「さっきは乱暴にして悪かった。その代わり今から優しくいっぱい愛してやるから。律。蕩けるまでお前を愛してやるから、俺に任せろ」
下を脱げと命令された。逆らえなくて言う通りにしたけれど、恥ずかしいから全裸が見えないように、隅の方に置いてある掛布団を勝手に取って裸体を包んだ。
すると彼の爽やかなコロンの匂いが微かに漂った。彼に包まれているような錯覚に陥る 目の前の白斗に見つめられているのと、また違う恥ずかしさが身体を包んだ。
「足、開け」
布団を取り上げられ、白斗の前に裸体が晒された。恥ずかしい。
困っていると内腿に彼の長い指が滑っていく。
「んっ……」
「いい子だな。足開けられるだろ?」
「あ……は、くと……」
言われるがままにゆっくりと足を開いたら、強引にその間へ滑り込まれた。
彼の指が秘所に触れた。入口は泉のように愛液が溢れている。その指はなんの抵抗もなく中へ入っていく。侵入されたせいで違和感こそあったものの、全然痛くなかった。
光貴に触れられる時はいつも渇いているから、中になにかを挿入(いれ)られると痛かったのに、今は全然違っていた。新藤さんの長い指が体内に進むと、奥から蜜が大量に溢れ出してくる。ぐっと深くまで指を挿入られ、素早く動かされると派手な水音がたちまち起きた。
「あぁっ……」
自分の躰が、こんな風になっているなんて――
「めっちゃ濡れてる。可愛いな。俺に感じた?」
「あ…」
「素直になれよ」
「うん。すごく…気持ちい。もっと、白斗としたい」
感じたことのないこの感覚を、上げたことのない悲鳴を、この舞台で全部曝け出して歌いたい。
ふたりだけの夜に、あなたと歌う罪の歌を。
「じゃあ今から何回イケるか限界まで挑戦してみる?」
指が引き抜かれ、糸の引いた粘膜の絡みついた指を目の前で見せつけられた。「俺に感じてる証拠や。可愛いな、律」
白斗はその指を、なんの躊躇いもなく舐めてしまった!
恥ずかしくて布団を被って誤魔化した。でも白斗が見えなくなるのはイヤだと思って目だけを布団から出したら、白斗と目があって笑われた。
今は白斗じゃなくて、新藤さんの顔だ。白斗と博人(はくと)は同一人物に思えない。
「めっちゃ可愛い律の顔が見たいなぁ」
「恥ずかしいからだめっ」
白斗の関西弁はなんか変な感じ。関西弁といえば……なじみがあるのは光貴の方。そういえば光貴には、一度も『可愛い』と言われたことがない。なしくずしに付き合った感じがあるし、恋人らしく手を繋いだりいちゃいちゃしたりするのは、彼が恥ずかしがって一切通ってこなかった道だ。
私はもっと言葉で伝えて触れ合いたかったのに。彼はそれを拒絶した。
光貴は照れ屋の性格だから、仕方がないと諦めてきた。
でも、諦めずにちゃんと伝えていたら、どうなっていたのかな?
掛け違えたボタンが、私と光貴の距離を確実に離している。
白斗とセックスする妄想(ゆめ)を見てしまうほど、私の心はいろいろ限界だったんだ――と考えていたら、急に布団を剥ぎ取られた。バサっと音がしたのでそっちを見ると、すでに裸になり惜しげもなく美ボディを晒した新藤さんが近づいてきた。
「なにを考えてる?」
「あ、それは……」
「他のオトコのことなんかなにも考えられないくらい愛してやるから、今は俺だけ見とけよ」
私の考えを見透かしたように白斗が言った。新藤さんにも見えるし白斗にも見えるのは、やっぱり夢だからだろう。だったらめいっぱい甘えてもいいかな。夢だもんね。……いいよね?
私は白斗の背中に自分の手を回した。次はどんな歌を歌ってくれるのかな。