テラーノベル
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夢を見る、小さい頃から変わって見る、不思議な夢。
─目の前で母さんが事故で亡くなる夢。
─父さんに殴られ、クラスメイトには虐められる夢。
─突然部屋が炎に飲まれ、命からがら逃げ出す夢。
自分が経験したことないのに、あたかも自分が経験したかのようなリアルの夢に、苦しんだ。
怖くてたまらない、寂しくて悲しくてたまらない、
・・・誰かに、助けてもらいたかった。
✵✵✵✵✵
ブラックは目が冴え、飛び起きた。
「・・・ひっ・・・ぁ・・・」
ガタガタ体が震える、口から乾いた声がこぼれる。涙が、溢れて止まらない。
ブラックはまるで夢遊病患者のように、フラフラと部屋を出ていった。
✵✵✵✵✵
すまない先生は1人、部屋で本を読んでいた。ふと、本から目線を上げると、時計は2時を指していた。
「うわっ!もうこんな時間!?早く寝ないとエウリに叱られちゃうな・・・」
と、こぼしつつ、寝る準備をしていると、
コンコンコン
ノック音が響いた。すまない先生は首を傾げ、ドアを開けた。
「・・・!?ブラッ!!・・・ック?(小声)どうしたの?」
そう聞くと、ブラックはギュッと仮面を握りしめたまま、涙を零していた。
そんなブラックに、すまない先生はとりあえず廊下は冷えるということで、部屋に招き入れた。
✵✵✵✵✵
すまない先生は、自室に備え付けられているキッチンでホットミルクを作り、ブラックに手渡した。
「どうしたの?ブラック、こんな夜遅くに」
すまない先生が優しく聞くも、ブラックはマグカップに目線を落としたまま、なにも言わない。
すまない先生はふむと悩み、ふと、ベッド脇に置いているブラックがよく被らず横にずらしている仮面に手を伸ばした。
「ねねね、ブラックブラック、どう?似合う?」
「ぶふっ!」
あまりに似合わなかったのか、ブラックは噴き出し、くくくと肩を揺らしていた。
それに、すまない先生は軽くむっとしつつ、仮面を外した。
この仮面は、前にまだ旅をしている時、買い出しの際店に売られていた仮面。
周りのうさぎや狐などと言った仮面の中に唯一これがあり、かなり変わった物だったが、ブラックがとても惹かれていた。だが、買ったは言いものの、大きすぎていつもずらして被っており、集中する際につけていた。
それから、この仮面を大切にしていた。
「そんなに笑うー?」
「ふふ、すまない先生には、その仮面合いませんよ」
「酷くない!?」
などと言った、他愛のない会話ををしていると、ブラックが細々と答えてくれた。
「・・・夢を、見たんです・・・多分、風夜が言う、“1回目の私”の夢なのでしょう・・・夢で・・・母親が目の前で事故で亡くなって・・・父親に殴られて・・・クラスメイトに虐められて・・・仲のいい友人が出来たと思ったら・・・彼と熱中して、家が燃えて・・・」
「前々から思ってたんだけど、なんで熱中したから家が燃えるんだい?」
「さぁ・・・?」
と、ブラックは首を傾げた。
稀に、“1回目”のブラックや銀さん達の夢を見るブラック達。
それは、記憶の遺伝というものだと、風夜は教えてくれた。
“1回目”は、僕が“まだ”人間で、ヤマタノオロチを倒し、不老不死となった時のことらしい。
楽しい記憶でもあれば、悲しい記憶を夢で見てしまうらしく、ブラックは最近その“1回目”、しかも、“1回目のブラックの過去”を追体験しているらしい。
・・・おそらく原因は、
(・・・ブラックの父親が“事故で亡くなったこと”だろうね・・・)
数日前、たまたま見たニュースの速報で、ある男の人が車に撥ねられ、亡くなったことを告げるニュースだった。
その撥ねられた男の顔が流れてきた時、ブラックは絶句していた。
ブラックは、父親に売られ、奴隷商人の元にやってき、商品となる人達を誘拐する手伝いをしていた。
ブラックも被害者だと、警察の人達は納得してくれた。
だが、ブラックは今でも心に傷を負っていた。
今はそれほどまでないが、昔はパニックで暴れることなんて、ざらにあった。
すまない先生は、ブラックをひょいっと抱き上げた。
「うわっ!ちょ!!」
「うわっ、ブラック、重くなったねぇ!」
「離して下さい!!」
「あはは!嫌だよー!」
と、すまない先生はブラックをぽすんッと自分の膝の間に落とした。
そして、優しく抱きしめ、頭を撫でた。
「大丈夫だよ、ブラック。ここには怖いことも悲しいこともないから。もし、また怖い夢みたら、僕が飛び込んで助けに行くからさ」
すまない先生はぽんぽんと優しく背をさする。ブラックはそんな優しい仕草に、ウトウト微睡みながら、頬をすまない先生の胸に預ける。
とく、とくと、心臓の音が聞こえる。
心臓の音を聞くと、とても落ち着く。
「・・・夢に入るなんて、そんなことできっこない・・・って思いましたけど、すまない先生なら出来そうですね・・・」
「流石にそこまで人間辞めてないよ!?!?いや、不老不死だけども!!」
と、すまない先生とたわいのない会話をした。
ブラックはそんな会話に答えながらも、微睡み、目を閉じた。
✵✵✵✵✵
目を覚ますと、自分は校庭に立っていた。
その近くの学校は、すまないスクールに似ているけれど、すまないスクールとは違う学校に気がつく。
すると、
『■■■■■■!』
ふと、顔を上げると、目線の先には、1人の青年と、その生徒たちが楽しそうに校庭で遊んでいた。
ワイワイと楽しそうに、笑顔で校庭を駆けていた。
『・・・ふふ』
ふと、隣で声がし、隣を見ると、黒い髪に、仮面を被った少年がいた。
少年は青年達を少し離れた所から見ていた。仮面を被っているのに、声は優しげで、楽しそうに青年達を眺めていた。
しばらく、ブラックも隣の青年と同じように眺めていた。
ふと、青年がブラックの隣の青年に気が付き、手を引っ張る。
『■■■■!何そんな所から見てるんだい?君も来なよ!』
『えっ、ちょっ!』
と、少年は青年に連れられ、生徒たちの輪に。
そんな青年達をブラックは“懐かしく”感じながら、見守っていた。
✵✵✵✵✵
ゆっくり目を覚ますと、真っ白な天井が広がっていた。
そして、自分がいつも使っている黒いシーツとは真反対の真っ白な手触りの良いシーツに、ここは自分の部屋では無いことに気づいた。
ブラックはうとうと微睡みながら、布団を被って、部屋を出た。
✵✵✵✵✵
「ん?ブラック!おはよう、まだ寝てても良かったんだよ?」
リビングに出ると、すまない先生が料理を作っていた。
毎日、料理は当番制で、今日はすまない先生のようだ。(ちなみにブラックは料理の当番から外されています。理由:前に料理したらフライパンが溶けたから)
「・・・いえ、休日だからってゴロゴロするのは・・・」
「マジメ〜」
と、すまない先生は笑いながら料理を作る。
「あの後どう?夢に僕出てきた?」
そうすまない先生はいたずらっ子のような笑顔をこぼした。それに、ブラックは軽く笑い、答えた。
「・・・そうですね・・・目の前でくねくねから逃げる授業をしてました」
「なんそれ!?!?」
ブラックのこぼした言葉に、すまない先生は困惑していた。
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