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yuka @猫耳メイド
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#あべさく
めかぶぷりん
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雪月❄️
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それから、阿部はまたお世話される日々を過ごしていた。
翌朝には宮舘が一番乗りで来て朝食を作ってくれて、日中に甲斐甲斐しくお世話をしてくれるのは主に渡辺と、蔓の翠滴の効果ですっかり回復した目黒。まだフラつくので移動は目黒か岩本が担い、今日はカフェを閉めることで向井・深澤・佐久間・ラウールが依頼の調査に向かう。
その日の夜は、じゃんけんで勝った向井が事務所に泊まることになった。
結局、あまり動けないからと休憩室で寝ることになると、向井も一緒にベッドに入って来た。康二はそうだよね、と最初から思っていたので驚きもなく、二人で肩を並べて眠りにつくのだった。
少し動けるようになったのは、更にその翌日。
ベッドの端に座った阿部は、向井と宮舘に見守られながら立ち上がった。
🧡「おおー。阿部ちゃんが立った」
💚「……いやあの、クララが立ったのノリで言わないでもらっていい? 昨日も立ててはいたから」
🧡「すまんすまん」
❤️「阿部、ゆっくり歩いて」
💚「……もー。俺そんな重病人じゃないよっ」
抗議しながら一歩を踏み出す。
宮舘も向井も、まるで歩き始めた子どもを見守る親のようで、阿部は溜息をつきながらもゆっくりと歩いてドアの方に向かった。
❤️「フラつきはなさそうだね」
💚「だから、大丈夫だってば」
🧡「阿部ちゃんのそれ、信用ならへんもん」
💚「むー」
❤️「じゃあ、そのまま階段行こう」
ドアを開けてくれた宮舘の先導で、三階へ続く階段に向かう。
ふぅっと、息をついて階段を上り始める。一段、二段、三段……そのすぐ後ろを、宮舘と向井がぴったりとくっついている。
💚「完全にリハビリだね」
❤️「そのつもりだけど」
🧡「階段でフラってしたら危ないやん」
💚「なんか、康二まで過保護になってんじゃん」
🧡「心配なんは一緒。俺かて、阿部ちゃん大事やし。ただ、他のみんなが凄くて埋もれてるってだけ」
❤️「俺もそんなにだよ?」
🧡「舘、前に出ぇへんだけやんか。めっちゃ過保護やで」
💚「……ごめん、ここで休憩していい?」
階段の中腹にある、折り返すための踊り場で止まった阿部は、手すりに体を預けている状態だ。
❤️「無理する必要はないよ。今はここまでにしよう」
💚「ありがと」
🧡「でも、昨日ほとんど動けなかったんからは、回復したなぁ」
💚「めめの翠滴でも回復させてもらってるからね」
❤️「阿部」
名前を呼んで、宮舘は踊り場の一段下に立ち、阿部に背中を向けて身を屈めている。
それが意味することは分かっており、阿部は一瞬たじろぐ。
💚「……歩いて戻っちゃ、ダメ?」
❤️「ダメ」
🧡「観念せい。今、無理するもんやないで」
💚「だよね……お願いします」
背中から首に腕を回して体重を預けると、宮舘が立ち上がって階段を降り始めた。
💚「……なんか、舘様の背中、おっきい」
🧡「なんやその感想」
💚「照とかめめにおんぶしてもらうことは、まあ、何度かあるからさ。普段見えてるのと、こうしてもらって見えるの、違うなって思ったの」
返ってきた言葉に、宮舘と向井は思わず顔を見合わせて笑った。
特別変わったわけではない。明確に今までと違うということは言えない。けれど、阿部の中でちゃんと変わっているものがあるのだと、受け取れる。何故ならそこに、申し訳ないという気持ちが見えなかったから。
こちらがしたくてしていることを、受け入れられるようになったのは大きな前進だと、二人は思った。
それからは皆が事務所に出所して仕事をし、その間、阿部は応接間のソファの上だった。たまに何かしたいと歩いて執務机に行ってパソコンを開くものの、15分ほどで休憩だと渡辺によってソファに戻される。
暇だなと思っていると、岩本から軽い筋トレメニューを渡され、ラウールに見守られながら座った状態で行う。
昼は宮舘の食事。15時頃には向井がコーヒーを淹れてくれるのでブレイクタイム。何もしてないのにブレイクタイムも何もないと阿部は苦笑していたが、みんなで飲むコーヒーは美味しかった。
それが終わって、再び動く練習。歩いて、階段を上って、休んで、階段を下りて……というリハビリメニューをこなし、夜を迎えた。
💜「照、阿部ちゃんどう?」
💛「まあ、日常で動く分には問題ねえかな。ラウ、貧血の状態は?」
🤍「今は軽ーくって感じかな。もう少し、貧血用のご飯でもいいと思うよ。阿部ちゃん、まだ立ち眩みはあるでしょ?」
💚「……正直、何回かに一回は」
🤍「お、阿部ちゃんが素直に言ってる。えらーい」
💚「……」
💛「拗ねんな。今までの行動の結果だろ」
💜「そしたら、もう三階に移っても良さそうだね。阿部ちゃんもその方が、気が楽でしょ?」
💚「うん。みんなが仕事してる中で何もしないのはやっぱり気になるし、動きたくてうずうずする」
💜「知ってる。で、今日のお泊りは……」
💚「え、それまだ続けるの?」
💜「こっちはお世話じゃなくて、安全のため。封印があるから阿部ちゃんは大丈夫ってわけにはいかないんだよ。東海林みたいに逆恨みで、事務所自体が狙われる可能性だってある。それはさすがに分かるでしょ?」
💚「……はい」
🤍「この状態なら、明日の夜には家に帰れると思うから、それまでもう少し頑張って」
💜「で、今日はなべで、今、家にいろいろ取りに行ってる」
だから早々に帰宅していたのだと納得した。
その後、渡辺が事務所に来たところで他の者たちは帰宅し、今日は三階のベッドルームで過ごす事になった。
もう普通に動けるからか、渡辺が阿部に世話を焼くことはなく、二人でのんびりとした時間を共有して眠りについた。
翌朝、ラウールに体調を確認してもらったところ、もう大丈夫そうというお墨付きが出た。それぞれ仕事もあるから、留守番担当のラウールは事務所で作業をし、回復優先の阿部はベッドルームの窓から外を眺めている。
すると、コンコンコンとドアがノックされて、宮舘が中に入って来た。
💚「あれ、舘様? どうしたの?」
ゆっくりと近づいて来た宮舘は阿部の前に立ち。
❤️「阿部、手、出して」
微笑を浮かべながら両手のひらを上に向けて出してきたので、首を傾げながらも阿部は両手を宮舘の手のひらに乗せる。
💚「ん? こう?」
すると突然、宮舘に両手首を掴まれたかと思うと背後の壁に押し付けられ、顔の両横で手首が固定される。
💚「えっ? 舘様?」
❤️「フィックス」
瞬間、体が硬直したかのように全く動かなくなった。
目の前にいる宮舘が手を離しても、阿部の体は微動だにしないし、喋る事さえできない。
💚(なに、これ……金縛り……? 舘様……じゃ、ない!)
❤️「アハハッ。こんなにチョロくてどうするのさ。人を疑うってこと、知らないわけ?」
宮舘の顔で、声で、そう発せられた言葉。
しかし、左手につけていたブレスレットに触れると宮舘から阿部の姿へと変貌した。
💚「じゃあ、用が済むまでここで大人しく待っててね」
ひらひらと手を振って、偽の阿部は部屋から出て行った。
事務所のソファで寝転がっているラウールは、少し眠気に襲われていた。
そこに、三階にいるはずの阿部が降りてくる。
🤍「あれ、阿部ちゃん。どうかした?」
💚「ラウに頼みたいことがあってさ」
🤍「んー? なにー?」
💚「これなんだけど」
そう言って背中に隠していた物を見せてくれる。
手にあるのは箱と、それにかけられている緑色のハート形の宝石が中央にあしらわれた錠前。
💚「この鍵なくしちゃって、どうしても開けたいんだけど、鍵って作ってもらえないかな?」
🤍「ちょっと見せてもらっていい?」
阿部から箱を預かり、眼鏡をかけて錠前を見る。
🤍「鍵も複雑だけど、魔法陣も見えるね。これ、魔術式で解いてく系かな。でも構造はわかるから、作れると思うよ」
💚「ホント?! あ、今作ってもらうことってできそうかな?」
🤍「あー……舘さんって三階に行ったよね?」
💚「うん。シャワー浴びるって言ってたよ」
🤍「じゃあ、すぐ来るか。わかった、ちょっと作業してくるね」
💚「ごめんね、ありがと」
頭を下げる阿部に背を向け、ラウールはコントロールルームへと入って行った。
中で作業を進めていく。ここには、ラウールの能力を高める為の設備が整っていて、他の場所でクリエイトするよりも遥かに早く作る事ができる。
頭の中で創造したものを、手のひらから出した白い光で作り上げていく。通常なら1時間ほどかかる作業が、ここで行えば20分ほどしかかからなかった。出来上がった鍵は、時計と緑の宝石がついた、鎖が巻かれたアンティーク風のもの。
それを持って、ラウールがコントロールルームから出ると、阿部はソファにちょこんと座って待っていた。
🤍「お待たせ。はい、これ」
💚「おおー。なんか凄いの出来たね」
🤍「でしょー。僕も、こんな感じになるとは思ってなかったよ」
💚「でもありがと。これで開けられるよ」
そう言って阿部は三階へ続く階段に向かっていく。
🤍「あれ? ここで開けないの?」
💚「あー、中身、大事なものなんだ。ちょっと一人で開けたいなって」
🤍「そうなんだ。わかったよー」
手を振って見送った阿部は、心なしかはしゃいでいるように見えた。
よほど大事なものだったのだろう。役に立てて良かったと思いながら、コーヒーを淹れに行く。作業があったから眠かった頭も少しは良くなったけれど、寝ないようにする為にカフェインを摂取しておきたい。
そうしていると、ラウールの左手についている腕時計が突然、緑色に点滅し始めた。
🤍「えっ? 緊急信号? ってか、緑って阿部ちゃんじゃん。何で? だって今の今までここに……っ! 阿部ちゃんに何かあったのかも!」
大慌てでラウールは給湯室から出ると、阿部のいる三階へと向かった。
少し前。
偽物の自分が出て行ってから、どのくらい経っただろう。
目的は分からないけれど、こうして自分は拘束され、なりすましたという事は特務調査局に害をなそうとしているはず。
知らせなければならないと、頭を左に少しずつ傾けて、必死に左手の人差し指を伸ばす。ほんの数ミリずつしか動かないけれど、この短時間で確実に近づいている。あと少し。イヤリングの石に指先が触れた。
その時だった。ドアが開いて偽物の自分が戻って来たのは。
その手に持っているのは、装飾が施された15センチほどの鍵。どうして鍵を持っているのか――――その理由はわからない。
笑みを浮かべて近づいてくる自分の偽物。
ドクンと心臓が大きく脈打った。と同時に、意識が混濁する。ボーっとしていく頭に、愉し気な自分の声が響いた。
💚「お、出てきたね。やっぱ共鳴すんだな」
💚(……共鳴……? 何が……?)
阿部に何かあったのかもしれないと気付いて三段飛ばしで三階へと向かったラウールは、バンッと勢いよくベッドルームのドアを開けて中に入った。
🤍「阿部ちゃん!」
そこで見えたのは、両手を軽く上げて壁に拘束されているような格好の阿部と、その前に立っている鍵を持った阿部。
拘束されている阿部の心臓の辺りに、先ほどラウールが見た錠前と同じものが浮かび上がっていて、鍵を差し込んでいるところだった。
錠前には、幾重にも重なった魔法陣が現れていて、鍵に仕込んだ魔術式が解除を試みているのがわかる。
その鍵を持った阿部がこちらを見て、笑った。
💚「ハハッ。案外、気付くの早かったね」
🤍「お前、阿部ちゃんのフリして、阿部ちゃんに何してんだよ!」
💚「なにって、金庫破り? あと少しだったのに、邪魔が入るのは想定外だったなあ」
🤍「その鍵、返せ!」
💚「やーだね。これはこっちで預かっとくよ」
錠前から鍵を引き抜くと偽物の阿部は開け放った窓枠に立ち、ラウールを振り返ったその顔はもう阿部ではなく、大学生くらいの青年だった。
拘束が解かれて倒れてきた阿部をしゃがんで抱きしめながら、ラウールはその男を睨みつける。
「じゃあねー!」
軽いノリで手を振ってそのまま飛び降りた男。
三階からジャンプするなど正気ではないが、その直後にカラスが飛んでいくのが見えて、先ほど姿が変わっていたことから、きっと変身する異能なのだろうとラウールは思った。
それから、腕の中にいる阿部を見る。
🤍「阿部ちゃん! 阿部ちゃん、しっかりして!」
💚「……ラウ……?」
うっすらと開けた目と目が合った。
🤍「阿部ちゃん……良かった……ケガは? どっか痛いとこある?」
💚「ううん。大丈夫」
そう言って立ち上がった阿部の体が膝から崩れ落ちそうになり、慌ててもう一度、阿部を腕で受け止める。
🤍「大丈夫じゃないじゃん……」
💚「あはは。ごめん」
🤍「まだ貧血も治りきってないんだから、無理しないで。このまま抱っこしてくね」
💚「えっ。ラウはできないでしょ?」
🤍「あー、バカにしないでよね! これでも、岩本くんに鍛えてもらってるんだから!」
よいしょっと言って高く抱き上げられる。
身長が高い分、少し怖いかもしれない。
🤍「僕にぎゅって掴まってて。その方が安定するから」
💚「わ、わかった」
ラウールの首に腕を回してぎゅっと抱きしめると、ラウールは満足したように笑って階段を下りていった。
事務所に降りると、宮舘と渡辺の二人が不思議そうにこちらを見てくる。
💙「阿部ちゃんどうした? 何かあったのか?」
🤍「今、襲われてた」
💙「えっ!?」
❤️「襲われたって、特務調査局の中で?」
🤍「そう。阿部ちゃん、下ろすねー」
💚「ラウありがとう」
ソファにゆっくりと下ろしてもらい、ちょこんと座る。
すぐに渡辺も宮舘も傍までやって来ると、渡辺は阿部の目の前にしゃがみ、宮舘はソファの隣に立つ。ラウールは、阿部の隣にそのまま座った。
💙「何があった?」
💚「……部屋に、舘様が入ってきて」
❤️「俺?」
💚「急に壁のところで金縛りみたいになって、動けなくなって……そしたら、舘様の姿が俺に変わったんだ」
❤️「変身の異能?」
💚「多分」
🤍「僕、降りてきた阿部ちゃんに頼まれて鍵を作ったんだよ。箱に鍵がかかってるから開けたいけど、肝心の鍵をなくしちゃったからって。それを持って阿部ちゃんが三階に上がってったら、阿部ちゃんから緊急信号が出てて、慌てて三階に行ったら、阿部ちゃんが阿部ちゃんの前に立ってたの。胸のとこに緑色の錠前が見えて、そこに鍵を差し込んでた」
💚「……異能の封印を、解こうとしたのかも……」
💙「えっ?」
💚「封印した時、クイーン……夏音ちゃんの人形ね。クイーンが俺の胸のとこに触れて、鍵を回してた。鍵のかかる音もしたから、多分、それが封印の合図」
🤍「でも、なんでそれがあいつに分かるの? 僕らも知らないのに。阿部ちゃん、誰にもその話してないでしょ?」
💚「してないよ。そこまで話さなくていいと思ってたし……」
❤️「とにかく、みんなを集めよう」
💙「……あいつが、変身してるって可能性、ないか? もしかしたらこの中にも」
変身できる異能を持っていると聞いたからか慎重になっている渡辺に、宮舘が小さくため息をついた。
❤️「あのね、翔太。俺と翔太、ずっと一緒にいたでしょ。阿部とラウールが偽物と会ってる時も。で、阿部もラウールも本物。誰が偽物になるの?」
💙「……ごめん」
💚「他のみんなもそうだけど、今、誰かに成りすまして入り込むのは得策じゃないよ。俺らの警戒レベルがぐっと上がってるからね。やるなら、もっと前にやってる。それに、疑心暗鬼にさせるのが目的かもしれない。合わせ鏡の時の康二みたいに」
🤍「僕もそう思う。今は仲違いしてる場合じゃないから、そこは気にしないでいようよ。確認が必要なら、ピアスの緊急信号で確かめるよ。見た目が一緒でも、機能まではコピーできないと思うから」
💙「阿部ちゃんとラウールがそう言うなら……」
❤️「じゃあ、翔太。康二に今日は店じまいするよう言ってきて」
💙「わかった」
すぐにみんなが動き始める。
一体、阿部の身に何が起こっているのだろうか……。
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