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「…はぁ?sepiaの兄はタヒんだのでは?」
sepia「わか、んないんです」
社長はとても圧の強い人だ
暴言は吐かずとも、社員を徹底的に支配する
sepia「…けれど確かに見たんです…」
「はっきり言うが…幻覚だ、miaに入ったのなら分かるんだろ?」
1分ほどの間を置いて、sepiaは弱々しく頷く
sepiaは社長室を出て、そのまま退勤する
sepia「…どうして、俺ばっかり…」
涙をこらえながら下を向き、ゆっくり、ゆっくりと歩く
上を向けば、惨めな自分を浮かぶ星が嗤う気がしてならないのだ
包帯で隠された遺体を、彼は呆然と眺めていた
sepiaはそれほど追い詰められていた
兄がどこかにいるという事実は、そんな彼にとって救い以外の何物でもない
だが、普通に考えてタヒ者の復活などありえないことだ
sepiaは、縋るしか無かった。
その”ありえない”可能性に。
sepia「…お父さん、どっか行くの?」
彼にも、支えてくれる家族が居た
父「あぁ、…しばらく帰れなくなる、すまん、████」
今や敵対組織に属する彼は、かつてAIの影響で職を失った人々を支援していた
あの内戦のような、争いを無くすため
それ以上の理由なんてなかった
?「父さん…絶対、帰ってきてね」
父「あぁ、絶対帰ってくる」
父「いい子で待っててくれ、母さんと弟を守ってくれ。」
真弘「うん…」
父は、そのまま帰ってこなくなった
兄は、sepiaにそのことをしばらく隠していたが、sepiaは父が居なくなって1ヶ月も経てば、察していた。
だが、そのことを話題にすることはなかった、兄が苦しむのは嫌だと子供ながら思って、出すことはなかった
父が居なくなって数ヶ月が経った頃、母は自分の暗い部分を話してくれたことがあった
母「…████、私はね、ダウンカット市のギャングに囚われてたの。」
母「…そこで、助けようって動いてくれたのが、お父さんで」
母は帰ってこなくなった父を想って、 明らかに疲弊していた
sepiaにとって果てしなく長い時間、母の身の上話を聞き続けていた
母には感謝している、だがsepiaは次第に”どうすればいいのか分からない”というぐちゃぐちゃの感情に支配されつつあった
████ (…母さんのこんな所、もう見たくない)
████ (ただでさえずっと戦争が続いてて俺だって限界なのに)
████ (…)
sepiaにも、葛藤があった
父が居なくなって2年、一家は日に日に貧しくなる現状に辟易としていた
母は起きている時間の方が少なくなり、兄とsepiaの二人暮らし状態だった
兄「████、もう備蓄が無くなってきたからちょっと減らしてくれる?」
sepia「あぁ、 わかった。…早く戦争、終わってくれるといいよな。」
兄「そうだね…大分この辺りも落ち着いてきたんだし、なんかすごいもどかしいよね」
兄は、戦争始まって3年、減るばかりの食料を見つめながらも、いつか戦争が終わってくれると信じ続けた
希望を抱いてなければ、兄は眠ることすら叶わない
内戦は、本当に酷いものだったことを覚えている
沢山の銃、兵器、すべて飛び交って街を崩壊させたことを覚えている
父が居なくなって2年と半年、母は衰弱しきって、そのまま眠るように命を落とした
かつて温かく包んでくれた母の手がゆっくり、ゆっくり冷たくなった感覚は、未だ鮮明に、sepiaの右手に残っている
sepia「…」
それは忘れるべきでない記憶のようだ、だが同時にsepiaを縛る蔦。
部屋に伝わる振動だけが、灰色の空気を讃えているようであった。
sepia「…ずっと覚えてる」
sepia「忘れたくても」
sepia「忘れられない記憶ばっかり」
独り言は星空にあげられた。
「…ね、聞かせてよ、その”忘れられない”記憶。」
sepiaは、突然後ろから声をかけられる
女の声だ
誰かが聞いたことあるような声
sepia「はぁ!?」
sepiaにとってひどく不気味に聞こえ、驚いて後ろを振り返る
夜に覆われて分かりにくいが、セミロングの髪をはためかせながら、警戒なんて知らないといった様子で、sepiaの1mほど後ろに立っていた。
sepia「…君…はぁ?」
sepiaは驚く、見覚えしかないその姿に
女は入院着を着ていた。
sepia「ハッ、君の方から来てくれるなんて、凄い好都合」
sepia「…”AIのお姉ちゃん”?」
かな (…りさ、知らない人と行動してる…)
sepiaと4人が病院で鉢合わせた頃からかなは意識を取り戻していた。
不審な男の声がしているうちは、かなは眠るふりを続けていたのだ。
p.m 19時頃
かなは、sepiaとりさ一行が居なくなった後、ムクリと身体を起こす
危害を加えられることがなかったかなには傷もない。
容態は安定し 、増加していた脳波も正常値に戻った。
かな「うっ…いっ、てて…」
かな「…今何時…?」
寒気が肌を冷やす、真っ暗な冬の夜だった。
星の細々とした光が少女を嗤う
かな (…感じた)
かな (あの人から、強い葛藤と苦しみを)
かなは立ち上がる
点滴に繋がれて、身体が重い
だが、行ってみたい
かな (…だって…)
かな (私だって、同じ)
分かり合える人が欲しかったのだ。
かな「…貴方に会いに来たんです、やっと…見つけた」
sepia「はぁ?AIのお姉ちゃんは教養とかないの?こんな不審者に自分から寄るなんて怖いよ」
かな「…あれ、貴方…案外常識的なんですね。」
sepia「…チッ…気に食わねぇ」
sepiaはかなに銃を向ける
かなは反抗もせず、ただsepiaに語りかける
かな「私達、打ち解けられると思うんです」
sepia「はぁ?何故…」
かな「…内戦、私も無力な被害者なんです。」
sepiaは、目を丸くする
かな「_”私も貴方と同じ”なんです。」
昔の記憶だ
日向「…おねぇ、ちゃん」
かな「…大丈夫、大丈夫だよ」
かな「平和になったらお出かけしようね、だから_」
かなには”人間”の妹がいた。