき
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『お兄様、また吸ってるの?』
『…悪いか』
『別に? でも、ちっとも楽しくなさそうなんだもの。小言の一つや二つ、言いたくなるのも分かるでしょ?』
『楽しい喫煙なんて無いだろ…』
『楽しい…は確かに分からないけど、べつに煙草ってただつまらないものじゃないでしょ?
…あっ。ねぇ、お兄様。こんな話知ってる?』
『…なんだ?』
『煙草を相手に吹きかけると、お誘いになるんですって』
『…ふーん』
『…お兄様全然興味ないでしょ!』
『興味ない』
『もー!!』
『する相手もいないし』
『…じゃあ私にでもしてみたら?』
『ベラルーシは妹だろ』
『あら、ざーんねん』
ジリリリッ、ジリリリッ…
「…………夢……」
いつもの寝巻きに、いつもの布団。枕もアラームもいつもと同じ、いつも通りの朝。
「…………」
昨日は結局、あのまま早々に煙草を潰して帰った。中国に文句も言えずじまいだ。
ジリリリッ…ジリリリッ…
「…うんっ…るさいなぁ…ッ…」
叩きつけるようにしてアラームを止める。
重い体を起こすと、窓からの光が淡く頬を照らした。
1日の始まりだ。
「……最っ悪だ」
意気込んで起きたはいいものの、実はアラームを一度寝ぼけて止めていたらしく、30分の寝坊をかましていた。
さぁ急いで朝食を食べようと思えば、サワークリームを切らしていて味気ないものに。
上着を羽織ればボタンは取れていて、鉄道は遅れ、やっとのことで会議室に辿り着いたと思ったら、ペンを家に忘れていた。
言うまでもなく散々だ。どうかしている。
「なーに辛気臭い顔してるあるか?」
「……ほんと間が悪いなお前は…」
「何の話よろし。せっかく我が話しかけてやったのに」
「頼んだ記憶無いが」
「頼まれてないあるからねぇ」
これは施しある、と言ってのける中国は、今日もチャイナ服に身を包んでいた。
全身赤の服なんて着て、何故けばけばしく見えないのかと思っていたが、よく見てみるとなるほど、高い生地なのだろう。金の装飾も相まって上品になっている。
「…というか、ロシアにしちゃ随分可愛いペン使ってるあるね」
「忘れて来たんだよ。ベラルーシに借りた」
「咯咯!そりゃ災難だったあるな」
大口開けて笑う中国を睨みつけるが、まるで効いちゃいない。
大体、誰のせいでこんな散々な目にあっていると思っているのだ。
そもそも昨日のアレだって──
「…あ」
「どしたよろし?」
「中国、お前昨日の──」
「heyそこのコミーども!!さっさと座れー!!」
「アメリカさんだってさっきまで私に引っ付いてたのに何言ってるんですか」
「……よーし!!じゃあ始めの議題は!!」
「無視ですか? アメリカさん。
自分のことはスルーするんですか?」
「…………
…はあ゛ー……」
やはり、今日は厄日だ。ことごとく上手くいかない。今度はクソメリカのせいで話し損ねてしまった。
中国は空いていた隣の席に腰を落ち着けた。頬杖をついて動かず、机には何も広げていないが、まさか全部耳で覚える気なのだろうか。
にしても、一度話し損ねた話題というのは、内容が内容なのもあって出しにくい。
邪魔さえ入らなければ、あのまま聞けていたものを。
やはりあのグラサンかち割ってやろうか、と眉間に皺を寄せてペンを机に叩きつけていると、ちょいちょい、と腕を突かれた。
続けて指で手招きされる。
椅子をずらして少し近づいてやったら、耳元で小さく囁かれた。
「…続きはあの喫煙所で。」
それだけ言うと、中国はさっと戻り、足を組み直した。
アメリカに苛ついていた所為か、心拍数が上がった。
舌の上で甘い味を思い出したのは、きっと、サワークリームを切らしたあの甘ったるい朝食のせいだ。
きっと、きっとそうに違いない。
俺は、ペンの先をめちゃくちゃに走らせた。
「お、ちゃんと来たあるね〜」
「……来いって言ったのはそっちだろ」
「我は続きを話したいならこの喫煙所で、って言っただけあるよ?」
「その言い分はさすがに無理がある」
楽しそうに歯を見せて笑う中国は、相変わらずこの上なくマイペースだ。
俺は苛立って仕方ないというのに、中国はゆったりと佇んでいる。
「それで? 何を言いかけてたあるか?」
そう言いながら、中国が不意に煙草を取り出す。
瞬間、脳裏に記憶の断片がよぎり、体が強張る。俺は反射的に胸元のポケットにあるライターに手をかけた。
…だが俺が手にしたライターが使われることはなく、中国はそのまま自分のライターを取り出し、火をつけた。
考えてみれば、俺はまだ煙草を持ってすらいない。
そのことに気づき、肩の力が抜ける。
中国のライターは、竜の装飾が施されている、いかにも年代物といった品だ。それでいて、汚れ一つない。
大事にしているのだな、とぼんやりと考えた。
「…ロシア? 聞いてるよろし?」
はっと浮ついた意識が引き戻される。
「…聞いてる」
「なら返事くらいするある」
「忘れてた」
「…どうしたら返事を忘れるあるか…」
「さぁ?ウォッカでも飲んでみたらどうだ?」
「それはただの酔っ払いよろし」
不思議と会話が途切れない。
それが、気持ち悪いほどに心地よい。
「…で、どうあるか?」
中国が眉を寄せる。
いつも笑ってばかりの中国がそんな顔をするのは、なんだか新鮮だった。
「…あー…」
「…」
「…今日はライター持ってきたのか、確認したかっただけ」
違う。聞きたいのは、コレじゃない。
せっかくここまで来てやったというのに、何故だかあと一歩が踏み込めなかった。
「……
…なんだ、そんなことあるか?
ちゃんと持ってきたあるよ。ほら」
「…今見た」
「もしかして、それを言うためだけに来たあるか?
随分暇してるあるねぇ」
「………別に暇じゃ──…
…………」
でも、駄目だ。今を逃せば、もうしばらくは聞けないだろう。有耶無耶にしたまま、ずっと今の妙な気分が続くなんてごめんだ。
「……違う」
「ん?」
「………昨日のアレ、どういうことだ」
中国が煙を吐き、こちらを見据える。
その一瞬だけ、この部屋に静寂が戻ってきた。
コメント
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あ、これ第2話だ!読んだ読んだ🔥 ロシアの夢シーンから始まって、ベラルーシとのやり取りがめっちゃ可愛いんだけど、現実に戻ってからの中国との会話がもう…「続きはあの喫煙所で」って耳元で囁く中国、ずるすぎるだろ…!ロシアの心拍数上がるの分かるわ。あの煙草を吹きかける話の続き、気になりすぎて夜しか寝れないんだけど…!国家擬人化もの、地味に刺さるわこれ。