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母「かな!!早く逃げなさい!!」
かな「で、でも、お母さん、が…」
かなは震え、吃りながら姉妹を抱える母に縋った
母の声はゆっくりと、そして冷たくなる
母「行って。」
母に突き放された時以降のことを、かなはよく覚えていない
かな「…日向、大丈夫、大丈夫だよ」
かな「…っぅ、だから_」
かな「おきてよ…日向…」
つー、ぽた、ぽた
黒い鮮血が日向の顔を染めた
ゆっくり、ゆっくりと光を失った目を閉じる身近な人
かな「…おで、かけ」
当時、かなは13歳だった
一人の女性が、日向を抱きしめて呆然とするかなの前に立ち守ってくれていたことを覚えている
「どうにかしてこの子を助けられないですか…?」
女性は、かなを施設に送り届けた後も日向のことを気遣ってくれた
「…コールドスリープを行うことしか我々には出来ません、ですが莫大なお金が…」
「…!?」
「かなちゃん、貴方はそれでいいの…?」
かな「うん、それでいいの」
かな「…おねがいします。」
職員「…もう少し考えた方が_」
かな「いやだ!!」
かなは普段出せもしないほどの金切り声で、大人達の拒否する。
かな「時間は、かかると思います、でも…」
かな「ぜったい、払います」
「…私は、かなちゃんみたいな人を救ってかなきゃいけないんだ、だから会えたら会おうね」
かな「…うん、がんばってね、お姉さん」
「…」
女性は後ろを向くと、ぼそりと呟く
「…次会った時は、”りさ”って呼んで」
かな「うん。」
りさはかなの元を去り、かなは独りになった
日向のように、かなの友達は全員戦争に巻き込まれ行方不明、またはタヒんでしまった
かなは空虚な日々を過ごした
無限とも言える、変わらない日常
かな「…貴方の名前って聞いてましたっけ…」
sepia「…sepiaだけど」
かな「いい名前、ですね」
かな「…私、もう行かなきゃ」
かな「…では」
sepia「待ってくれ」
sepia「…協力してくれとは言わん、けど連絡先を交換しないか?なんだか手を組める気がする」
かな「もちろんです」
2人はスマートフォンを取り出す
かなとsepiaはまた明日、と別れ、通話で少し話した。
かな『2人きりじゃない時は他人のフリをしたほうがいい…と思います。』
かな『貴方が咎められます、多分』
sepia『そのつもりだから安心してくれ』
かな『はーい』
p.m 21:00
かなはこっそり病室に戻ると、布団に潜り込んですぐに目を閉じてみる
だが、起きたのも19時の話であるので、流石に目が冴えておりなかなか寝付けない
かなが14際の頃、内戦は終結し、独りで世界を放浪していた
至る所に人間のタヒ体が転がっていて気持ち悪く映る
空が青いのが、異質に思えるほど荒れ果てて静かだった
かな「…日向をどうにかしないと」
かなは歩き続ける
転んでも進み続ける以外、選択肢などなかった
止めてくれるものは誰もいない、かなは独りなのだ。
独りであることのメリットなぞ何をしても許されるくらいだ、だがかなに何かをする余力は残されていない
かな「施設の人は、救援が来るまで待ってって言ったっけ」
かな「…そんなのできないよ」
当てもなく歩き続ける
戦争を経て、将来残るものはあるか?
かな「…お姉さんに会いに行けば何かあるかな…」
かな「…ロボット…」
かなは壊れたロボットの手をそっと取ってみる
かな「…あ」
かな『そっか』
かなは金属の手を見つめるうちに”ある事”を思いつく
まるで運命に導かれるように。
かなは引き返して歩く
他に穏便な方法があるのなら、それを掴めればよかったのかもしれない
かなは一人の子供に過ぎない、子供にとってこれは無謀と言わざるを得ない、一生モノの障壁になってしまう事に、冷静な今なら間違いないと言える
お金の問題が原因か、と聞かれたらそうと答えるかもしれない
だが、なにより
職員「…かなちゃん、寂しくて苦しいのは分かる、でもね」
職員「…その決断は、もう少し考えた方がいいと思うの。」
かな「…でも」
職員「…これが別の方法だったら私だって応援できたかもしれない、でも__」
親身な大人の声は、届くことはなかった。
かなの目に、希望など微塵も写っていなかったのだ。
強い執着が見えた、妹のために、否、自分のために?
かな「_今日こそお姉さんのところに行かなきゃ」
先生「かなちゃん…」
ただ孤独だった
かな (…まだ施設が見える、もっと遠いところまで行かないと)
かなは荒廃した街を歩き続けた
黒煙が上がる街
光を失い炭となった建物
かなは歩く以外選択肢などなかった
「君、どうしてこんなところにいるの、お家…いや、施設暮らし?」
かな「…関係ないですよね」
「いやぁそりゃ…関係は無いよ?でも良くないよ、いつ誰に撃たれるか分からないのに」
かな「…」
かな「そうですか」
「…なんなんだ、あの子」
かな「では。」
かなは走った
かな「…”日向”…」
”まるで生き返ったかのような”日向と話せば話すほど、日向の姿をした”別のもの”であることを強く実感した
だが、例え他人であろうと大切な妹である、という実感だけは抜けなかった
”日向”はシンギュラリティ対策のため、都合の悪い記憶は全て消され、かなとの思い出だけが遺された。
かな「…ひ、なた、ごめんね、ごめんね…」
日向は、人の道を歩めなくなった。
a.m 10:00
sepiaはかなの病室にいた
かな「…随分、来るの早いんですね」
sepia「うるせぇ、仕事で来ないといけないんだよ」
かな「…私も有名人だなぁ」
sepia「なぁ、本当に俺を信じていいのか?」
かな「信じる…語弊ですよ」
かな「私はり…青い髪の人と妹以外の人間なんてそこまで信じてないですよ」
かな「…けど、貴方はなんか、私みたいで可哀想で」
sepiaは乾いた笑い声をあげた
sepia「…可哀想…はは」
sepia「…そうかもな」
やはりsepiaは、かなと同じ目をしていた
sepia「…お前は妹をAIにせざるを得なかった」
sepia「…俺は…人に全部奪われて、人を嫌いになった」