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次の日の夜、私は「灯り」のいつもの席で食事をした。
ファミリーレストランのシフトによって、まかないを食べたり、おばさんのご飯を食べたりしてるけど、やっぱりここより落ち着ける場所はどこにもない。
今日は雨のせいか、いつもよりお客さんも少なく、手が空いた朱里が隣に座って私の話を聞いてくれた。
「今日の『ブリ大根』も美味しかった。ママさんの愛情を感じたよ」
「それなら良かった。ブリは冬が旬の食材だから、これからどんどん美味しくなるよ。脂がのってる冬のブリは、照り焼きにしても美味しいし、塩焼きにして柚子なんかを搾るとさらに爽やかで美味しくなるしね」
「それいいね。塩焼きも食べてみたい」
「了解、楽しみにしてて。あっ、ねえ、今日は何か話があったんじゃないの?」
「うん、あのね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「どうしたの? そんな真剣な顔して」
「この前ここにいた常磐さんって人、わかる?」
「もちろん。うちのお得意様だよ。あの人はお母さんのことを気に入ってくれてるからね」
「あ……じゃなくて、たぶん息子さんの方」
「ああ! あの超絶イケメンね」
朱里もそう思ってたんだ。確かにあの人をイケメンじゃないなんて言う人はこの世にいないだろう。
「う、うん。そう、本当にかっこいい人だよね。初めて会った時、ちょっとびっくりした」
「あの時、やっぱり話したんだ。双葉が出ていったのを追いかけてた気がしたから。あの人はね、常磐社長の一人息子の常磐 理仁さん 」
「常磐社長?」
「そうだよ。双葉も見かけたことあるでしょ? ロマンスグレーの紳士でどことなく理仁さんに似てる」
「あっ、うん。メガネをかけてて、長身の渋い感じのおじ様かな? スーツ姿の」
「そうそう。あれが理仁さんのお父さん。理仁さんはこの前常磐社長の紹介で来てくれたんだけど、すごくうちの料理を気に入ってくれて」
「そっか、ここの料理は本当に美味しいからね」
「実はね、あの時、戻ってきた理仁さんに、双葉のことを聞かれたの。さっきの女性は? って。私の友達だって言って名前教えちゃった。ごめんね。でも、理仁さんは素性のハッキリした人だし、いいよね?」
「あ、うん」
落ち込んでた私のことを気にしてくれて……常磐さんって、本当に優しい人なんだ。
「理仁さん、双葉のこと気に入ったのかなって思ったけど、やっぱりそうだったんだね」
「えっ! 違う違う。あの時、たまたま私の過去を聞いたみたいでね。気の毒に思って心配してくれたの。気分転換になるからプールにおいでって。それだけだよ」
「ふーん。で、プールどうだった?」
朱里がニタニタしながら聞いた。
「常磐さん、すごく泳ぎが上手くてびっくりした。私もアクアビクスを教わったよ」
「水泳は子どもの頃から得意なんだって。なんてったって、理仁さんは、あの『常磐グループ』の御曹司なんだから」